表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Jardin miniature 神々の箱庭で、少女たちは軌跡を紡ぐ  作者: kitty
第3章 厭う地で志を繋ぐ
62/91

残る者たち

長期休暇に入った学園は、

驚くほど静かだった。


生徒の足音も、

談笑する声も、

試験前の張り詰めた空気も——

すべてが、嘘のように消えている。


残っているのは、

必要最低限の人員と、

いつもより広く感じる回廊だけだった。


「……随分と、静かになったな」


執務机から顔を上げ、ムスタファが呟く。


背後に控えるアルテリスは、

いつもと変わらぬ姿勢で頷いた。


「はい。

生徒の九割以上は、すでに帰省しております」


「そうか」


それ以上、言葉は続かない。


ムスタファとアルテリスは、

休暇中も学園に残ることを選んだ。


理由を語る必要はなかった。


聖騎士団の任務。

学園周辺の警備。

そして——特別訓練。


日々は、淡々と過ぎていく。


朝は聖騎士団での基礎訓練。

午後は実戦形式の演習。

夕刻には報告と書類仕事。


人が減った分、

一つひとつの動きは無駄がなく、

静かで、規律正しい。


アルテリスは変わらず側にいた。


命令を待ち、

指示があれば即座に動き、

余計な言葉は挟まない。


だが——

不思議と、その沈黙は重くなかった。


ある日の夕刻。


執務机の上に置かれた数通の手紙に、

ムスタファの視線が留まる。


封蝋の色を見ただけで、

誰からのものかが分かった。


「……届いたか」


アルテリスが静かに告げる。


「はい。

シャマル様と、イルハン様からです」


「そうか」


ムスタファは一通を手に取る。


内容は、どれも他愛のないものだった。


国の様子。

久しぶりの実家の話。

社交界の賑わい。

聖騎士見習いとしての訓練とは違う日常。


——無事でいる。


その一文があるだけで、十分だった。


「返事は、いつも通りでいい」


「承知いたしました」


アルテリスは淡々と頷く。


机に戻るムスタファの背中を、

アルテリスは静かに見守った。


人が減り、

音が消え、

時間だけが流れていく学園で。


彼らは今日も、

変わらぬ役割を果たしている。


何も起こらない日々。


その静けさを崩さぬようにと、

彼らはただ、役割を果たし続ける。


それだけでよかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