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悪役令嬢は妖刀と生きる  作者: 高塚 ミヤビ
第一章

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第四話 前編

今朝は礼儀作法の実践授業から始まり、レイラの母がすでに亡くなっている事を知ることになった。

まだまだ出てくる未公開な情報に翻弄され、驚くばかりだが、その後の授業はいつも通りに進行していった。


「こんなところかしら」


夕食や入浴を済ませ、自室に戻れば提出期限の近い課題に取り掛かっていた。

それもようやくひと段落つき、外を見ればすっかり夜も更けていた。


「それじゃあ、行きますか」


私は小腹の空いたお腹をさすりながら、今朝に思いついた計画を実行に移すことにした。


(……うーん、このままだとちょっと寒いかも)


夜の廊下は寝間着で出るにはまだ少し肌寒く、そのままの服装では再び熱を出してしまう予感がするので、薄手の上着を羽織ることで対策をする。


「これなら大丈夫……よね?」


就寝時間を迎えた夜の屋敷は、前世の田舎の夜道くらい照明が少なく、夜目の利かない私には明かりが必要だ。


(でも、普通にランプを手に持って歩いたら——絶対、衛兵さんに見つかってしまうわよね……)


なので、私はそばにあった柔らかい布を手に取り、ランプの空気穴を塞がないように慎重に布をかぶせる。


(……よし、こんな感じで)


布の位置を調整することで光が漏れすぎてないか確認し、足元だけがほのかに照らされるように調整する。


「これで準備は万全ね」


私は上着のフードをかぶり、ランプを手にすると、そっと部屋の扉を開けた。

頭だけを廊下に覗かせ、左右から誰も来ていない事を確認する。


(今なら行けそう)


私は息を殺して自室の扉を抜け出し、足音を立てないように気を付けながら厨房の方へと歩みを進めた。


「いつも通りに最短距離で向かうと巡回している兵士の方たちに鉢合わせる可能性が高いから、今回は遠回りになるけど、こっちから厨房に向かうとしましょうか」


私が夜中に自室から抜け出している事がバレてしまうと、連れ戻されて前世の料理を再現できなくなるだけではなく、翌朝にはお説教が始まるだろう。


「見つかる事だけは避けなくちゃね」


私はそう呟き、細心の注意を払いながら厨房へ向かった。


―――――――――――――――


「はぁ……何とかここまで来たわね」


私は厨房の扉の前に到着すると、自然とため息がこぼれた。

まさか道中、巡回している衛兵の方々だと思われる集団と鉢合わせそうになるハプニングにあうとは。

こんな事態を避けるために迂回したルートを選択したのだが、あまり意味がなかったようだ。


「やっぱり、こういう事をする時は下調べとかちゃんとしてから実行に移すべきね」


幸い巡回中の彼らより先に私が近づいて来ていることに気づけたおかげで、近くの物陰に身をひそめる事で事態を何とかやり過ごし、誰にも見つからずに厨房までたどり着くことができた。


「……人の気配はなさそうだけど」


厨房の扉から漏れ出る明かりが無い事や物音もしないので、おそらく中は無人だと予想できるが、ここは油断せずに慎重に部屋の扉を開く。


(お邪魔しま~す)


心の中でそう呟きながら厨房に足を踏み入れると、予想通り部屋の中には人影はなく、綺麗に整頓され清潔さが保たれた厨房がそこにはあった。

感心しながら厨房を見渡していると、所々に、見慣れた調理器具がいくつか並んでいるが、一方で使用用途が一見わからない不思議な物も置いてあるので、この厨房への興味が尽きない。


「いったい何に使うのこれ…っじゃない、本題に戻らなきゃ」


なぜか、この器具には少し後ろ髪を引かれる思いはあるが、ここに来た目的を思い出し、食材を探すことにする。

再び厨房を見渡すと、布のかぶせられたバスケットを発見する。

布を捲ってみると、時間が経って硬くなったパンが入っていた。


「パンを使ったものとなると……」


フレンチトーストとかサンドイッチ、ピザトースト、パン粉にして揚げ物なんかにしてもいいかもしれない。

いろいろと思いつくが、どれもパン単体ではどうしようもないので、他にも食材を物色することにする。


「使えそうなものはこんな所かしら」


厨房を一通り散策し、見つけられたのはタマゴに塩漬けされた干し肉、それとチーズが数欠片、あとは動物性の油に塩、砂糖、コショウっぽい香辛料、酸っぱい匂いのする調味料を見つけることができた。

この酸っぱい匂いのする調味料は果実のような香りもほのかに感じるので、果実酢の様な物だろうか。


「さすがに足の速い野菜や生肉は置いてはないわよね」


この屋敷では冬ではないのに氷が出てくることがあったので、氷室のような場所はあると考えられるが、厨房の中にはそれを見つけることはできなかった。

もし、野菜やお肉などがあるとしたら、そちらに保管しているのだろう。


「前世では当たり前にあった味噌や醤油もなさそうだったし、これで何が再現できるかしらね」


私は物色した物を前に、何が作れるか吟味する。

メインをパンにするとして、タマゴと干し肉、これらを使ったものと言えばやはりアレだろう。


「酢の様な物もあるし、タマゴサンドかな」


前世で一般的と思っていたゆで卵をマヨネーズで和えるタマゴサンドは、他の国では珍しい食べ物だったらしいので、前世の料理の再現と言ってもいいのではないだろうか。

本当のことを言えば、カレーとか味噌汁、親子丼と言った物が作りたかったが現状の材料だけでは再現できない。

そもそも、お米が見当たらないので再現できるのはだいぶ先になるだろう。


「作る物も決まったし下準備でも―――ッ!?」


私は廊下側の扉から誰かが近づいてきているのを感じる。

この時間帯には、誰も厨房に来ることはないと思い込んでいたので、完全に油断していた。

ランプの明かりを消そうとするも、扉が開かれるのを見て間に合わないと悟った私は、その場でフードを被り近くの物陰に身を潜めた。


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