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最後の中学校の正門を出て、ここでみんなとお別れです

 最後のホームルームも終了し、中学校の学び舎に別れを告げた【みどり】は正門を出た。

 すると、【みどり】は色んな人物から声を掛けられ……。

 私が中学校の正門を出ると、そこには多くの卒業生達がいた。

 楽しそうに話している人。

 中学校の名が刻まれている看板の前で記念撮影をする人。

 いきなり校歌を歌い出す人。

 そんな風に思い出に浸る人もいればさっさと去って行く人もいた。

 多種多様な人がいる中、私は話し掛けられた。

「小松さん。ここでお別れですね!」

「木田君……」

 それは、私の前の席だった木田 悟だった。

 木田はこれから理数系に優れた高校に進学する。

 そんな木田の隣には木田の母がおり、「みどりちゃん♪」なんて言って手を振ってきた。

 相変わらずチャーミングである。

 それを見た木田は困っているようで逃げてしまいそうだったので、

私はそうなる前にちゃんと伝えた。

「木田君。一年間、本当にありがとう。感謝してる!」

 すると、木田はさらに困ったような顔になったが逃げる事は止めてくれた。

「こちらこそ感謝しています。

 小松さん、本当にありがとうございました!

 新たな生活、がんばってくださいね!」

「木田君もね!」

 そう言った私達が笑うと、木田の母と私の母がからかってきた。

 子供っぽいその二人に私が呆れていると、

木田は「また何処かでお会いしましょう!」と言い残し、今度こそ逃げてしまった。

 その木田を、木田の母は私達に一礼した後、追って行った。

 それは相変わらず変わっている木田に相応しい別れのシーンだった。

 そう思っていた私に今度はこの人が話し掛けてきた。

「いよっ、小松さん。お疲れ様でした!」

「平井君!」

 それは、平井 雄平だった。

 平井はこれから進学校である高校に進学する。

 平井は自然の家キャンプ以降、親しくしてくれている。

 主に食べ物の話が多かったが、それはそれで楽しかった。

 そんな平井は一人でいた。

「あれ? 平井君、親御さんは?」

「ああ。もう先に帰った

 何か御馳走作るっておふくろ、はり切ってたし!」

「そ、そうなんだ……」

 私の頭に「やっぱり……」という言葉が浮かぶと平井は話を続けてきた。

「まあ、小松さん。一年間世話になったな!」

「それはこっちの台詞だよ!」

「ふっ……。んじゃあ、小松さん。そろそろお暇するわ。うっせえのが来そうだし!」

 そう言った平井が悪戯な笑いをすると、楽しそうな声が聞こえてきた。

「なあなあなあ! 平井、何話してんの?」

「大隈……。お前には関係ない話だ」

 それは大隈 誠司だった。

 大隈はこれから県外にあるバスケット部の強豪校である高校に進学する。

 そんな大隈は何故か平井に構ってほしいみたいだが、平井は放っておいてほしいみたいで、

二人の距離は縮まる事はなかった。

 いや、実は縮まっていたのかもしれない。

 自然の家キャンプの時なら平井はあんなに楽しそうな顔はしなかっただろうから。

 そんな平井はそのまま去って行き、

代わりにまた楽し気な声の持ち主と静かな声の持ち主が近寄って来た。

「小松さん、悪かったな。妹の奴が絶対に小松さんにあげるんだって言っててさ……。

 だから止められなかったんだ」

「いいよ伊藤君。結構、嬉しかったし……」

 それは、伊藤 勇人だった。

 伊藤はこれから県外にあるバレーボール部の強豪校である高校に進学する。

 そんな伊藤は親友の文と一緒にいる。

 それは勿論、二人が付き合っているからだ。

 ちなみに、文は平井と同じ高校の学科に進学する。

 つまり、二人は遠距離恋愛になってしまう訳だが、何とか末永く続いてほしいものである。

 そう私が密かに願っていると、元気いっぱいな声の持ち主がやっと来てくれた。

「ごめんねぇ! みどりちゃん、文ちゃん!」

「美雪ちゃん!」

 それは、宮本 美雪。

 私と同じ高校に進学する親友だ。

 そんな美雪はいままで演劇部の後輩から捕まっていたらしい。

 相変わらずの人気っぷりだ。

 でも、美雪がいるとやっぱり場が明るくなり、私達五人は和気藹々と話していた。

 だけど、急に大隈が変な頼みごとをしてきた。

「な、なあ、小松さん。ちょっと話があんだけど……。

 こっちに来てくれる?」

 こ、これは一体、どういう事なんだろう……?

