↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
44/67

第44話 とんでもないちから

「わっ……」


 火の水晶が、目を瞑っていてもわかるほどの輝きを発した事にソフィアは驚いた。


 思わず水晶から手を離してしまう。


 見ると、水晶はモーリスの手の上で太陽にも負けない勢いでピカピカピカーと輝いていた。


「あ、あの……」


 あんぐりと口を開けてポカンとしているモーリスに、ソフィアは尋ねる。


「これは……その、適性があった、という認識で良い?」

「えっ……? ああ、そう、ですね」


 我に帰ったモーリスが慌てて眼鏡を持ち上げて言う。


「これほどの輝きは、今まで見たことがございません。ソフィア様は間違いなく、火の精霊の適性が高いと言えるでしょう」

「よ、よかったぁ……」


 胸に手を当て、ほうっと息をつくソフィア。

 とりあえず適性無しの無能判定はされないようで、ソフィアは心の底から安堵していた。


 とはいえ。


(火の、適性かあ……)


 ちょっぴり複雑な心境ではあった。

 火ってなんとなく、扱いが難しくて危険なイメージがあったから。

 自分の性格的には向いていないのでは、と思う部分もあった。


「いや、それにしてもとんでもない輝きですね……このレベルだと、王城に仕える火の精霊魔法士並み……いえ、下手したらそれ以上の力を持っているでしょう」

「そ、そんなに……?」


 昨日の一件と同じ、言われてもピンと来なかった。

 ただただ困惑の声を漏らすソフィアに、モーリスはどこか興奮した様子で提案する。


「一応、他の属性の適性も調べてみますか」

「ええ、お願いしたいわ」


 前のめりにソフィアは言う。


 もしかすると、あと一つくらいは他にも適性の属性があるかも……?


(流石に、それは無いか……)


 自分の中に湧き出た期待をすぐに打ち消す。


 期待はしない。

 期待した結果、今まで何度も裏切られた来たのだと、ソフィアは自分にい言い聞かせた。

 


「クラリス、頼む」

「は、はい、ただいま」


 一連の流れをぽかんとした様子で眺めていたクラリスが、次は白い水晶……風の水晶を持ってやってくる。


「ではお願いします、ソフィア様」


 先ほどと同じように、水晶を持つモーリスにソフィアはこくりと頷く。


 先程よりかは迷いのない動作で、ソフィアは手を水晶に添え……。


 ビカビカビカビカビカーン!!


「きゃっ……」


 火の水晶の輝きと同じくらい、眩い輝きを放ち始めソフィアは仰天する。


「なっ……こ、これは……!?」


 一方のモーリスは目をガン開いた。


「風にも適性がある、という事でいいのかな……?」

「ええ、バッチリ適性がございます。これで二種類ですね!」

「それって、結構すごい事?」

「本当に凄いです、ソフィア様! 適性があるだけならまだしも、どちらもこれだけの輝きとなると……国内でもそうそうおりませんよ……!!」

「そ、そうなの……そうなのね……?」


 やはりピンと来ていないソフィアであったが。

 どうやら二種類は適性はありそうだと、嬉しい気持ちになって……。


(あれ……でも昨日、水の精霊魔法は割とうまくいったような……)


 ということは、もしかして、もしかすると。


「では次、水の水晶を……」

「こ、こちらになります」


 モーリスもクラリスも、何やら言葉を震わせながら水の水晶を準備する。


 また、同じように手を当てて、ソフィアは精霊力を流し込……。



 ビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカーン!!!!!!!!!!



「これまでの数々の非礼をお詫びしたい。どうやら貴女は稀代の天才のようだ」


 とんでもない輝きを放つ水晶を手に頭を下げるモーリスはなんというか、とてもシュールな光景であった。


「え、ええっ? 非礼なんて今までなかったような……」


 今この時まで、モーリスが内心でソフィアに対しどのような印象を抱いていたかなんて知る由もなく困惑するソフィア。


 一方で、驚きを一周回って冷静になったモーリスは、ソフィアに対し尊敬と畏怖の念を抱いていた。


(このほどの逸材……現時点でエルメルにいるだろうか……)


 三種類に適性がある者は、数人存在する。

 しかしそれぞれの適性がこれほどまでに強い者は……怪しい。


 何はともあれソフィアは、エルメルの中でも替えの効かないとんでもない才能の持ち主、という事は確定的だった。


 ──ソフィアは莫大な精霊力を持っていて、精霊魔法に関してはとんでもない才能を持っている。


 アランの言葉に対する疑いは、とうの昔に霧散していた。


(アラン様が私に、この大義を与えてくださった理由が……わかりました)


