決起、オンステージ-39話
-真昼にヨル、酔っ払いの兄と共に空を飛んだ
比喩表現ではなく真実として羽ばたいた
空海大学敷地内いつもは、こはると
駄弁っているベンチ辺りに着地、
今は兄に怒りを放つ
「あのさ!学校で!酔っ払ってるのも!!
さっきのことも!本当に怖い!
私、高所恐怖症なの知ってるよね!!!
何?いい歳して実家暮らしの
バーテンダーって!瓶でお酒飲んで妹の
文化祭荒らすとか!狂ってるの?!
シスコンなの?!バカなの!」
「こわーい!ねぇヨルっち〜俺
なんか悪いことしたかにゃあ?」
..こいつ、ヨルが側から見えない事を出汁にして言い逃れしようとしている。
周りは数多くの人間に溢れ今現在、格好の的
..兄と私は顔立ちはあまり似てはいないから
まるで恋仲の痴話喧嘩
ヨルは黒く、細い眉毛が上に向き
目が丸くなりあたふたとしている
..私は、今喉が熱く、目からは水が溢れそうで
厚底のブーツを履いた両の足がガクガク
している..空を飛んだ事が本当に怖かったし
今、泣きそうな事を認めたくない..!
涙じゃない!今..!
目から出そうなのは汁とか水だ..!
「おい、女泣かせたらあかんやろ」
..!低くぶっきらぼうな声ですぐに分かった
-森内海斗
「あっ..!あっ!!」
安心感を覚えて私はその場で泣き崩れた
「うわぁあああああ!!怖かったぁ!」
今度は森君があたふたとしだす
「岩永さん、泣かんでもええやろ
出番だから呼んだだけやで」
—「あっ!かわい子ちゃん!」
この声で私は現実に戻る、石北の変な声だ。
「ハイティー、今は空気読んであげようや
彼氏?と喧嘩したみたいで本番
大丈夫やろうか」
「モーリーそれは俺が守ってあげるしかないね.. あっ!お兄様じゃん!許嫁の兄がいる!義理のお兄ちゃん!!」
..私は真っ赤なほっぺ、真っ赤な目玉で
石北を睨んだ、テキトー言うな..!
「おおっ、なんやお兄ちゃんやったんか
そら喧嘩の一つや二つくらいするわな
俺も妹2人おるからよー分かるわ」
..ムカつくけど同調した方が丸く収まる
「初めまして、岩永翔太です
ゆりの兄です、かいちゃん、久しぶり
モーリー君?いやぁ本当ごめんね
ラップ?妹するみたいだから
ちょっとお酒入れたげた方が
いいかなと思って 俺の好きな
パンクロッカーがさLIVE前に
お酒飲むからさ、一口飲んだら
コイツ酔っ払って」
は?は??は???
「はぁ?!私飲んでないっ..!てか!
お前!!酔っ払いがぁ!ごらぁ!!」
「岩永家バリおもろい!!お兄ちゃん
未成年、酒飲ましたら捕まるで
だいぶできあがってしもうとるわ」
..くそっ!嘘なのに側からの辻褄を
合わせてきた!! 福沢とか石北とかと
ずっと一緒にいるから兄も詐欺師になった!
まだ両の足がガクガク..本当に不安定だ。
「ゆりちゃん、俺が守っちゃるけん」
私の腰に手を添え、石北が囁いた
胸の真ん中がドクリと..鳴って「あっ..」
私は黙ってしまった。
「ハイティーかっけぇわ岩永さん
バンドサークルのパフォーマンスも
かっこええで ヒート君も照明の演出
凝ってはるから出番5個前やけど
観とこうや」
「ゆりりーん!大丈夫?」
あっ..サークルメンバー霧島凛と川崎花子
衣装に着替えて待っていた。
「ゆり殿ご無事ですか?緊張してないかい?」
..浮ついてられないな、
「ごめん、もう大丈夫、二人は本番いけそう?」
「ラーメン食べ過ぎて私ちょっと吐きそう!」
..一喜一憂のジェットコースター
感情に振り回されるのがバカらしくなってきた
呼吸を整えよう
-その時
「大丈夫..?」ヨルが私の頭を撫でた
ヨルが着ているお揃いのロングコート、
高く空を飛んだのが恐ろしくて
着地した後、私はフードをずっと被っていた
真っ黒な頭巾と真っ黒な服に白い靴 顔だけ
は泣化粧で赤くなり心臓の高まりに
焦りが募る..
「え!ゆりりん?!消えた..!」
ハッと冷や汗が出る..!
ヨルが触れば物や人は見えなくなる、
バッ..!と
バツが悪そうに頭からヨルが手を離す
兄が、空の瓶ビールをコトンと地面に置いた
「緊張でみんな疲れてるんじゃない?」
..確信した、兄は「酔っ払っていない」
「酔っ払った」 フリを「楽しんでいる」
シラフでも今日と同じ行動を取れるであろう。
私はコートのポケットに手を突っ込んで
入れていた、眼鏡をかける
「お兄ちゃん、瓶ビール持ってると
DV男
みたいだから 捨ててきて」
兄は一呼吸あけて「わかる」と、
空き瓶を持ってゴミ箱を探し始めた
「俺は口説きにいくわ」
片手に瓶を持ち、腕にはめたヘアゴム
を襟足に、くくった「サクラちゃんを」
..いや、こいつは酔っ払っている。
「あっ翔太さん..!」衣装に着替えたこはるが
アパレル販売員サクラさんと歩いていた
「翔太くーん..変なことしてないよねー..」
「いやいや、妹に社会の厳しさを教えていた
とこだよっ!あっー!サーちゃん もう
服買ったの〜」
こはるとサクラさんは物販でTシャツを
買っていたようだ。
「はるちゃんー!さっきーは!」
「咲、ずっとイヤホンつけて歌詞確認してる..
