一章.1川に花
ヨルは概念。世界を観測する。
アサを知りたい。 彼女は。
ちょっとめんどくさい。
全てがうまくいっていた。それがもどかしかった。
なろうと思えばっ、
私は、インフルエンサー!だとか..
アイドルにもなれっ..るぅっ..と!か
考えるよりも
目の前の敵が、結構強い。
時計の針は夜中の3時を指していて外は真っ暗
私の部屋は白基調の部屋、蛍光灯の光の白さが
より際立つ。黒と白の世界が
外と内で分断されている。
自然的な光景ではないが
テクノロジーが改革された現在。
外の夜中が黒くて、
暖房が効いた部屋は白い。
オセロのような分断は
何一つファンタジーではない
現実によくある光景だ。
【ドゥルアアアアア!!!!!!!!!
※生体反応異常 !備えてください!】
ダークナイトファンタジーの音が響く。
「あーいつものパターンね」
コントローラーを最小限の動きで捌く
そう。全てがうまくいっていた。
地元は地方で都心から少し外れた
少し田舎。コンビニもスーパーも
ゲーセンも割とある。
私は地元が好きだ。
安全な日本に産まれた、兄妹。
お兄ちゃんは歳が3歳上。
母はスーパーのパートをしている。
父は工場勤務だ。結構稼ぐ。
専門分野の工業学校に出ていなければ
採用される事さえも
難しい工場で管理職になったという。
小学3年生の時だったろうか
「お父さんの職業」
という題材の作文を書かなきゃいけなかった。
私は父に「なんで工場で働いてるの?」と
父に尋ねた。父は即答だった。
「実家から近かったから」
父はこう語り出す。
「お金はさ、やりたくないことを
誰かが代わりにやる事でお給料が発生するんだ
どうせ嫌な事をやるなら、仕事場までに行く
【時間を失うのは勿体無いだろ?】
小学生の私は特にリアクションを取る事なく
むしろ感心して耳を傾ける。
「小学校3年のゆりはここからの話は少し退屈かもしれないけど、例えば時給1000円だとするだろ?
もし仮に移動で往復1時間かかるのであれば
一日に1000円余計な仕事をしてることになるんだ。
週5日働くとして、週に5000円。
月になると2万円。人生の価値が飛ぶ。
しかもガソリン代も月に一万と
かかるんだどうせ、仕事なんて全部嫌になる
地味な仕事だとしても
僕は月に3万円分損しない選択
をとりたいんだよ。
二ヶ月で6万。一年で36万
10年で360万なら。歩く方が楽だ。あ。
父さんもう、
時給だと2860円くらいだから
一年だとぉ、、」
私の合理主義が形成されたのは
間違いなくこの瞬間だった。
その時、今だったら出すことはないであろう
ピュアな声で
「お父さん!頭がいい〜!」
とぱちぱちと手のひらを叩いた。
その後の作文発表。父が言ったことを
そのまま作文に移す。
先生に誇らしげに作文を渡す。
発表の日授業参観。父は仕事。
母が観にくる。うまくいく。
はずだった。
土曜日。3時間目。その日最後の授業での発表。
「父はこの仕事にやりがいがあるから」
「誰かの笑顔のために」
…..キラキラとした内容に
小学3年生ながらに気まずくなった。
書き直すのも面倒だった。
少し早口で感情を込めず発表した。
「チチハ、イエカラチカイシゴトをエラビました。」
——-
時給〜ガソリン代のくだりは
聞き取れないくらい早い速さで発表
先生は一度、原稿に目を通してるので察してくれた。
「あの工場に勤めてる、ゆりちゃんのパパすごいね次は◯◯くん!と促す」
私の発表は早口で無感情。
チャイムがなり
先生は職員室へ休み時間から帰りの支度の時間。
母は娘の発表の内容は愚か
クラスメイト全員の発表何を言っていたか
すぐに忘れてしまっていた。
「ゆり!滑舌いいわね!てかもうウチ、かえる!」
有無を言わさず母がいなくなる。
寂しいなんてない。
めちゃめちゃ安心した。
ここはあんまり心配してなかった。
まぁでも。
嫌な予感は当たるものだ、発表の時から
声にならない嘲笑の気配を私は汲んでいた。
授業参観の次の登校 先生が来る前の教室。
甲高い声で男の子達が近づく。
「チチガッ、!コウジョウニツトメテイルノワ!」
「Yo!Yo!ヒップホップ〜!ラッパーゆりー!」
父が工場勤務なのと私の早口が重なり
私はラッパーだのロボットだのと揶揄される。
男子も女子も嘲笑。
クラスメイトの一番のお調子者の男の清水が
エスカレートして私に指をさした。
鼻水を啜りながら
「ゆりっでぇ、?Siri?? 」
といじりが始まる。クラスが爆笑に包まれる。
「ヨクワカリマセン」と返す
またも爆笑
「ゆりおもしれぇおんなぁ!!!!」
小3ながらムキにならず賢かった。
なぜなら返しが単調だから。
すぐ飽きてもらえる。
2日で「Siriゆりブーム」は終わった。
ロボット ラッパー Siriのいじりも
「ヨクワカリマセン」で返せる。
悪い気もしない上に最適解の返し。
しまいには女の子も難しい漢字や
英単語を見せて、ゆりちゃんこれ、わかる〜?
