↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
81/140

黒譜の民編 80話 声を持つ責任

白紙市リュネアに、封譜派のロアムが再び現れた。

ロアムは、声が動けば傷も動き、黒譜が広がると考え、声になる前の場所を封じる声源封査を行う。

リシアはすぐに歌で押し返すのではなく、人々が自分の声のありかを示すのを待った。

そのうえで短い守護詩を使い、それぞれの声が封査盤へ奪われないよう支えた。

ノエルもまた、自分の未許可記録を開くか閉じるかは自分が決めると声にし、封査の線を退ける。

封譜派は退いたが、ロアムは去り際に、声を持つ責任を示せと言い残した。

白紙市の声は封じられなかった。

だが、それぞれが声をどう持つのかという問いは、まだ残っていた。


 声源封査が退いた翌朝、白紙市リュネアには、いつもの紙鳴りが戻り始めていた。


 完全ではない。


 風が通るたび、店先の白紙や紙暖簾はさらさらと揺れる。けれど、その音はまだどこか慎重だった。大きく鳴りすぎないように、町そのものが自分の喉を確かめているようだった。


 市場の人々も同じだった。


 挨拶は交わされる。


 品物の値段も告げられる。


 子どもたちの声も戻っている。


 それでも、誰かが少し大きな声を出すと、周囲が一瞬だけ振り向いた。声が出ることを喜びながら、同時に、その声がまた奪われるかもしれないと覚えている。


 リシアは宿の食堂で、温かい湯をゆっくり飲んでいた。


 喉の痛みは、昨日より和らいでいる。


 だが、完全には消えていない。


 声源封査に抗った時、無理に歌わなかった。それでも、喉の奥に灰色の輪が残っているような違和感がある。


 シルはテーブルの上に座り、干し果物を一粒だけ前足で転がしていた。


 食べるでもなく、遊ぶでもなく、ころころと右へ、左へ。


「食べないの?」


 リシアが尋ねると、シルはちらりとこちらを見た。


 ちい。


 先に食べろ。


 そんな顔だった。


 リシアは湯の器を両手で包み、少しだけ笑った。


「心配してくれてるんだ」


 シルは慌てて干し果物を口に入れた。


 心配していたわけではない、とでも言いたげだった。


 だが、尻尾は落ち着かずに揺れている。


 リシアはもう一口、湯を飲んだ。


 歌えなくなるかもしれない。


 昨日、その恐怖が一瞬だけ胸をよぎった。


 声を失うこと。


 歌詞帳が開いても、歌えないこと。


 誰かの心歌を聞いても、それに応える声を出せないこと。


 それは、歌魔術師であるリシアにとって、ただ不便というだけではなかった。


 自分の一部が、根元から閉じられるような感覚だった。


 だからこそ、ロアムの考えが完全に分からないわけではない。


 声は危うい。


 歌は誰かを動かしてしまう。


 記録は誰かを縛ってしまう。


 破ることも、消すことも、封じることも、痛みを広げないための方法として選ばれることがある。


 けれど、昨日の市場でリシアが見たのは、それだけではなかった。


 声を奪われそうになった人々が、自分の喉や手や紙に触れ、自分の声のありかを取り戻そうとする姿。


 ノエルが、自分の記録を閉じるのは自分だと言った声。


 イゼルが、姉の手紙を今は読むとも燃やすとも決めず、持つことを選んだ手。


 それらはすべて、危うくても手放してはいけないものだった。


 食堂の扉が開いた。


 イゼルが入ってくる。


 昨夜より少し顔色は良いが、目の下の影は濃い。胸元には、例の手紙が入っているのだろう。服の上からでも、彼がそこへ無意識に手をやるのが分かった。


「ここにいたのか」


「おはようございます」


「声、戻ったんだな」


「少し掠れますけど」


 リシアが答えると、イゼルは椅子を引いて向かいに座った。


