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貴様は ダチじゃない

それからも、俺たちは変わらない毎日を過ごした。



俺んちにいるときのテレシウスは、

相変わらず何もしないし、

素っ裸で部屋を歩くし、

女を連れ込むし、

俺もお相伴に与るし、

口を開けば他愛ない会話しかしない。

フラリと来て、フラリと去るところも変わらない。


俺が気を腐らせると、

耳輪やピアスを買って来るのも変わらない。


……少しだけ変わったところは、

俺が外出するとき、

テレシウスがマントをかぶって後ろの方からついてくること、

帰ってきたら、血の匂いをさせていることもあることだ。



――ああ、まだあった。


テレシウスが、悲しそうに葉巻を吹かしている時間が増えたことだ。


そんなとき、これまでは、

「何考えてんだ?」

と聞くこともあった。


でも、今はもう聞かない。


その代わり、黙って近くに寄って、俺も煙草を吸う。


煙が混ざり合って、窓の外に流れていく。


この男が背負っているものを、

俺が少しでも分かち合えるとすれば、

これしか方法を見いだせなかったのだ。


*********


その日は唐突にやって来た。


ある日、日暮れにふらりと部屋に戻ったテレシウスが言った。


「明日、ディモイゼに帰ることになった。」


「新しい葉巻、まだ揃ってねぇぞ?」


「――ここでの生活は終わりだ。」


俺は一瞬固まったが、すぐにテレシウスを睨みつけた。


「ハァ?

――どういう意味だ?」


「野暮用が終わったから、

ここにいる理由がない。」


テレシウスは、寝台に腰をかけて手を組んだが、

俺の方は見ない。


「ハァ?理由?アンタ舐めてんの……」


「煙草の方は、これからも融通を……」


「んなこと聞いてねェ!!!!!」


俺は、狭い部屋の天井まで跳躍すると、

テレシウスに飛び掛かった。


ヴッとうめいて、テレシウスは俺に組み敷かれる。


「貴様の身の安全も、もう確保して……」


「いい加減にしろ……!!!」


俺は襟首をつかんだ。


「――いい加減にしろよ!!!

そういう……そういう問題じゃねェだろ!!!!!」


「ハッ……貴様はいつも、『さっさと出て行け』と言っていただろうが……」


そう言いかけて、

テレシウスは真っすぐに俺を見た。


「――とは、言えんな。」


俺は目を逸らして、

喘ぐようにつぶやく。


「俺ら……ダチ……だろ?


ダチでも……俺らの立場じゃ……もう会えねェだろ……」


「――ハッ!」


思わず顔を上げると、テレシウスと視線がかち合った。


しかし、それはほんの一瞬で、テレシウスが先に目を逸らした。




「ダチじゃない。」




――全身の血がサァッと冷たくなった。


「ハ……ハァ?……何だって???

――もう一回言ってみろ!!!!!」


俺はブルブルと唇を震わせながら、

襟首が引きちぎれるほどテレシウスを揺さぶる。


が、テレシウスは、


「野蛮な猫族フェリスだな……

話を聞け。」


と言うと、ドサリと後ろに倒れ、

無防備に大の字になった。



「――ダチなんかじゃない、と言ったんだ。


エーレント、私は……」


********


しかし、急にテレシウスは唸り始めた。

身体が、うっすらと青い光を放ち始めている。


同時に…


俺の身体中に、テレシウスへの憎悪、

コイツをどうしても食べたいという欲求が強烈に走り回った。


テレシウスの額に浮き出てきた「١」のアザ。


――神鼠の刻印。


俺の意識は、怒涛のように押し寄せる憎悪と食欲の濁流に飲み込まれていく。


恐怖で凍り付いたテレシウスの顔。



(――これはテレシウス)


手が枕元の剣に伸びていく。


(止めろ!)


止まらない――


(止めろ!!)


止められない――



次の瞬間、俺は剣を引き抜き、

テレシウスに向かって振り下ろしていた。


吹き出した血を夢中で吸い取る。


頭を上げると、

あまりにも美味そうな、震えるブルーダイヤモンドの瞳が目に入った。


喜悦に溺れながら、俺はその瞳を指で抉えぐり出そうとした。



その瞬間、


「神通力 【牛歩】!」


という声と共に、

目の前が真っ暗になった。




これが


俺が


ダチとして


テレシウスを見た


最後の瞬間だった






――――――



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