予定調和の「ヨクワカリマセン」
コテコテでだんだんと飽きてくる。
お互いに。
ガキ大将の太っちょが
終止符を打ってくれた。
「ゆりちゃん!セックスってしってる!?」
と私に言った。先生もいた。戦慄が走る。
私は冷静に返す「ヨクワカリマセン」
「オモンナッ!(爆笑)」
無敵の男こてつくんは一人
欠けた前歯を剥き出しに廊下を駆ける。
彼が1番いじめの対象から程遠いであろう。
彼の父親は医者だった。
ガキ大将。訂正しよう野良の大将。
スポーツマンシップガキ副大将の
坂田は采配が上手い。
「デュクシ!」田上をつつく
「おいて!なんやバカタ!笑」
「昼休みもったいねぇやろ!行くぞアホうえ!」
男子の昼休みはサッカーに獲物が変わった。
私は顔が可愛いからいじめづらかったと思う。
岩永ゆり18歳。
岩永家は見た目に関しては悪くない。
何より母と兄のスタイルのがいい。
遺伝子としては、かなり優秀なのだろうと
鼻が高い。うん。二つの意味で。
父の健は背丈こそ低いものの、パッチリとした目に少しだけ厚い唇。
男性としてキャーキャー
言われるイメージが持てないが
父に顔が似たおかげか
私は顔が可愛い。
母の薫はキレ長の目にシャープな輪郭。
元々ヤンキーなのかギャルなのか
分別が難しい高校生だったらしい。
兄は母に似た部分が多い。
母の薫は中学ではバスケ部。
チームメイトも当時の母も
「薫はバスケが下手なのかよく分からなかった」
と。とにかく動く。とにかくボールを獲る。シュートをよく外すのにも関わらず、
シュートを打った数は
全試合で誰よりも多かったと聞いた。
….パスもこないのに。
地域の大会で薫のチームはベスト4まで登り詰めた。
母のせいで負けたのか
母のおかげでここまでいけたのか
未だに分からないと
家族でのご飯の時によく話ていた。
正直何回も聞きすぎて飽きていた。
涙で溢れた最後の試合、母は
同調して嘘泣きをしたらしい。
勝ち負けとかどうでもよくて
自分のシュートが
「入るか」「入らないか」にしか
興味がなった薫。
この話も18回くらい聞いた。
服とコスメが欲しかったからか
高校生の頃はコンビニでバイト。
高校生ながら月に6万円を稼ぎ
先生と喧嘩した日には
平気で昼にシフトを入れていた。
あろう事か。
嫌いな先生の授業やサボるために
遅刻という体で
コンビニに朝6時〜朝10時
というシフトを出していたという。
当時はいろんな事のコンプライアンスが緩かった。
母は「あの時間帯の廃棄あたり多いんだよね!