 注文もせず、しばらく黙っている。


 シルが干し果物を抱えて、じっと彼を見た。


 イゼルはその視線に気づき、苦い顔をした。


「何だよ」


 ちい。


 シルは短く鳴いた。


「たぶん、何か食べた方がいいと言っています」


「リスにまで心配されるほどの顔か」


「少し」


 リシアが正直に答えると、イゼルはため息をついた。


 やがて、給仕に粥を頼む。


 それだけでも、少し前進なのかもしれない。


 食事が来るまでの間、イゼルは胸元から手紙を取り出した。


 黒譜を剥がした後も、紙はまだ傷んでいる。端は焦げたように黒ずみ、文字もところどころ潰れている。


 けれど、確かに手紙だった。


 誰かが誰かへ向けて書こうとしたもの。


 イゼルはそれをテーブルに置かなかった。


 両手で持ったまま、低く言う。


「読んでない」


「はい」


「燃やしてもいない」


「はい」


「それでいいのか分からない」


 リシアはすぐには答えなかった。


 正解を出すべき場面ではない。


 イゼルは手紙を見つめたまま続ける。


「姉が何を書こうとしたのか、知りたい。でも、知ったら、俺の中で姉の最後が決まる気がする」


 手紙を握る指に力が入る。


「読まなければ、まだ途中のままだ。燃やせば、何もなかったことにできる。なのに、どっちもできない」


 その奥から、心歌が微かに聞こえた。


『まだ姉を終わらせたくない』


 リシアはその声を胸の中だけで受け止めた。


 歌にはしない。


 イゼルの代わりに言わない。


「持っているだけでも、選択だと思います」


 リシアは静かに言った。


「読むことだけが向き合うことではないですし、燃やすことだけが手放すことでもないと思います」


「都合のいい言い方だな」


「そうかもしれません」


「でも、今はそのくらいが助かる」


 イゼルは苦い笑みを浮かべた。


 それは、本当にわずかな笑みだった。


 給仕が粥を運んでくる。


 イゼルは手紙を丁寧にしまい、匙を取った。


 ひと口食べる。


 顔をしかめる。


「薄い」


「喉には優しいと思います」


「俺は喉を封じられたわけじゃない」


「でも、昨日たくさん怒鳴ろうとしていました」


 イゼルは反論しかけ、やめた。


 シルが干し果物をひと粒、イゼルの器の横へ置く。


 イゼルは目を瞬く。


「くれるのか」


 シルは胸を張った。


 リシアは少し驚いた。


「珍しい」


「そんなに珍しいのか」


「かなり」


 イゼルは干し果物を見つめ、少しだけ笑った。


「ありがとな」


 シルは満足そうに鳴いた。


 その時、宿の外から鐘のような音がした。


 正確には鐘ではない。


 木板を叩く音だ。


 市守が人々を広場へ集めている合図だった。


 イゼルは匙を置いた。


「未読箱の件だな」


「決めるんですか」


「市の長と紙屋たちが話すらしい。俺も呼ばれてる」


「行きましょう」


 リシアが立ち上がると、イゼルは少し驚いた顔をした。


「来るのか」


「見届けます。決めるのは町の人たちですけど」


 イゼルは短く頷いた。


 広場には、すでに多くの人が集まっていた。


 未読箱は中央に置かれている。


 その周りには、昨日人々が重ねた白紙や折り目の紙、手形の紙が整えられていた。封譜派の灰色の札は、市守の透明な保管箱に入れられている。


 燃やされてはいない。


 白綴じ書庫へ移されてもいない。


 誰もが見える場所に置かれていた。


 市の長が前へ出た。


 白髪の小柄な女性だった。背は低いが、声はよく通る。


「昨日、この市は声を封じられかけました」


 広場が静まる。


「私たちは、未読箱をどう扱うか決めなければなりません。これまでのように広場に置くのか、封鎖するのか、書庫へ移すのか。あるいは、箱そのものをなくすのか」