一番咲が練習してるのに」
「ゆり殿、お喉は如何?」
「大丈夫、」
..心配をかけさせたくない手前、少し痩せ我慢をしている風邪も相まって、実は少し熱っぽい
「いこっか」こはるは、
指を頭の上で絡ませ伸びをした
いつのまにか、ベンチ付近には人が溢れて
バツが悪そうに ヨルは空へ飛んでいった
—
今日はデニム素材の青いリュックをからってる
いつもヨルのズボンは褪せてたり
穴が空いてたり..一貫して
細くて長くて綺麗な足だ
真昼の空へ羽ばたくヨル
からった藍色の鞄だけが空の色と同調して
私とお揃いのロングコート 背中に翼
翼の為に破いた穴が二つあり
..彼は丁寧に服を破いたんだろうな
——
体育館へ-私達の出番は16:50 森内君が言ってた
通り バンドサークルのレベル..
一貫してみんなレベルが高かった空海大学は
音楽の専門学校だったっけ?って
思うほど今まで観てきた中高の文化祭の
発表よりレベルが高かったが
何にも不安はない。
-忖度なしで歌はこはるが一番上手だから
学内の人間、皆、口を揃えるはずだ。
舞台袖サークルの5人 今日は
決め込んでいる。岩永家の衣装部屋
川崎花子と霧島凛は兄から服を譲り受けた。
花ちゃんはStussy
と胸元に文字が描かれた、大きな青のパーカー
青いパーカーと合わせて青いペイズリー柄の
バンダナを三つ編みに編んだ黒髪の中央に
つけている
-病服RecordsZEN
の朱色にまだらに色落ちてはつぎはぎと
ほつれだらけのダブダブズボンに
Timberland
..買ったはいい物私には着る機会が来なかった
2万5000円で買ったズボン花子ちゃんの衣装になって合わせてブーツも貸してあげた。
小さな身体の花子、いい意味で着せられていて
とても似合っている、一番ラッパーみたいだ。
「ゆりりん!ズボンありがとね!洗って
返すから!」
「色移るかもだから、花子別々に
洗濯しろよー」
咲がツッコむ、咲は 私の母、薫からテーラードジャケットを譲り受けた
赤いジャケット、襟だけ黒くて丸くて
ハートの形になっている
Viviane Westwood のジャケット 黒いミニスカートに
レザーのロングブーツ
金髪だったロングヘアー私の母を真似して
黒髪の中分けボブカットへと
ヘアースタイルを変えた咲と母の薫は
..たまたま同じスーパーで働いていて
岩永家、衣装部屋顔を合わせるや
各々がビックリとしていたのだ
「薫ちゃん、スタイルいいなぁダイエット
もっとしなきゃ」
..咲が昔のお母さんのように見える
「凛ちゃん、翔太さんのジャケット渋いね
かっこいい写真、お願い」
「御意、こはる殿サークル誘って
頂き感無量です」
霧島凛はカメラマンに徹する
カーキ色のコーチジャケットに
文化祭オリジナルロングスリーブTシャツ
FLOWER CARNIVAL NEVER MEMORY
と書かれた白いTシャツ
石北海斗、山中淳 共同デザインに
ズボンはいつもの薄く青いデニム
「5人なんだか、赤 青 緑 白 黒
戦隊モノみたいじゃんね!」
笑うと目が線になる、こはる
こはるはもふもふ白いシャギー素材の
うさぎの耳がついたジップパーカー
ズボンも白く 靴とTシャツだけが黒い
私は黒いフードのコートに黒のカッターシャツ
真珠のネックレスに
Dr.Martin厚底ブーツだけが
白い—
「私とこはるだけオセロみたい」
旧友二人の、高値の衣服はおろしたて
—オセロのような分断は何一つ..
そんなことを思うや
「最後になります、新設サークル合同
パフォーマンス HipHopガールズ
の発表です」
マイクを伝い、綺麗な白木百合の声が
体育館を響かせた
「ゆり、任せたよ」「うっす」
—密集した学内の人間、厚手のコートが
身体の熱を高める..
ましてや風邪ときたものだ、体感
身体は38°を超えていそうだ。
一番手は川崎花子のBAD HOP
「Kawasaki Drift 」
私はターンテーブルに赴き
こはるのMacBookから再生ボタンを押した
刺すように皆がステージの私を見る
—-ドゥンドゥン
音楽がなり、心臓の音が大きくなる
「おらぁ!!!!」川崎花子
マイクを持ってオンステージ..!
—バンっ!!!!!!
「えっ..」
履き慣れていないズボンと靴にて
少女は盛大にすっ転んだ
マイクは地面にぶつかって
ゴッ!!!!!とデカい音を響かせて
音源は本家の歌唱が始まった—




