美雪主演、'はちゃめちゃ白雪姫'は大盛況だ!
私は、佐藤 文。
ねえ、小松さん。
最後まで凄くハラハラドキドキして楽しかったね!
早く宮本さんに会って感想を言いたいね!
じゃあ、早く教室に行って宮本さんを待ってよう!
'はちゃめちゃ白雪姫'の第一幕は、ポリマの不気味な笑いと共に下りた。
幕が下りる寸前、ポリマは、こう予言した。
「人生の小さな事から、幸せを得る……。
これが、私の計画の邪魔になると言うのか、鏡よ……」
謎の予言の後、会場となっている体育館は明るくなった。
どうやら五分後に第二幕が上がるようだ。
「凄い迫力だったね、小松さん!」
「そうだね、文ちゃん!」
私は今、友達の文とハイカラさんとで、親友の美雪主演、'はちゃめちゃ白雪姫'の演劇を観ている。
ちなみに文とは先程話していた女子で、ハイカラさんとは私の右隣にいる、
黒髪で、日本人形のような顔をした、年齢不詳の女性の幽霊の事である。
ハイカラさんは、人では私にしか見えず、声も聞こえない私の守護霊だ。
なので私の隣で一緒に美雪主演の演劇を観ていても、誰も何も言わないという訳である。
話は戻るが、私達が観ていた'はちゃめちゃ白雪姫'。
中学生が演じているとは思えない程の出来だった。
面白すぎて、あっと言う間に時計の針は午前一一時五五分を回っていた。
午後一二時には第二幕が上がり、この後スノーホワイト国がどうなるのかが分かる。
「さっきのポリマの予言の意味って、どういう事かな?」
「分からないけど……。鏡はやっぱり出て来るんだね!」
「そうだね。有名なあの台詞をいったら、宮本さんが鏡位に写るのかな?」
「うーん……。
今回は、世界で一番美しい者じゃなくて、アリオトの妃にふさわしい者は誰とか言うのかな?」
周りの人達もそうだが、私と文が'はちゃめちゃ白雪姫'の今後の展開がどうなるかを話していたら
ブザーが鳴り、会場は真っ暗になった。
そして、第二幕の幕は静かに上がった。
第二幕の幕開けは、美雪演じるメルクが予言のりんごを屋敷に持って帰るところから始まった。
メルクが屋敷に入ると上の兄である、フュンフ、ゼクスがメルクに黄金に輝くりんごについて聞く。
すると、メルクは、この大欣に輝くりんごは母上に捧げるりんごだと言う。
だが、フュンフ、ゼクスはこの大欣に輝くりんごこそが予言のりんごだと革新する。
そして、フュンフ、ゼクスはメルクが余所見をしている間に、大欣に輝くりんごを奪ってしまった。
「マーちゃん殿の飼い主殿! 大欣に輝くりんごが奪われてしまいましたよ!」
その一部始終を観ていたハイカラさんが叫んだ。
私は心の中でハイカラさんを宥めながら'はちゃめちゃ白雪姫'の今後の展開を静かに見守っていた。
大欣に輝くりんごが無くなった事に気付いたメルクはフュンフ、ゼクスが犯人だと気づく。
そして、フュンフ、ゼクスを追い掛け、王宮迄駆けるのだが、
これをステージの袖から袖までを何往復もする事で面白おかしく演じていた。
メルクは、フュンフ、ゼクスを追い掛ける中で、
スノーホワイト国の中で何が起きているのかを把握していく。
メルクがどういう風に把握していったのかは、
メルク達が走っている途中、スノーホワイト国の人々の声が放送として流れる事で表現されていた。
そして、その声を聞いたメルクは足を止め、
「あの大欣に輝くりんごは、スノーホワイト国に争いをもたらすりんごである!」
と、ステージの中央で私達に向け、声を張り上げた。
それから、凛々しい顔のメルクは大きく頷き、ステージ袖へと掛けて行った。
その後、ステージは真っ暗になり、暫くして第一幕の時に流れていた、あの上品な音楽が流れると、
ステージは明るくなった。
そして、赤いじゅうたんと、その上でウロウロしているアリオトが姿を見せた。
「まだか! 我が妃になるべく者が、りんごを手にし、我が下に来る日は!」
アリオトは、イライラしていた。
今まで、どんな望みも叶えてきたアリオト。
望みが中々叶わない事に苛立っていたと、ナレーションが流れた。
そんなアリオトの前に大欣に輝くりんごを持ったフュンフ、ゼクス兄弟が現れ、
少し遅れてメルクも現れた。
フュンフ、ゼクス兄弟が持っている大欣に輝くりんごを見たアリオトは、
予言のりんごの出現に喜び、そして、メルクこそが妃だと確信する。
そして、アリオトは大欣に輝くりんごを受け取り、メルクの前で跪き、求婚した。
だが、メルクは私達に向け、こう叫んだ。
「アリオト殿下! あなたは、あなたの欲望の為、スノーホワイト国を混乱に導いた!
