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泣いている 君の身体は かっこいい

挿絵(By みてみん)


「フ…ハハハ…」


急にシリウスが、ゴロリと仰向けになった。


「ハハハ…

なんか…笑っちゃいますね…」


私は身を起こした。


シリウスは、片手で目を覆っている。


「ハハ…本当に…フッ…フッ…」


彼の口元が大きく歪む。


「なんですか…

僕が…気持ちよくなってから…殺してって…

ハハハ…フッ…」


シリウスの声は震えて、

手の下から、涙が幾筋も伝って落ちる。


「だって…

折角なら、楽しんで欲しいもん…」


私も、笑いながらしゃくり上げる。


「ああ…もう…リヒトさんは…」


シリウスは両手で目を覆う。


「…好きです。

…リヒトさん…」


言葉の最後は、切れ切れで、

すすり泣きにかき消える。


「シリウス…

近くに行きたいから…

【封殺】をかけて…」


シリウスは、私に片手を伸ばした。


「神通力…【封…】」


しかし、また、顔を覆う。


「フフフ…もう、いいです…

実は、獣化したリヒトさんも、

僕、好きなんです。

すごく…すごく綺麗で…」


「エェッ!?

私、獣化した私、大嫌い!!!」


私はプリプリしながらにじり寄ると、

シリウスの額の刻印に、自分の額をつける。


「ハイ、ほら、封殺!」


シリウスが諦めたように、優しく封殺をかけると、

私は少し安心して、ホッとため息をついた。


シリウスの頭を自分の膝にヨイショと載せ、

シーツを引き寄せると、

彼の涙に口づけしたいのを抑え、

その涙をトントン拭き、ついでに自分の涙も拭く。


その瞬間、私は、シリウスの裸の上半身が間近に見えてハッとした。

現実のものとは思えないほどの鍛え上げられた肉体に目が釘付けになったが、

同時にあまりにも美しく、見てはいけない気すらした。


この身体に抱き締められていたのかと思うと、

胸の鼓動が激しく私を揺らす。


恥ずかしさと照れくささでいたたまれない私。

ああ…本当に、この男性に私はあまりにも不釣り合いだ。


「シリウス…」


「はい…?」


「身体…ものすごく…かっこいいね…」


「ハイ!?!?」


シリウスは、慌てて上半身にシーツをかける。


「普通ですよ、こんなの…

ファリスやアダムはもっと筋肉がついているし、

体技学院や騎士学校にだって…」


「すごい…服を着てるときは、こう、スッとしてるのに…

その中は、こんなに…」


私は、シリウスが言うことに耳を貸さず、シーツの上から、彼の身体をつついてみる。


「ワァ…すごい…!」


「ああ、もう!

今、僕たち、割と真面目な状況じゃなかったですか!?」


「でも、こんなにかっこいい身体だもん!」


「アァ―――――ッッ!もう!!!」


シリウスは上体を起こした。

が、耳まで赤くなった顔を、膝に埋めている。


私はふと不安になった。


「ねえ…今、君は…シリウス?」


シリウスは少し顔を上げて、私を見た。


「はい、そうです。

…リヒトさんは?」


「ちゃんと、私だよ。」


「なんか、変な会話ですね。」


思わず二人で微笑む。


「3年前も…こんな感じで、このベッドで笑い合ったこと、あったね。」


「ああ、ダンスをしたときですね?

僕、まだ13歳だったのに…

随分、積極的でしたね…」


ふいに、シリウスは、脱ぎ捨てられた上着をさっと羽織ると、

寝台を降りて、私に手を差し出した。


「美しいLady(レディ)、私とダンスを踊っていただけませんか」


「美しくないから、その部分は否認します。」


私は、彼の手を取って立ち上がる。


シリウスは優雅に微笑むと私をリードして踊り始めた。


「歌って欲しいな…」


シリウスは静かに頷き、あのときよりも格段に低くなった、

でもやはり美しい声で、あの時と同じ優しい歌を歌い始めた。


Someday my prince will come

Someday we'll meet again

And away to his castle I go,

To be happy forever I know


私はシリウスのリードに身を任せる。

歌の意味が心にしみわたって祈りに変わる。


Someday when spring is here

We'll find our love a new

And the birds will sing and wedding bells ring

Someday when my dreams come true


シリウスの手や体の温もり、

耳に届く美しい歌声、

二人きりの空間…


今の私には、これ以上何も要らない。


************


どれほどの時間、踊っていただろうか。


燭台の火がいくつか消え、部屋はほの暗い。


ゆっくりとシリウスが踊りを止めた。


私はギクリとしてシリウスを見上げた。

…よかった、「シリウス」だ。


が、シリウスの顔が真っ青になっている。

私は飛び上がった。


「大丈夫!?どうしたの!?しんどい!?」


「リヒトさん、落ち着いて。大丈夫ですから。」


「大丈夫じゃない!真っ青だよ!

ほら、横になって!」


私は寝台に向けて彼の手を引っ張った。


「大丈夫です…

緊張してるだけですから…


リ…リヒトさん…」


シリウスは、彼の手を引っ張ろうとする私を強固にとどめた。


「リヒトさん。三年前の答えを、聞きたいです。」




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