あと禿げたおっさんばっかりやつれた顔で
くるからおもろかったわ!」
まさにギャルとヤンキーの分別がつかない
JK ここにあり。この話は22回くらい聞いた。
性に少しだけ奔放になった時期も
あったらしい。
聞きたくもない夜の話を
思春期を越える前から、母は告げていた。
セックスは正直小3から、
「よくわかっていた。」
紛う事なき愚かな母は
人間においては頭が良かった。
コンビニのバイト先で出会う。
ヤンキーでお洒落な大学生に惹かれた高校生。
チャラくてさらっとしたファッションセンス
ふかして「いない」
たばこに轢かれたという。
銘柄はセブンスター。
当時高校一年の6月。
自分から告白して交際を始めた。
10ヶ月くらい彼と付き合ってはみたものの
….
親の学費でイキってると思うと急に冷めたらしい。
薫は全日制なのにバイトもお洒落も友達との
時間も全力。
偏差値の低い学校といえど
単位は落としてはいない。
一方、大学生の彼氏は遊んでばかりで
留年。肝心な所で賢い薫は
何も言わずに、「別れよう」と
一言 手紙を書いて 連絡先を消したらしい。
粘着されるのも嫌だったし。
地元の先輩の話もなんだかんだ怖かったから
高校生ながら金髪に染めていたロングヘアーを
黒髪のボブカットにした。
肝心な事を見抜けない大学生の元カレは
チャラついた格好で彼女を探したが
見つけられず、校門の前で挙動不審になる。
黒髪ボブカットの薫は
ニコニコとした顔で
中指を彼の前で立てて
家へと帰った。
元彼のチャラ男は
タイプではない髪型の
元カノには目もくれず。
半べそかきながら追い出されていたと。
怖い先輩も別に乗り込まなかったらしい。
その後は薫は真面目な男に惹かれるようになった。
高校卒業後、薫はアパレルに勤務するのだが
同じモールの掃除のアルバイトとして働く
当時専門学生の私の父となる。
岩永健と出会ったと聞いた。
パワフルな母は未に落ち着きがない所もあるけれど
とにかく食べても太らない。
歳を重ね、
スマートなファッションも
カジュアルな装いも似合う
綺麗な女性。全然老けない。
父のはっきりとした顔立ちと
母の天然のモデル体型
割といい感じに受け継がせてもらった。
背だけは私は
そんなには伸びなかった。
けど
【目立たないから楽だ】
155cmくらいかな。中1で成長が止まった。
案の定自分の容姿に
小4くらいまでは調子に乗っていた
カラオケに行けばフツーに歌って
92点。上手いと絶賛。
友達から親戚まで
「ゆりちゃんは将来アイドルだな!」
「ドラマに出てた〇〇に似てる」
みんなゆりに大絶賛最初ははしゃいだ。
「まあねっ」と。返すようになった。
嫌味にならない言い方と美貌がそこにはあった。
【アイドルに少しの間だけなりたかった】
だが、キャーキャー言われるのは
しんどいだろうなと思う事が増えた。
アイドルになりたい!という思いが
沸々と消えていった。
地獄耳の私は、小2くらいで
妬みから私への陰口に気づいていた。
割と私は告白される。付き合ってもいいけれど。
という基準の男の子も一定数はいた。
約1名、女の子からも告白された。
ガールズトークもゴシップも
知りたくないけど全部知ってる。
アイドルはこれより大変なのが目に見えた。
告白されても、女子には派閥がある。
ボスや中心の女子に目をつけられないように
「友達じゃだめかな」と誤魔化す。
告ったイケメンは面倒な女が狙ってる。
角が立たないやり方、告白された時
にびっくりする技を身につけた。
特に顔がいい子に告られた時は
パタパタとおどろいてみせた。
少しだけの過呼吸はわざと感がない。
顔を赤るためにふとももあたりをよく
つねったりしてたな。
「気持ちは嬉しい、でも尊敬してるけど
友達として遊べなくなるのが私は辛い。」
感じのいい言葉を述べる。
一回しか昼休みで遊んだ事がない男の子に。
アイドルよりも私は女優が向いている。
そういう自負が芽生える。
