2.設定金額
「残りは髪の毛と肉、それに骨です。いかがでしょうか?」
オークショニアが続ける。
商品の台に乗っている詐欺師の母は猿轡をされていて元々声を発することはできなかったのだが、既に気絶していて今何が起きているか把握することもできていない。
「どうです、肉屋様。安く仕入れると思って」
「ばあさんの肉だろ。固くてあまり客も喜ばないんだよなぁ」
「そこを何とかいかがでしょうか?」
オークショニアのその言葉に肉屋と呼ばれたモノは鞄から電卓を出して何やら計算を始めた。
「うーん、それなら1万5千円で肉に入札するよ。まぁ、先に血抜きもしてもらえるみたいだし、これくらいなら利益が出るだろうから」
「肉に入札がありました。他にいらっしゃいませんか? もしいらっしゃらないようでしたらこのまま落札にさせていただきますよ!」
オークショニアのその言葉に反応するモノはいなかった。
「ハンマープライス! もし残りの部位で入札希望者がいらっしゃらないようでしたら残りは廃棄させていただきますがいかがでしょうか?」
「骨。1000円」
「家具屋様。骨に入札ありがとうございます。他にいらっしゃいませんか?」
「新品を作るには脆そうな骨でも補修や補強には使えるだろうから」
「骨を引き取ってもらえるなら、うちも処理が助かるよ」
家具屋の言葉に肉屋はそう反応した。
「他にいらっしゃらないようなので、骨の方も締めさせていただきます。ハンマープライス!」
オークショニアの小槌が振り下ろされた。
「残りは髪の毛ですが、いかがでしょうか?」
「私が入札しよう。500円」
ステージから正面の最前列にいる日本人形のような姿の女性が手を挙げた。
「人形師様。いつもありがとうございます。それではこちらも他に希望者がいらっしゃらないようでしたらこのまま締めさせていただきます」
オークショニアはそう言って少し間を取ったが反応するモノは現れなかった。
「ハンマープライス! 以上で一品目のオークションを終了とさせていただきます」
オークショニアがそう言うと黒子が現れて詐欺師の母が乗せられた台座を裏へ運んでいった。
「ただいまの商品は合計で6万3500円でした。まだまだ目標金額には全然足りませんね。ここで感想を聞いてみましょう」
オークショニアの言葉にまたどこからか黒子が現れて詐欺師の猿轡を外した。
「ふざけるな! 俺の家族をこんな風に扱いやがって」
「でも元を辿れば詐欺をしたあなたが悪いのですよ。被害者への返済のために私どもが設定している金額にはまだまだ程遠くて。家族全員で身体を張ってお金になっていただかないと」
「なんだよ、設定金額って?」
「あなたが今まで詐欺でお金を奪ってきた方やその家族への返済金額ですよ。それに私どもの運営への手数料を合わせて今回は3億で設定させていただきました。娘さん以外は大した金額にならないのは分かっていたので、あなた達の資産は不動産から車から他のコレクションまで全て先に処分させていただきました。それでもまだ1億2千万円不足してますので、残りは身体で払っていただくことになりました。6万円程度では足しになりませんし、もし先に娘さんを差し出せるようでしたら、先ほどのあなたの母親のオークションはこちらの不手際ということで参加者の皆様には謝罪をして無効にもできますがいかがしますか?」
「なんだよ、それ! 本当ふざけてるんじゃねぇぞ! 俺の資産全部処分したとかどういうことだ! 返せよ!」
「いや、詐欺で先に奪ったのはあなたなのですから返すのはあなたの方ではないでしょうか?」
「うるせぇ、騙される方が悪いんだ! 早く解放しろ」
「話し合いになりません」
オークショニアが話を打ち切り舞台の方へ向き直った。
「皆様、お待たせして申し訳ございませんでした。それでは次の商品に移らせていただきます。お次の商品は被害者の父になります」
詐欺師の口には既に猿轡がされていた。何か必死に文句を言うために叫んでいるようだが、もう声にはなっていない。
詐欺師の父が乗せられた台車がステージ中央へ運ばれてきた。




