1.他の女を連れた婚約者に冤罪を被せられて公衆の面前で婚約破棄されました
幾多の中からこのお話を選んでもらってありがとうございます!
今回は和風ファンタジーを皆様の元にお届けします。
最後までお付き合い頂ければ嬉しいです!
色とりどりの服装に身を固めた卒業生がパーティー会場で歓談していた。
今日は帝国の属国となった我がヤマト王国の学園の卒業パーティーだった。
これを最後の機会と婚約者のいない高位貴族の男に群がる礼嬢達と美人の令嬢に群がる男達。あるいは友人達に最後の別れを惜しむ遠方の貴族達、そして帝国から来た貴族達は卒業を前に大いに盛り上がっているグループもあった。
少し前は袴姿一択だったのが、今や帝国の影響か、洋装が大半を占める。これも我が国が帝国に占拠されたからだ。
私がいればこうも容易く帝国に占拠などされなかったのに……忸怩足るものがあった。
「ほう、これは牙を抜かれた戦姫様ではございませんか?」
私はぎょっとした。
この紋付き袴の男は南の辺境伯だ。名をキョウシロウ・サツマ。別名サツマの狂人。
息子二人を帝国の戦いで失ってなお、徹底抗戦しようとした南の豪傑だ。
私に会う度に決起しろと求めてくる困ったご仁だった。
「はて、それで戦姫様が牙を抜かれた見目麗しい婚約者様はどこにいらっしゃるのですか?」
白々しくキョウシロウは私を見てくれた。
「さあな、私は興味が無いからよく知らん」
私は首を振ると目の前のデザートに手を伸ばした。
そう、私は婚約者狙いの令嬢や、親好を深める同級生達を尻目にデザートコーナーに陣取って、ケーキを爆食いしていた。
帝国のケーキたるもの、これ程旨いものがこの世にあるとは思っていなかった……いや、これで前世の懐かしい味を思い出していた。到底その味には到達していなかったが……
前世、そう、私には前世の記憶があったのよ。それはおいおいと明らかにしよう。
今はやることのない私はやけ食いするしかなかった。
礼服を着てここで爆食いしている私は浮いていたみたいだ。
「ああら、これはユキ様。こんなところで一人寂しく食事をなさっているなんて、どうされたのです?」
そこに洋装した女達がやってきた。
金ぴかの衣装を着ているのがサイタマ子爵令嬢だ。他の令嬢の大半がサツマとかデワとか、昔の国の名前になっているのに、サイタマだけ現代の名前になっているのは何でだろう? 作者の意図なのか、なんなのかよくわからなかったが……
「まあ、本当に、婚約者のアデラール様はあちらで、バルバラ様と仲良くしていらっしゃいましたのに! その婚約者様がこのような所に一人でやけ食いしていらっしゃるなんて?」
「戦姫様も形無しですわ」
令嬢達が笑ってくれた。
「サイタマ子爵令嬢、戦姫様にあまりにも失礼であろう」
後ろで聞いていたキョウシロウが指摘してくれた。
「まあ、誰かと思えばサツマ様ではありませんか」
「断髪令が出たにもかかかわらず、まだ、武士の格好をしていらっしゃるなんて」
「帝国に逆らうおつもりですの?」
この令嬢達はキョウシロウになんてことを言うのよ?
馬鹿なの?
無礼撃ちにされたいの?
私は頭が痛くなった。
「ほううう、貴様ら夷人どもの服を着て、我がヤマト魂を汚すとは、命が要らないと言うのだな」
キョウシロウはいきなり刀の柄に手をかけてくれたのだが、ちょっと、誰よ! パーティー会場に帯剣を許した愚か者は!
私は学園の護衛騎士が狂人の一睨みで黙って通したとか知らなかった。
「キヤーー!」
「な、何を」
女達はキョウシロウの殺気を浴びて、腰を抜かしていた。
本当にこいつらは馬鹿だ。
私が仲裁をしようかどうしようか迷った時だ。
「なんの騒ぎだ?」
ここに私の婚約者のアデラール・ボンゴイジパング総督令息が現れた。それも腕に抱きついたピンク頭のバルバラを連れていた。バルバラはこれでもかと私には無い胸をアデラールの腕に押し付けているのが見えた。
「アデラール様、私達がそちらのサツマ伯に断髪していないのは不敬ではないですか、とお話ししたらいきなり斬りかかってこようとなされたのです」
サイタマがいけしゃあしゃあと言いつけてくれた。
「なんだと、サツマ伯は我が父の定めた帝国の掟に従わないと言うのだな」
アデラールは嬉々としてサツマ伯を睨み付けた。こいつも馬鹿だ。
サツマ伯が本気になれば、帝国の騎士の100人が相手になっても勝てないのに!
「アデラール様、サツマは私と話していただけです。決して、逆らうとはもうしておりません」
私は双方のためになると助けを出したつもりだった。
「ほお、ユキはサツマ伯と何か密談していたのか?」
「密談などとんでもない」
アデラールの言葉に私は打ち消そうとした。
「アデラール様。私は二人で反乱の相談をなさっているのを確かに確認しました」
サイタマが飛んでもないことを発言してくれた。
「なんじゃと、ユキはサツマ伯と反逆の相談をしていたのか?」
「はい、私はしかと聞きました」
サイタマがこちらを見て笑ってくれた。
私はその瞬間、嵌められたのを知った。
「まあ、なんということでしょう」
「帝国に反逆するなど、何て怖い」
「アデラール様、ユキ様は私とアデラール様が仲良くしていることに嫉妬して、サツマ伯と反逆して、あなた様を亡き者にしようと画策しているのですわ」
従姉妹のバルバラが飛んでもないことを言い出してくれた。
こんなボンクラが誰と仲良くなろうと私は全然気にしないのに!
これは私に対する侮辱だ。
この一言で叩き斬る理由になるのだが……
サツマの馬鹿はニコニコ笑って私を見ているし……こいつもぐるかと私は叫びたくなった。
「ユキ・ヤマト。貴様、私の婚約者の地位にあることをいいことにバルバラにした、嫌がらせの数々、もう我慢ならん。その上、反逆を企むなど言語道断。ここに俺は貴様との婚約を破棄することを宣言する」
愚かなアデラールは公の場で私に婚約破棄を言い渡してくれたのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
婚約破棄されたユキの運命や如何に?
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