「ぼぼっぼぼ。ほくとつつきあってくれぇませんか!」
小学校6学年の頃の告白。
放課後。夕暮れ
場所は、音楽教室-2
この日を境に
誰からも告白されていない。
運動音痴の冴えない石田くんの告白。
石田君と長く退屈な交際を私は選んだ。
彼を選んだ理由は、
告白された時彼の噂話をする人が
一人もいなかったからだ。
付き合ってる事は割と知られたけど
噂にならなかった。
私は中身を見る素敵な女の子
という印象。
いや。この頃には
【オモンナイ真面目カップル】の
レッテルがベタリと張り付いて
私の陰口はピタリとやんだ。
話題にも出ない、羨まれもしない
埃のような存在。
小学6年になる頃には
私より可愛い子がゴロゴロといた。
私は地味を選んだ。
髪型、休日のメイクも、私服も
ダサすぎて浮く事もなければ
派手で浮く事もないで済ませている。
高校からは異性絡みが面倒くさいから
女子校を選んだ。
そして高2の夏 冴えない男の子だった石田くんが
私をフった。
意外とモテるようになったからだ。
地獄耳どころかフツーに
手をつないでるとこを二つのまなこで見た。
違う子にいったらしい。
石田君の次の恋人は
おっぱいが少し大きかった。
その頃の彼の眉毛はとても綺麗だった。
彼から告げた理由は大学受験を頑張りたい。
地獄耳の私は彼へこう伝える。
「尊敬してる、また別の道で頑張ろう」
【ヴァア嗚呼ああああ!!ギュリュルルル】
欲求不満ではなく、私は
やけくそになりたい願望が少しだけあった。
とても現実的で白い景色が広がる部屋
地味な私の部屋は私が見ても
まぁまぁ汚い
非現実光景テレビのモニター。
JK最後の冬。
コントローラーをガチャっと押してぼふっと布団に置く。視線をテレビから切り替えた。
モンスターは倒した。
決定打のコマンドは
【←✖️✖️ 〇〇〇▲】
ぐにゃりと体を横に、寝そべる。
身体に悪いことばかり、
夜中にずっとゲーム
また目線を変える
モンスターエナジーが机に置いてある。
あぐらをかいていた私は
首を真上に向けて口元に缶を当て
ぽんぽんと雫を貪る。
【ズヴウゥバン!!〜♫⭐︎⭐︎♫♫♫〜〜〜
ミッションコンプリート!お疲れ様です】
ダークナイトファンタジー
は大袈裟だ。
何回も敵を倒した。私はもう飽きていた。
このゲーム。ダークナイトファンタジー
大きいTVの四角から
小さいスマホの四角へと
視覚移動をしていた。
流れるYouTubeのショート動画にも
モンスターエナジーが映っていた
動画のタイトルには。
「川というジュースを飲みました」
ちょっと見てスワイプ。
次の動画の景色はもう思いだせないだろう。
川というジュースだけが妙に心に残り
くだらねぇ…
と口角は片方だけがあがる。
そこからは無限スクロール
ゲームはつけっぱ。
高校3年の冬
2/22 6:16
グレる理由もない環境での
私のヤケクソは
ドンキ•ホーテでのたむろでもなく、
親から貰ったお小遣いを
ファミリーマートでおでんに変換することだった。
家族にどこに行ってたの?と
ツッコまれるのも嫌だから、
ドアの音がなるだけ小さくなるように気配を殺して
【カッ…チャン. スチャ】
鍵を閉めて外へ出る。
夜中と朝の端境の空気
とても寒かった。
だっさいクロックス。もどき。
990円。もふもふの靴下。
兄のクロムハーツ?のパーカーを
借りてでる。中の服は
無印良品のベージュのトレーナー。
私は一人呟いた。
「岩永ゆり18歳。
川という飲み物を紹介します」
憧れのない世界ほど一人遊びと
ごっこあそびを繰り返す。
動画投稿とか死んでもやらん。
決意でもなく、
スローガンでもなく
言葉通り やりたくない事。
心に誓う。
4月になれば、また大学生活かぁ
うまく行くのが少しめんどうだった。
15分くらい歩く。
ウィーン 。ドアが開く
【テレレレ レレーレ テレ レレレー】
音が鳴る
部屋よりも白いファミリーマートににまた
