二学期が始まる前に、おさらいしとこっと♪
夏休みの間、多くの事を学んだ【みどり】は中学三年生の二学期を迎えた。
だが、久しぶりに登校する【みどり】は少しだけ不安に襲われる。
そんな【みどり】には多くの友達がいたのだ。
「おはよう。ハイカラさん」
「おはようございます。みどりさん」
私は、小松 みどり。
中学三年生である。
そして、本日は八月最後の週の月曜日。
つまり、二学期の始まりだ。
私は、中学一年生から二年生まで、所謂不登校だった。
だけど、中学三年生から一学期は一日も休む事なく登校した。
それは、私の横にいる、黒髪で、日本人形のような顔をした、
年齢不詳の女性の幽霊のおかげである。
この女性の幽霊の名前は、ハイカラさん。
私が中学三年生になってから、私の守護霊になってくれている。
ハイカラさんは時に厳しく、時に優しく私に寄り添い私を見守ってくれている。
だから、私は中学三年生の一学期を皆勤という形で終える事が出来た。
だけど、夏休みの補習は一度も出席しなかった。
それは、心の休養と、学びが必要だったからである。
この期間もハイカラさんは私を支えてくれ、私は今からまた中学校に登校しようとしている。
「もう、私が起こさなくとも、みどりさん、一人で起きれますね」
「えへへ。偶に寝坊するかもしれないから、その時は、起こしてね?」
「承知しております!」
ハイカラさんはこのように、普段の生活でも私を生長させてくれた。
恥ずかしながら、ずっと使えなかった箸も、一人で起きれなかった朝も、
もう人に頼らなくても大丈夫になった。
でも、さすがに久しぶりの登校は緊張する。
制服に着替え終わっても、無事に登校出来るか、心配になってきた。
その時だった。
「みぃーどぉーりちゃん‼ 早くしないと、遅刻しちゃうよ‼」
演劇部部長、宮本 美雪の声が家の外から聞こえてきた。
美雪は近所に住む、私の幼馴染で、クラスメイトの親友の女子である。
美雪は一学期の間、ずっと、一緒に登校してくれた。
そして、どうやら二学期も一緒に登校してくれるみたいだ。
それが分かると、
「美雪ちゃん、今、行くから!」
と、私は窓から美雪に声を掛け、一階に下り、美雪と合流した。
「お待たせ、美雪ちゃん。おはよう」
「おはよう! あれ? みどりちゃん、日焼けした?」
「海辺のゴミ拾いのボランティアで焼けちゃって……」
「えぇっーー⁉ みどりちゃん、ボランティアしてたの?」
「そうなんだ。あと、森の自然を守る活動と、街の清掃活動に参加したよ」
「凄い凄い! 会えない間にそんな凄い事してたんだ‼」
「凄くなんかないよ。補習をサボる形にはなったんだし……」
「補習なんて大した事なかったよ! 授業の遅れを補習って名目で、やってたんだし」
「へえ、そうだったんだ……」
「そうだよ! 特にさ義猿なんて、自分のペースが遅いのを私達のせいにしてさ!
それで補修って、何か感じ悪くない?」
「かもね。でも、授業がそれだけ進んじゃったんだ……。どうしよう……」
「大丈夫! 私のノートを見せてあげるから!」
「美雪ちゃん、いいの?」
「いいに決まってるじゃん! 親友なんだし!」
美雪は本当に優しい。
昔から変わらず、私に接してくれる。
だから、私は中学三年生の二学期も、美雪とハイカラさんの協力で登校出来た。
そして、無事に教室に到着し、私の席に着くと、
「小松さん、おはようございます。お久ぶりですね。元気にされておられましたか?」
と、私の前の席の木田 悟が話し掛けてきた。
「おはよう、木田君。元気にしてたよ」
「それは良かった。体調を崩されたのかと心配しておりました」
「そんなんじゃないの。ちょっと、ボランティアに参加したかっただけなの」
「ほう。奉仕活動ですか! 立派な心掛けですね!」
木田は、このように少し変わり者だ。
だけど、この変わり者具合がとても心地よいのである。
私が木田と話していると、
「おはよう、小松さん。久しぶり! 補習、サボってた?」
と、今度は、大隈 誠司が声を掛けてきた。
大隈はあの自然の家キャンプ以降、よく話し掛けてくるようになった。
「おはよう、大隈君。まあ、形上、サボるみたいにはなったかな?」
「大隈君。小松さんは夏休み、奉仕活動をなさってたんですよ。サボって等、ありません!」
「へえ、そりゃスゲエな! 俺は部活三昧だったぜ!」
大隈はバスケット部である。
「そう言えば、中体連、どうだった?」
「それがさ……。結晶まではいったんだけど、負けちまって……」
「そっかぁ……。残念だったね」
「でもさ! 強豪校の推薦、もらえるんでしょ?」
私と大隈が話していると、急に美雪が話しに割り込んできた。
「宮本、早耳だな……」
「早耳も何も、学校中の噂だったもん! 県外からも、オファー来てるんでしょ?」
「まあな!」
大隈はこの夏休みに中体連の優勝という切符は逃したが、未来への切符は掴んだようだった。
私が大隈と美雪との話を聴いていると、今度は、平井 雄平が話し掛けてきた。
「小松さん、久しぶりだな」
「平井君、久しぶり」
「ほい。これ、土産だ」
平井は、小袋に入ったお菓子を手渡してきた。
「えっ⁉ 何処か遊びに行ったの?」
「おうよ。盆休みにだがな。小松さん、先生が来る前に、隠しな!」
「えぇ……。も、もらっても、いいの?」
私が躊躇していると、美雪がその土産を見た。
「いいんじゃない? 私もこの前もらったんだし! 結構、美味しかったよ!
