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3.詐欺師の父

「それでは続きまして詐欺師の父親の登場です」

 オークショニアが台車に乗せられてきた男を紹介した。


「それでは早速入札を開始します。先ほどのように部位別の入札でも構いません。どなたかいらっしゃいますか?」


 オークショニアは客席に呼びかけたが先ほどよりも反応が鈍い。

 客席からも年老いた男はどうやっても使い道がない、みたいな声が聞こえてくる。


「こちらは被害者救済のためのチャリティーオークションです。何卒、皆様の協力が必要です。是非、どなたか入札をお願いします」

 オークショニアはもっともらしいことを言って観客の気を引こうと必死である。彼の努力も虚しく観客席からの反応はイマイチだ。


「肉屋様、いかがでしょうか?」


「うーん、歳いった男の肉は美味しくなくてなかなかお客さんも食べてくれないんだよなぁ、それに他の部位の処分も大変だし、少し考えさせてくれないか」


 肉屋の言葉に会場全体の空気が沈んだ感じになる。


「もし購入希望者がいらっしゃらなければ、こちらで廃棄処分してしまいます。どなたかいかがでしょう」


「それなら3万円で私が買おう。先ほどの老婆の半値だ。それで先ほど部位を購入してくれた人に部位の処分の手伝いを検討してもらいたい」


 先ほど脳を落札した知識人からの言葉だ。

 この言葉に先ほど部位を購入した他の客たちも、それなら協力してもいい、というような声をあげてる。


「他に入札者はいませんか? それなら3万円でハンマー……」


 後ろの扉が開き一人の男が入ってきた。


「遅れてすまない。ちょっと待ってくれ。入札希望だ」


「技術屋様、珍しいですね。滅多にこちらのオークションにはいらっしゃらないですのに」


「まぁ、チャリティーオークションには興味はないからな。だが、その男には興味がある。今、いくらだ? 3という数字は聞こえたが3000万くらいか?」


 技術屋の言葉に会場は少し前の空気とは違うざわめきが起こった。


「いえ、まだそんな金額ではございません」


「なら300万か。それならここの参加している連中の審美眼も大したことないな」


「皆さま、得意なジャンルがございますので、他のお客様を貶めるような発言は謹んでいただけますと助かります」


「まさか30万とか?」


「いえ、3万円です」


 オークショニアの言葉に技術屋は大きく笑った。


「モノを見る目も無ければチャリティーの精神も無いのか」


 技術屋の挑発的な発言に会場が少し殺気に満ちてきた。人間、非人間に関わらずここは異能の集まりだ。殺し合いが始まってもおかしくない。オークションスタッフの黒子達も万が一の事態に備えているようだ。


「3000万だと予算を越えてしまってるからどうしようかと思ったが、3万ならどうってことない。5万だ」


「5万円、5万円。どなたかこれ以上の金額の方はいませんか?」


「技術屋さんがわざわざ来て入札するということは、その男にはこの商品情報には載っていない何があるのですね?」

 自分の提案を邪魔されて少し怒っている知識人が商品情報が掲載されている紙をヒラヒラさせながら言った。


「さあな、商品について参加前により詳しく調べるのはオークションの基本じゃないのか?」


「言いますね。私たちは知識を食べ力にする種族です。内容は分かりませんがあなたがそこまで拘るならさぞ素晴らしいモノなのでしょう。他の部位の処分の手間など惜しくないくらいに。100万で入札します」


 技術屋の登場で冷めていた会場が熱を帯びてきた。


「1500万」


 技術屋が知識人の入札金額に対してさらにコールした。


「ちまちまやるのは苦手なんだ。それとも出品するあんた達もこんな金額になるとは予想もしていなかったか? それはリサーチ不足の職務怠慢じゃないかね」


「そう言われても仕方ないかもしれませんね。1500万! 他にいらっしゃいませんか?」


「内容は気になりますが、中身が分からないものにその金額は出せません」

 知識人は悔しそうだ。


「まぁ、脳は食べさせられないが終わったら少しくらい知識の共有はしてやるから今回は譲ってくれ、な?」


「仕方ないですね」


 技術屋と知識人で話はついたようだ。


「他にいらっしゃらないようですね、それではハンマー……」


「3000万」


 会場に先ほどを越える騒めきが起きた。


「人形師様から3000万の入札がございました」


「技術屋は入ってきた時に3000万だと予算を越えているから厳しい、みたいなことを言っておったな。それなら近い金額の価値はあるということだろう。内容は分からなくても価値があるものはどうとでも利用することができるからな」


「クソババアが……価値があっても利用方法が分からなければ無価値と同じなんだぞ」


「こんな少女の見た目をしてる相手にクソババアはないではないか? それにお主は入ってきた時にこうも言ってたいたぞ、これはチャリティーオークションだ、と。私もその言葉を聞いて慈善活動がしたくなったのじゃ」

 人形師は悪戯に笑みを浮かべ舌を出した。


「やっぱり性悪のクソババアじゃねぇか。1000年以上生きていたら見た目がどうであれクソババアだろうが」


「それでどうするのだ? どこかと相談するなら少し待ってやってもいいぞ」


「クソ! ちょっと待ってろ」


 技術屋はそう言ってスマートファン片手に会場の外へ出て行った。

 どこかに相談するみたいだ。

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