現実を感じる。ピアスを垂らした店員。
店員はダルそうに「しゃっまっせー」とだけ
兄を彷彿とさせるから
イケメンは嫌いだ。
あんまりレジにいたくないから
4個くらい買おうと思ってたおでんは
たまごとちくわだけ。
渡されるパックが小さく済むし
袋もいらないから安上がりだ。
…けれど
「あーあ、大根もいきたかった。」
とだけ
心残りの心の声。
おでんを抱えて外にでる。
外で食べるのも恥ずかしい
猫舌だから冷ましたい。
道草を食って時間を稼ぐ。
どうせ休みだし。
無駄な時間に脳内で無駄な言い訳が始まる。
さっきやってたゲームの光景がまだ頭に残る
オールでゲームしたから逆に頭が冴えていた。
「敵の生体反応、異常〜備えてください〜」
「地点B〜急げ〜急げ」ゲームの台詞を繰り返す。
ぼそぼそと呟き。ノロノロと歩く。
川沿いの道を遠回りして帰路に向かう。
歩くところのコンクリートは白く塗装されている。
安物のクロックスで
黒くなってるところだけ足で踏んで歩く。
おでんの出汁がこぼれないように。
「ぅわぁあ〜川というジュースが現れました〜
エナジーレベル8 とても危険です〜
怯むなァ 俺達、光の騎士の意思なんのためにあ、あっ…ん?なんこれ」
一人言が現実に切り替わる。
目を映すと白く塗装された道にはぽつんと
青く枯れた百合のような花があった。
ドライフラワーっぽいのが
落ちてんなくらいにしか思わなかった。
「え〜それでは、川というジュースを紹介しま」
またぶつぶつと自分だけの
ミームのような言葉を口ずさむ。
呪文のように。
花を拾い花をポケットに
入れていた事を後から知る。
無意識だった。
その束の間、!!
!!!…ピカッ…….!!!!!!!!
まばゆい光が私の眼に焼き付いた。
「うわぁ!!!!きもっ!
入り込みすぎだろあんなクソゲーに!」
おっきい声が出てしまった。
【ダークナイトファンタジー】
私一人がオフライン仕様で夢中になってるゲームと
全くと言っていいほど
同じエフェクトのような閃光だった。
白と黒と青と赤
4:4:1:1 の割合で空全体に広がる。
敵のモンスターに
奥義を決めた後の光の加減と同じだ。
洗練された美しさだった。
現実の景色ではないと即座に判断した。
脳内の幻想。いい歳してゲームと現実の境が
わからなくなる深夜テンション。
自分自身に呆れていた。
そしてその嫌悪はまた濃くなる。
閃光を観測した、その数秒後
私がいる白いコンクリートの道
ちょっと左前の方の塗装は
赤茶色になっている。
おおよそ50m左前に
【ダークナイトファンタジー】に
登場するかのような、
背が高く、
黒い翼と、
黒い角が生えた、
美形の男性が映っていた。
黒のカーディガンは八つ裂きになっていて
黒のスキニーデニムは焦げた、ダメージの加工。
黒い髪にゴシックなアイメイク。
真っ白な肌には吹き出物の類が一切見えず
伸びっぱなしの襟足がよく映える
長く伸びた首には、
錆びたチェーンが鈍く光る。
綺麗な肌に対して退廃的な
ファッションが相反して美しかった。
後方にはファミリーマート
白く塗装された地面の左隣には川と住宅。
少し右前には異世界のような男性。
川と車道と住宅と幻想が
ぽつりと共存していた。
赤い軽自動車が一定の音と速さで
私達の髪を揺らし、過ぎ去った。
私は呆れた声で
彼に話かけた。
「え、バースデー?お兄ちゃん
あっ、アサ….」
もう空は青かった。
話しかけた、彼は全体的に黒いが
肌は白くて美しい。病的で綺麗だった。
「……」彼がじっと私を見つめる。
「あ、同業か。すみません、
お仕事頑張ってください」
「ヨル」
「ん、あーー時間ないんで」
「あなたはアサか」
「あ、はい」
私は話しかけた人を兄と勘違いした。
絡まれたくないのと ナンパされても
面倒だから 対応のスイッチをすぐに変えた。
「あなたはアサか」の
意味を考えるのもすぐにやめる。
酔っ払いはめんどくさい。
なぜ、私は冷静かなのか?
