エーレントの最期
私が到着したときには、
エーレントは、
猫族の死体が積み上がり、
まだ炎がくすぶる広場の中央で、
石造りの椅子に座って、まっすぐ私を見つめていた。
エーレントの頭には布が巻かれていたが、
左目から、太陽のような強い光が放たれている。
私は、神鼠の、猫族に対する恐怖で身動きがとれなくなる。
「ゴミ鼠、アンタが、俺を処刑しろ。」
喉が焼けてかすれていても、芯を失わない声。
私は凍り付いた。
全身の激痛も、心の苦痛も、
何一つ感じさせない、
エーレントの誇り高い姿に震えているのだ。
「大王様は、直接手を下さない…」
私は、声を上げる衛兵を止め、広場にいる全ての者に、離れて見ているように伝える。
エーレントと私は、相対した。
「エーレ…」
「俺の名を呼ぶな。」
輝きを失わないエーレントの片目は、俺を凝視している。
狭いアパルトマンに住んで、
朝から晩まで働き、
粗末な食事を自分で作り、
床や長椅子で寝ていたこの男は、
この石造りの玉座が霞むほど、
王としての威厳を放っている。
「最期だ。
何か…」
「話すことも、
聞きたいことも、
ない。」
エーレントの煌めく太陽のような目と、
その圧倒的な存在感が、
私を粉塵のように吹き飛ばしそうだ。
私は、剣を構えた。
しかし、剣が細かく震える。
苦しませず、一撃で終わらせてやりたいと思うのに、
神鼠としての、猫族への恐怖が止められない。
「ハァ?
だっせェな、おい!!!」
エーレントは嘲笑すると、
足元に散らばって燻る煙草や葉巻を、
私に向かって猛然と蹴り上げた。
私はそれを受け止め…
一本は自分でくわえ、
一本はエーレントの口に差し込んだ。
エーレントは、ゆっくり吸って、
痺れるほどに格好よく、煙を吐く。
「チビんなよ、テレシウス。」
その瞬間
私の剣は、エーレントの胸を貫いた
誇り高い猫族の王は、
目を見開いたまま、絶命した