 ざわめきが起きる。


 箱をなくす。


 その選択肢に、リシアは胸が少し痛んだ。


 しかし、それを否定することはできない。


 箱があるから狙われた。


 そう考える人がいても当然だった。


 紙屋の女性が前に出る。


「私は、箱を残したいです」


 声は震えていた。


 けれど、途中で止まらなかった。


「でも、今までと同じにはできません。預けた紙を誰が守るのか、どこまで誰が見ていいのか、何も決めずに置いていたから、リュシカにも封譜派にも触れられた」


 リュシカは広場の端にいた。


 その言葉に反論しなかった。


 ただ、静かに聞いている。


 紙屋の女性は続ける。


「未読箱は、読まない箱です。だけど、読まないなら何もしなくていいわけではありません。読まないために、守る決まりが必要です」


 市守が頷く。


「市守が管理する。だが、市守だけでは不十分だ。預けた人、紙屋、町の代表、それぞれが鍵を持つ形にしたい」


「鍵?」


 誰かが尋ねる。


 市守は箱の蓋を示した。


「ひとりの判断で開けられないようにする。預けた人が返却を望んだ時だけ、複数人の立ち会いで返す。誰かが勝手に読むことは禁じる」


 リュシカが静かに言った。


「記録上、妥当です」


 ノエルが広場の端から言う。


「あなたが言うと不安になる」


「不安も記録できます」


「しないで」


 短いやり取りに、数人が小さく笑った。


 白紙市で、リュシカに向けて笑いが起きるのは、きっと珍しいことなのだろう。


 リュシカ本人は、少しだけ不思議そうにしていた。


 市の長が話を戻す。


「箱を残すかどうか、ここで決めます。残すなら、今言った新しい管理の形にします。なくすなら、中の紙は希望者へ返し、受け取り手のないものは封をしたまま保管します」


 誰もすぐには答えなかった。


 リシアは広場の人々を見る。


 不安。


 迷い。


 怒り。


 それでも、逃げずに考えようとしている空気。


 そこに、昨日よりも少し強いものを感じた。


 シルが肩の上で、リシアの頬を軽くつつく。


 何もしないのか、というように。


 リシアは小さく首を振った。


「決めるのは、町の人たち」


 シルは頷いた。


 それでも、リシアは歌詞帳へ手を添えた。


 歌うためではない。


 必要なら、迷いに呑まれそうな人々が自分の声を見失わないよう、支えるために。


 最初に手を挙げたのは、昨日子どもの手を握っていた母親だった。


「残してほしいです」


 彼女は子どもの肩を抱きながら言った。


「私は、まだ書けない紙を入れました。いつか返してほしいと思うかもしれない。ずっと返してほしくないと思うかもしれない。でも、箱がなくなったら、私はそのどちらも選べなくなる」


 次に、老人が手を挙げた。


「わしも残す方に」


 紙職人の若い男が続く。


「管理は厳しくした方がいい。でも、なくすのは違うと思う」


 少しずつ、声が増える。


 残す。


 怖いけれど残す。


 今までと同じではなく、守り方を変えて残す。


 一方で、なくしたいという声もあった。


「また狙われるなら怖い」


「子どもの紙が勝手に読まれたらと思うと、残せない」


「箱がある限り、黒譜も封譜派も来る」


 それらも正しい声だった。


 リシアは、それを否定しなかった。


 市の長も否定しなかった。


 ひとつずつ聞き、紙屋たちが記録していく。


 リュシカが記録したそうにしていたが、ノエルがじっと睨んでいるため、手を出さなかった。


 やがて、市の長がまとめた。


「箱は残します。ただし、広場に置いたままにはしません。見える場所に、小さな保管堂を建てます。鍵は三つ。市守、紙屋組合、預け人の代表が持つ。返却以外で開けることを禁じます」