 卒業式というシチュエーションで男子からこんな事を言われるって事は……⁉

 そう思った私はある答えに辿り着いてしまい、顔が赤くなってしまった。

 い、いや、有り得ない‼

 私なんかが有り得る訳がない‼

 そう思った私が母を見ると、母は唯、嬉しそうに手を振るだけで何も言ってくれなかった。

 伊藤も涼し気な顔で私に笑い掛けるだけだし、美雪が来てくれそうなのを文が停めてるし……。

 一体、何を言われるのかと考えていたら、

大隈から手を引かれ人気がない処まで連れて行かれてしまった。

「あ、あのっ‼ 大隈君‼」

「何、小松さん?」

 声が思いっきり裏返っている私とは対照的に大隈はいたって普通だった。

「は、は話って何?」

「ああ、ちょっと待ってくれよ……」

 そう言った大隈はきょろきょろと辺りを見渡した。

 ま、まさか、誰も人がいない事を確認してる⁉

 いよいよ、このシチュエーションからして、あれを言われる⁉

 で、でも、大隈が私にそんな気があるなんて一度も感じた事はなかった。

 それに、私もそんな気がないので、どうしたら良いのか分からなかった。

 そんな時だった。

 ある人物が近付いて来て、それに気付いた大隈が声を掛けたのだ。

「おっ⁉ やぁっと来た!」

「あぁっ?」

 それは、西園寺 清孝だった。

 西園寺はこれから県内にある野球部の強豪校である高校に進学する。

 そんな西園寺とは五月の体育祭以降、変な関係となっている。

 例えば一度も返ってきた事はない割箸を貸すとか、宿題を見せるとか。

 まあ、ほぼ強制的だったけど……。

 でも、それ等を含めていい思い出がいっぱいある。

 それこそ体育祭では安心してリレーのバトンを託せた。

 強引に修学旅行の一緒の班にさせられ観戦したプロ野球の試合。

 それから、からかわれていた時に助けてもらった……。

 い、いや⁉ こ、これは、いい思い出……なの⁉

 違わないけど、違うような……、そうであるようで……ないような……?

 そんな風に頭の中がぐるぐるしていると西園寺が怒鳴った。

「大隈てめぇ‼」

「じゃあなぁ、西園寺ぃ~」

 西園寺の怒鳴り声の後、大隈は楽しそうにそう言って何処かに行ってしまった。

 一体、大隈は何が言いたかったの?

 そんな風に私が大隈を見送っていると、西園寺は頭を乱暴に掻きむしった。

「どうしたの、西園寺君?」

「何でもねえよ‼」

 何故だろう……。

 何故か西園寺は怒っている。

 そう言えば朝から機嫌が悪かった気がする。

 こういう時は謝った方が良いのだろうか?

 いや、止めておこう。

 西園寺の性格からして、さらに怒りそうだから。

 そう思った私はこう言った。

「西園寺君。一年間、本当にありがとう!」

 他の人と同じぐらい……いや、それ以上に感謝している処があった。

 だから、私は素直にそう言えた。

 すると、西園寺からは意外過ぎる言葉が返ってきた。


 私は、小松 みどり。

 木田君、一年間本当にありがとう。

 平井君も色々と話してくれてありがとう。

 それから美雪ちゃんに文ちゃん。

 これからも、ずっと親友だよ!

 えっと……。伊藤君に大隈君……。

 何を企んでるの?

 ちょ、ちょっと大隈君!

 ま、待ってよぉっ‼

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