目を覚まさせてあげる! こんなりんごなんて、こうだ‼」
メルクはアリオトが持っていた黄金に輝くりんごを奪い取り、真上に投げた。
そして、落ちて来るりんごを真っ二つに切り捨てた。
ゴトンと切捨てられたりんごが落ちた瞬間、客席からは、どよめきが起きた。
客席同様、ステージにいる者はメルクを除いてうろたえていたが、
そこにポリマがトコトコと歩いて来る。
「アリオト殿下⁉ どうなされましたか?」
「おお……、ポリマよ‼ そなたの予言のりんごが真っ二つになってしまった……」
アリオトはポリマにすがるように事の成り行きを話した。
ポリマはそれをアリオトの手を優しく握りながら聴いていた。
そんな二人は寄り添い、アリオトがポリマを抱き寄せたが、
そこに待ったをいれたのが、メルクだった。
「アリオト殿下! この予言のりんごを言い出したのは誰ですか?」
「それは、ここにいるポリマだ!」
「では、ポリマに問う! 予言のりんごが無くなった今、アリオト殿下の妃に相応しい者は誰だ?」
「そ、それは……」
ポリマは言葉につまった。
そのポリマにメルクは多くの問いを重ねていった。
予言のりんごとは、何か。
それは、どのような形をしていたのか。
どこにあるのか。
そして、どうやって予言は行われているのか……。
最後の問いにポリマは答え難そうに鏡と答えた。
すると、メルクはその鏡をここに運ぶように指示した。
そうして運ばれて来た私の全身が写る程の大きさの鏡を前に、
メルクはポリマに予言のりんごについて問うように言う。
だが、ポリマは鏡に問う事が出来ない。
そんなポリマにアリオトが頼むと、ポリマはこう言った。
「鏡ヨ、鏡。予言のりんごとは何だ?」
すると、ドラム音が流れ、色とりどりのランプが点滅し、鏡はこう答えた。
「そのようなりんごは最初からありません!」
そして、お喋りな鏡はポリマの企みを全て喋ってしまった。
その間、ポリマは鏡の声を遮るように声を張り上げたが、無意味だった。
全てを聴き終わったメルクはアリオトに向け、こう叫んだ。
「アリオト殿下! 目を覚ましましたか?
最初から予言のりんごなんて無いのです!
そんなまやかしなんかに頼らず、自分の未来は自分の手で切り裂きなさい!」
そして、メルクは鏡に向き直り、剣で鏡を切り捨てた。
すると、ステージは真っ暗になり、鏡が割れる音とポリマの断末魔が聞こえた。
何がどうなったのか息を飲んでステージが明るくなるのを待っていると、ステージが明るくなった。
だが、そこには鏡とポリマの姿はなかったのだ。
ステージ上の物も客席の物もざわめいたが、大切な事に気付いたアリオトの叫びで、
'はちゃめちゃ白雪姫'は締める事となった。
「あのようなまやかしに操られていた私は、何と愚かだったのだろう!
メルクよ、お前の言う通りだ!
私の未来は私の手で切り裂かねばならぬ!
そして、スノーホワイト国に良い未来を齎さなければならないのだ!」
アリオトの叫びが終わると、楽しそうな音楽が流れ、出演者全員で軽快に踊りだした。
その中で、メルクの言葉の意味が分かった。
メルクとは『人生の小さな事から幸せを得る』という意味。
その事がナレーションとして流れたので意味が分かった。
つまり、メルクがポリマの計画の邪魔になるという鏡の予言は当たっていたのだ。
最後までそれは分からなかったけれど、多くの事を学べ、
多くの感想をくれた美雪主演、'はちゃめちゃ白雪姫'の幕は体育館中に溢れる拍手の中、静かに下りた。
私は、またドキドキしてる。
それは、ハイカラさんも文も同じみたいだ。
早く、このドキドキを美雪に伝えたい。
そんな私の周りでは、まだ拍手が止む事を知らなかった。




