1.詐欺師の母
「それではこれからオークションを開始します」
ここは法律で裁かれない、もしくは裁かれたが弁済できない詐欺師が送られてくる闇のオークション。
客は人間だけでなく異形の者たちも多数いる。
「本日の商品はこちらです」
オークショニアが高らかに宣言すると台に載せられた人間たちが運ばれてきた。
「こちらは詐欺師とその家族です!」
オークションには紹介に歓声とも罵声とも判断がつき難い声が多数あがり会場が揺れた。
「こちらは認知症の老人をターゲットにして大切に貯めていた貯金を根こそぎ奪っていった極悪人です。その方はますます認知が進行してしまいました。警察も詐欺師を捕まえられずにいて被害者のお孫さんは途方にくれていたところ、縁があり私どもに依頼があり、この者たちを捕えることができました」
今度は観客たちから拍手が巻き起こる。
「被害者の方からお金は全額戻ってこなくてもいい、とにかく罰を与えて欲しい、との要望がありました。しかし、詐欺師本人や部下を捕まえたところで大した苦痛にはなりません。そこで今回は家族をセットにして捕まえてこのオークションでお金にすることになったのです! 是非、参加者の皆様にはチャリティーだと思って積極的な参加をお願いします!」
オークショニアがそう言うと競売品にされている男の猿轡が外された。
「おい、ふざけるな! ここはどこはなんだ? だいたい俺が詐欺をした証拠はあるのか? 俺も家族も解放しろ、くそ野郎!」
「口が悪いのは自身の商品価値を下げますよ。それに私たちは警察とは違いこの世とは別の捜査方法を持っていてあなたが詐欺グループの首謀者ということは確認できています。ご参加の皆様はその点ご安心ください!」
オークショニアがそう宣言すると会場が再び湧き上がる。
「今回、この詐欺師とその両親、妻と娘の5人が競売対象になります。目玉は何といっても小学5年生の娘になります。これは最後に、といいたいところですがこの男に精神的な苦痛を与えたいので4番目になります。この男は最後になりますが、皆様どうか飽きずに最後までお付き合いください」
オークショニアの冗談混じりの言葉に会場から笑いが起こった。
「何なんだ、ここは……」
男は声をあげるのも諦めたようだ。男に再び猿轡が付けられた。他の家族にも猿轡が付けられているが目は開いている。この絶望的な状況に涙している。
「それではお待たせしました。まずはこんな男を産み育てた両親から始めていきたいと思います。まずは詐欺師のお母様から! バブル期の最後の恩恵を受けてきた世代です。結婚後は専業主婦になり趣味に打ち込んできた自由人。しかし、今は体力も衰え特に目玉になる箇所もありません。このオークションは牛の一頭買いのような形ではなく部位ごとの希望金額も受付けていますので、是非ここだけでも安く買いたいという方がいましたら手をあげてください!」
オークショニアがそう言うと詐欺師の母親がステージの真ん中に運ばれてきた。
「それではどうぞ!」
オークショニアがそう言うが誰も手を挙げない。
「うーん、やっぱり使い道もないですし食べても美味しくないですかねぇ……どうですか、吸血鬼様。血だけでも!」
「うーむ、血もあまり美味しくなさそうなのだよ……チャリティーだししょうがない、入札するとする。ちなみに人間の世界でのトマトジュースの相場はいくらくらいなのか?」
「そうですねぇ……ちょっと待ってください」
オークショニアはそう言うとスマートフォンを出して何やら調べ出した。
「通販サイトだと大きめのペットボトルを箱買いして4000円くらいですかねぇ」
「じゃあ、4000円で」
「はい、他にいませんか、この老婆の血、4000円以上の方いませんかぁ? はい、いないようなのでハンマープライス! 落札おめでとうございます」
オークショニアのハンマープライスで会場から拍手が巻き起こる。
「それでは血は売れてしまいましたが他の部位はどうでしょう?」
「じゃあ、脳をいただこうかな。私たちは脳を食べることでその者の知識を得ることができるから書籍の代わりなんだよ。老人だし多少は読み応えあるだろう。3万円で」
「それなら私は眼球に入札させてもらうよ。眼科として目は何かと使えるから」
「眼科さんがそう言うなら私は歯に入札するよ。でも、老人だからあまり役に立たなさそうだけどチャリティーだし」
チャリティーの言葉に会場から笑い声がもれる。
「知識人様、眼科様、歯科医様、入札ありがとうございます。眼科様、歯科医様、入札金額はいかほどで?」
「1万円」
「歯はたいして価値がないから3000円で」
「脳と歯と目、他に入札希望者はいませんか? いないようでしたらハンマープライス!」
またしてもオークショニアのハンマーが打ち下ろされた。