 身体が、震える。

 武者震いというやつだ。


 これほどの才能を生かすも殺すも自分次第。

 もちろん生かす方向に全力を尽くすが、ソフィアほどの精霊力の持ち主なら、この先のエルメルに歴史を残す存在になることは間違いない。


 その確信があった。


「あの……一応、調べますか?」


 クラリスが最後の水晶……土の水晶を差し出してくる。


「調べるだけ、調べてみますか……その必要はないでしょうけど」


 流石の流石に三属性で打ち止めだろう、とモーリスは高を括っていた。


「四種類の適性を持つなんて、聞いたことがありません。四属性の適性があるというのは歴史を振り返って見ても時代に一人いるかいないか……それこそ“世界樹の巫女”くらいですから……」

(世界樹の巫女……?)


 耳馴染みの無いワードに首を傾げるソフィア。

 一方でクラリスは、その単語にごくりと喉を鳴らす。


(いやでも……まさか、ね……)


 モーリスの背中に冷たい汗が伝う。


 あり得ない。

 そんなわけがない。


(そう頭では思っていても……もしかすると、ソフィア様なら……)


 そんな予感が、モーリスの脳裏に過った。

 クラリスから土の水晶を受け取って、ソフィアに向ける。


「これが最後の一個です。よろしくお願いします」

「え、ええ……わかったわ」


 ごくりと、息を呑む音が三人分聞こえる。


 先ほどとは打って変わって尋常じゃないほど緊迫した空気の中。


 ソフィアは水晶に手を当てて、精霊力を流し込む。


 ──瞬間、ソフィアの胸に懐かしいような、温かいような、心地よい感覚が湧き出たかと思うと。


 ぴかっと、先ほどとは比べ物にならないほどの光、いや、もはや閃光が弾けた。


 悲鳴をあげる間もなく、ビシビシビシイッ!! と水晶に亀裂が走り。


「うおっ……!?」 

「きゃっ……!!」


 ばりんっと、真っ二つに砕けた。

 モーリスの掌から、二つになった水晶が地面に落下する。


 あまりに予想外の事で、モーリスは目の前で起きた出来事を現実と認識できず絶句した。


「ソフィア様!? 大丈夫ですか、お怪我はありませんか……!?」

「え、ええ……大丈夫よ」

 すぐにクラリスがソフィアのそばにやって来て、手に怪我はないかを見回している。

 幸い、ソフィアもモーリスも無傷だったが……。


「…………」

「…………」

「…………」


 人は本当に驚く出来事が起こった時、声を上げるのも忘れて黙ってしまうらしい。


 その場にいた三人、誰一人としてしばらく言葉を発する事が出来なかった。


「……ご、ごめんなさい。高い品を、壊してしまったわ……」


 最初に口を開いたソフィアのズレたコメントに、モーリスはずっこけそうになる。


 身体を持ち直して眼鏡を持ち上げた後、状況を整理する。


 今まで眩い光を発するだけだった水晶が、真っ二つに弾けた。

 つまりそれは、ソフィアから流れる精霊力に水晶が耐えられなかったという事。


 俄には信じがたい。


 水晶自体の故障……も可能性として考えたが、王城にて厳重に保管された一級品に限ってそれは考えにくかった。


 起こった事をそのまま受け止めるとつまり、これが意味する答えは……ソフィアは四属性全てに適性がありかつどれも強大な力を持っていて、その中でも土の精霊との適性があり得ないくらい強い……などという、報告書に書いて提出したら「夢でも見てたのか」と怒鳴り返されそうな物だった。


どこか震えた声で、モーリスは尋ねた。


「ソフィア様は一体……何者ですか?」

「さ、さあ……?」


 国家の命運が掛かるほどの力を証明したにもかかわらず、どこにでもいそうな少女のような仕草をするソフィアに、モーリスは「どうしたものか……」と天を仰いでしまうのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【お知らせ】 新作の連載を開始しました! ↓タイトルをクリックすると新作のページに飛べます。

聖女様になりたいのに攻撃魔法しか使えないんですけど!?



― 新着の感想 ―
[気になる点] 土属性に至っては、多分フェンリル花子が関わってる気がする⋯⋯。 [一言] だろうなとは思ったよ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。