 広場は静かだった。


 全員が納得したわけではない。


 それでも、町としての選択が置かれた。


 リシアはその場で、小さく息を吐いた。


 歌わずに済んだ。


 それは逃げではなく、町が自分たちで声を重ねられたということだ。


 イゼルが横で呟く。


「俺は、箱を壊す方に寄ってた」


「今は?」


「まだ少し思ってる。でも、姉の手紙を燃やしてない俺が、他人の箱を壊せとは言いにくい」


 彼は苦笑した。


「面倒だな、声を持つって」


「はい」


 リシアは頷いた。


「とても」


 その後、リシアは白綴じ書庫へ向かった。


 リュシカが、話があると言ったからだ。


 白綴じ書庫は相変わらず白かった。


 封書も帳面も、棚に静かに並んでいる。


 以前より少しだけ、白さが怖くなくなった気がした。


 リュシカは中央の机に、白い台帳を置いた。


「待つ記録、という分類を仮登録しました」


 リシアは瞬きをした。


「本当に作ったんですか」


「必要になりましたので」


 台帳には、いくつかの項目が書かれている。


 本人未許可。


 開封不可。


 返却待ち。


 本人保留。


 未読保管。


 待つ記録。


 リシアはそれを見て、静かに息を呑んだ。


 リュシカは続ける。


「記録派は、残すことを優先してきました。けれど、残すために待つという扱いを正式に持っていなかった」


「それを、変えるんですか」


「変えるのではありません。追記します」


 リュシカらしい言い方だった。


 だが、そこには確かな変化があった。


「記録は、すぐ開くためだけにあるのではない。そういう分類も必要だと判断しました」


「それは、リュシカさん自身の判断ですか」


「はい」


 リュシカは短く答えた。


 その声に、初めて少しだけ人間らしい迷いが混じっていた。


「ただし、私は記録をやめません」


「分かっています」


「あなたも歌をやめないでしょう」


「はい」


 二人はしばらく向き合った。


 完全に分かり合ったわけではない。


 たぶん、これからも何度もぶつかる。


 それでも、リュシカは「待つ」ことを記録に加えた。


 それは小さくても、大きな変化だった。


 リュシカは机の引き出しから、細い白紙を一枚取り出した。


「もうひとつ」


 リシアは身構えた。


「A・Rの未唱記録についてです」


 胸の奥が、静かに冷える。


 シルが肩の上で体を硬くした。


 リュシカはその反応を見て、すぐに紙を伏せた。


「開きません」


 その一言に、リシアは少しだけ息を吐いた。


「存在しているんですね」


「正確には、存在の痕跡があります。完全な記録ではありません。裂け目に近い」


「裂け目」


「複数の記録から、同じ名の断片が欠けています。欠けているのに、欠けた跡だけが残っている」


 リシアの指が震えた。


 アイシャ。


 戦死扱い。


 灰鐘。


 王都の記録。


 欠けた名。


「その記録は、どこにありますか」


「ここにはありません」


 リュシカは答える。


「白紙市にあるのは、痕跡だけです。実際の裂け目は、おそらく星に関わる古い記録の中にあります」


「星」


 リシアの歌詞帳が、胸元でかすかに震えた。


 星見台で得た言葉が蘇る。


 星は答えではない。


 願いを映す、遠い鏡。


 リュシカは伏せた紙を、リシアには渡さなかった。


「今は、これ以上渡しません」


「なぜですか」


「あなたが今読むと、声を背負いすぎます」


 ロアムの言葉と似ていた。


 歌術師の声は、いずれ全員の声を背負いすぎて潰れる。


 リシアは反射的に反論しそうになった。


 けれど、できなかった。


 今の自分は、喉も心も少し疲れている。


 アイシャの名を見れば、冷静でいられる自信がない。


 リュシカは静かに言った。


「待つ記録です」


 リシアは唇を結ぶ。


 悔しさもあった。


 知りたい。


 今すぐに。


 けれど、白紙市で学んだばかりだ。