平井、まだあるんならちょうだいよ!」
「ねえよ‼」
「美雪ちゃん、そんなに美味しかったんだ……」
「宮本はやるって言ってないのに盗ったんだ‼」
「えぇーーっ⁉ だって、みんなに配ってたじゃん?」
「お前にやるとは一言も言ってないから‼」
平井と美雪が言い合っていると、大隈が話に入ってきた。
「平井、俺のは?」
「大隈の分がある訳ねえだろ‼」
「何で?」
「大隈、どの口がそう言うんだ?」
大隈と平井の間には、自然の家キャンプの一件以降、微妙な溝が出来てしまった。
「ほらっ! こいつ等に盗られる前に、小松さん、早く隠せ‼」
「わ、分かった!」
私は平井の勢いに負け、平井の土産を鞄にしまった。
このように、大隈とは対照的に、私と平井との距離は縮まった。
自然の家キャンプ以降、例のドレッシングのネタは続いていて、味の感想や、どの店が安いとか、
新商品が出た等の話をしている間に、そうなったのだ。
「平井‼ 私、盗ったりしてないから‼」
「それより、俺の分は?」
美雪と、大隈が平井を見た。
すると、木田が、二人を宥めた。
「まあまあ、皆さん、落ち着いてください。大隈君は兎も角、宮本さんはもらった訳なんですから」
「木田⁉
美雪は木田を睨んだ。
しかし、木田は美雪を見ず、平井を見た。
「そう言えば平井君。感想がまだでしたね。とても美味しかったです。ありがとうございました」
「おうよ。それは良かったぜ!」
「木田‼ 平井‼ 無視しないで‼」
「そうだ、そうだ!」
美雪は怒り、大隈は、からかい、平井と木田は美雪達を無視し、笑った。
そんな皆を見ていると、私のあの朝の不安は薄れていった。
すると、
「おい、小松‼ 遅えんだよ‼ さっさと夏休みの宿題出せ‼」
と、一段と日焼けした、西園寺 清隆が私の鞄から、
私がハイカラさんと終わらせた夏休みの宿題を取り出した。
「西園寺君⁉ またですか? いい加減に宿題は自分の力で……」
「ああーーっ‼ 聞こえねえ‼ 忙しいから、木田、邪魔すんな‼」
「西園寺、聞こえてんじゃん!」
西園寺は木田の注意や、大隈のからかう声が聞えない程、一心不乱に宿題を書き写していた。
その間に平井は席に戻り、美雪が呆れた顔で私を見てきた。
「もう、みどりちゃん。優しすぎ‼」
そして、ハイカラさんが例の扇子を取り出したけれど、
私はハイカラさんを見て首を横に振った。
ハイカラさんはあの扇子で、色々な奇跡を起こす。
私は、何度もそれに助けられてきた。
だけど、今はそれは必要なかったから、ハイカラさんにそう心でも伝えた。
すると、ハイカラさんはその扇子をしまってくれた。
こうやって、私の中学三年生の二学期は一学期とは違う形でスタートした。
私は、小松 みどり。
ハイカラさん、久しぶりに行く学校は怖かったけど、行って良かった!
また明日からもちゃんと行くね。
あ、あとね、渡したい物があるんだけど……。




