表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/113

国一番の剣士

気が付いたときは、ガタガタ揺れる幌馬車に鎖付きで転がされていた。


テレシウスは生きているのか…?


なぜこんなことが起きたか、

俺には大体分かる。


80を超えた爺さん大王が、ちょうどあの時死んで、

テレシウスが神鼠(しんそ)を継承したのだ。


そして、そこにいた俺が獣化した…

こういうことなんだろう。


俺…猫族(フェリス)の王が神鼠を襲ったのだ。

ただでさえ、迫害されていた猫族が、今後どうなるのか。


それに、猫族(フェリス)が、神鼠を襲った場合、

例外なく処刑される。


俺が処刑された後、軌道に乗った煙草産業はどうなるのか。

新しい猫族(フェリス)の王のもとで存続できるのか。


テレシウスは、俺が処刑された後も、

この煙草産業に…猫族(フェリス)に、手を貸してくれるんだろうか…


――処刑…?


…ああ、そうか。

俺は、テレシウスに遠からず処刑されるのだ。


――貴様はダチじゃない。


不意に思い出されたテレシウスの言葉に、

心臓が切り裂かれた。


処刑されることより、

テレシウスの「ダチじゃない」宣告の方が余程こたえるとは…



飼われていたのは、

俺の方だったのかもしれない。


********


ふいに、俺が転がされている荷台の隅から低い声がした。


「目が覚めたかい?」



挿絵(By みてみん)



俺は顔を上げた。

黒い長髪の、ガタイのいい男が、荷台の隅に座って俺を見ている。


「…ロベルト…」


「お久しぶりだね。」


「テレシウスは…?」


「大怪我も大怪我。

普通の人なら死んでるよ。

でも、あの人は、国一番の剣士テレシウス…

すぐに治るさ。」


俺は安堵すると同時に、驚いた。


テレシウスが、国一番の剣士……

しかし一方で、「やはりな」とも思う。


「ところで、長い間、テレシウスがやっかいになったね…」


その言葉を聞いた瞬間、俺は、怒りを噴出させた。


「何が『やっかい』だ!!クソ野郎!!!」


ロベルトを睨みつける。


「なんで、猫族(フェリス)の俺んちに、鼠のテレシウスを寄越したんだよ!!!

ザケてんのかよ、テメェ、あ!?」


「こっちにも色々ある!」


意外にも、温厚なロベルトがキッとなって言い返した。


「それに、テレシウス…

いや、テレシウス様が、君のところに住みたいと強く希望したんだ。」


「その我がままの結果が……

これかよ……」


馬鹿馬鹿しくなった俺は、またゴロリと横たわった。


しばらく、幌馬車の車輪の振動だけが伝わってくる。


「ロベルト……


――アイツは、何しにきてたんだ?」


「……」


「話せよ。誠意を見せろ。」


ロベルトは深いため息をついて、

ゴトゴト揺れる荷台にもたれかかった。


「――コルデール王に内乱の動きがあって…

その調査と鎮圧のために、テレシウス様が送り込まれたんだよ。」


「……俺んちに泊まる必要ねェじゃん。」


「その内乱に、猫族の王(きみ)に反発する猫族(フェリス)が加担していたんだ。


神羊(しんよう)コルデールの王は、猫族(フェリス)を使って神鼠(しんそ)を襲う…

その一方で、神羊は、猫族(フェリス)が君を暗殺することに協力する…

そういう計画だよ。」


「…へェェ…」


俺は、「相当数の猫族(フェリス)に狙われている」とテレシウスに言われたことを思い出した。


「密命を受けたとき、テレシウス様は、

『拠点をエーレントという猫族(フェリス)の王の家にする』

と、自分から提案した。

そうすれば、猫族の王の命を守れる、とね。」


「別に、俺の護衛は必要ねェだろ…?」


「そう、そのとおり。

我々にしてみれば、内乱を鎮圧できれば、

猫族の王が死のうと生きようと、どうでもいいからね。」


「はっきり言うねェ。」


ロベルトは整った顔を少し綻ばせたが、

その視線は、膝に置いた自分の手に向けた。


「でも、テレシウス様は違った。

『ハッ!猫族(フェリス)の王を守ってやろう!

つまらん内乱は、そのついでだ。』ってね。」


俺は驚き、そして、呆れ返った。


「ハァ?何様なの?」


「テレシウスは、いつでも『テレシウス様』だよ。


…亡くなった前の大王は、拳闘を観覧するのが趣味だったから、

ディモイゼでは、ひっきりなしに大会や観覧試合があった。


奴隷や猛獣が殺し合うやつだよ。

人間が恐怖で叫んだり、逃げ回ったり、狂ったように暴れたり…


正直、私は、胸糞悪かった。


あるとき、大王のそばにいたテレシウス様が、

『ハッ!つまらんな!私が芸術にしてやろう!』とか言って、

急に剣一本持って、観覧席から飛び入り参加してね。」


「…」


(次話に続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