 開けないことも、選択になる。


 待つことも、逃げではない。


「分かりました」


 リシアは言った。


「今は、読みません」


 リュシカは頷いた。


「その判断を記録します」


「それは、していいです」


 リュシカはほんの少しだけ目を瞬かせた。


 意外だったのかもしれない。


 それから、台帳へ短く書いた。


 A・R関連裂け目。


 歌術師リシア・フェルミナ、現時点での開示保留を受諾。


 シルがリュシカをじっと見た。


 まるで、その記録の一文字でもおかしければ抗議するつもりのようだった。


 リュシカは真面目に付け加えた。


 相棒シル、監視。


「そこは書かなくていいです」


 リシアが言うと、リュシカは首を傾げた。


「事実です」


 シルは胸を張った。


 リシアは苦笑した。


 白綴じ書庫を出ると、夕方の光が白紙市を淡く染めていた。


 広場では、未読箱を一時的に移す準備が進んでいる。


 イゼルは破譜派の仲間とともに、黒譜を分ける作業を手伝っていた。


 ノエルは水路沿いの欄干に寄りかかっている。


 未許可記録は、まだ彼女の腕の中にある。


 リシアは近づきすぎない距離で足を止めた。


 ノエルは振り返らずに言う。


「読まなかったんだ」


「何をですか」


「白綴じの女が持ってた紙」


 リシアは少しだけ驚いた。


 見ていたのだろうか。


 それとも、気配で察したのか。


「はい。今は読みません」


「ふうん」


 ノエルは水面を見たまま言う。


「少しは覚えたんだ」


「まだ、よく間違えます」


「知ってる」


 その返事は早かった。


 リシアは小さく笑いそうになったが、こらえた。


 ノエルは帳面の紐を指で触る。


「これ、まだ重い」


「はい」


「でも、昨日よりは少しだけまし」


「それは、よかったです」


「あなたの歌のおかげじゃない」


「はい」


 ノエルは少しだけこちらを見る。


「でも、あのリスの紐は悪くなかった」


 シルが肩の上で、得意げに鳴いた。


 ちい。


 ノエルはそれを見て、すぐに目を逸らした。


「調子に乗らないで」


 シルはさらに胸を張った。


 リシアは今度こそ少し笑った。


 白紙市の夕方に、紙鳴りが戻っている。


 完全ではない。


 傷も恐れも残っている。


 でも、町は箱をなくすのではなく、守り方を変えて残すことを選んだ。


 イゼルは手紙を持ち続けることを選んだ。


 リュシカは待つ記録を加えた。


 ノエルは帳面を燃やさず、少し緩い紐で結び直した。


 リシアは、A・Rの記録を今は読まないと決めた。


 声を持つ責任とは、すぐに声を出すことだけではない。


 黙ること。


 待つこと。


 持つこと。


 開けないこと。


 それらを、自分で選び続けることなのかもしれない。


 リシアは喉に手を当てた。


 まだ少し痛い。


 でも、声はある。


 歌はある。


 そして、歌わない選択も、まだ自分の中にある。


 水路を渡る風が、白い紙を揺らした。


 さらさらと、白紙市が小さく鳴る。


 その音は昨日より少しだけ、町自身の声に近かった。


今回は、声源封査の後の白紙市を描きました。


未読箱をなくすのか。


残すのか。


残すなら、どう守るのか。


リシアが答えを出すのではなく、白紙市の人々自身が話し合い、箱を残しながら守り方を変えることを選びました。


イゼルは、姉の手紙をまだ読まず、まだ燃やさず、持つことを選びます。


リュシカは、記録の中に「待つ記録」という分類を加えました。


ノエルも、自分の未許可記録を抱えたまま、少しだけ軽くなったことを認めます。


そしてリシアは、A・Rに関わる記録を今は読まないと決めました。


声を持つ責任とは、声を出すことだけではない。


待つこと、持つこと、開けないこともまた、ひとつの選択なのかもしれません。


今回も読んでくださり、ありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。