全てが噛み合っていて
私の中の歯車が全て正常だったからだ。
母の美形とモデル体型を
色濃く遺伝した私の兄は
ホストになっていた。
都心の外れの田舎の地元は
電車で30分ほどで歓楽街に行ける。
美形には驚かないそれはホストの兄がいるから。
彼の身なりも全く持って不思議ではなかった。
異形な身なりもコスプレだとか
ホストクラブのバースデーイベントだとかで疑う余地もなかった。
SNSを見れば加工とかサブカルを謳う
そんなちゃちな光景。
三次元の人間の2.5次元。
画面を通してはよく見る。
知らないキャラのコスプレなんて
ごまんといる。
ハロウィンじゃなくても
コスプレしてる人もいる。
それどころか歓楽街の道ゆく人は
コスプレなのかファッションなのかも
よくわからない人も直接目にする。
そういう人よくいるんだよな
「と」しか思わない。
そして私は今ゲームのしすぎて頭もおかしい。
目の前にダークナイトファンタジーの
エフェクトが広がってたのが最たる例だ。
「さっき飲んだモンスターエナジー
変なもん入ってたんじゃないのかな
いや、きっとあれは川だ。
モンスターエナジーじゃない、川だ。川だ。」
と、ぶつぶつと呟いた。
———後に知る。彼はヒトではなかった。
彼はヨルで。概念であり、悪魔であり、現実だった。また彼に会う事になる。———
「朝になりました。はい、えー今回ご紹介するのは川。川というジュースを紹介致します」
あえて一人言を撒き散らしながら
早歩きで歩く。声はまぁまぁ太く放つ。
絡まれたくなかった。
生憎だが外面のヤバさはあんたが
上だけど 内側のヤバさは私が格上だ。
わたしは色々、うまいが負けず嫌いだ。
【目立たなくてすむ勝負事は全て勝つ】
ホストと思わしき男の
シルエットが遠くなるのを振り返り
いなくなった事を確認した。
景色を前方に映す。
もう既に。
住宅街。
やつれた男と顔を合わせる。
やけーにほそーいながーい男。
長く伸びた前髪は金髪
耳元の刈り上げが伸びていて
黒くなってる。
シルバーの両耳ピアス。
華奢なヴィヴィアン?のネックレス。
なーんか肩が合ってないぶかってした
サイズの茶色いジャケット
中は高そうな白のニットを着てる。
穴だらけの黒のダブダブの
ワイドデニムは裾がぼろぼろで
地面を引きづり
ブーツはなんか独特なカタチだった。
カクカクしてる。
今度こそ兄だった。
「あっ」 「あっ」
…..「ゆり、おでんちょうだっ」
「やだ」 …「てかすくなっ。バランスわる。」
「全部私の」
同じ方角の帰路へ
…… 私は兄の翔太に話しかけた。
「今日なんかイベントあったの?」
「しらん!生誕だとか、あれだこれだ、もうどうでもいいよもう、飛ぼっかな!」
「まぁもう今日寝なよ 明日も仕事?」
「うん。」 「あんたも羽生やしたら?
そんな稼いで何するん?」
「んや。稼いではいるが消えている。
てか何。羽って?語録?下ネタ?」
「お前はもう終わっている」
「ヒデブゥーどぴゅっ、」
…..お互いに顔は見てないし
声も顔も笑っていない。
「うざっ。」 「ちょーわかる。俺もやだ」
兄の迎えに行ってたと伝えれば
夜中の逃避行も大きい顔ができる
あー兄は気が楽だ。うざいけど。
7:27次は気配は殺さず
スチャ… ガチャ鍵を開けた。
気配は殺さないが 寝てる人が起きないようにくらいは音には気を遣う。
「ただいまーー」
覇気のない声で 二人は玄関に入った。




