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週末☆トリップ  作者: 秋野真珠
第一部
19/56

18 おばあちゃまの秘密 ⑥

「メイク・・・!」

昨日寝落ちしたのなら、メイクは落としてもないはずだ。

まだ女としてのプライドを捨てていない秋乃は、自分の肌を考えメイクを必ず落として寝る様にしていた。

しかし触ってみても、肌はぷにぷにとするだけで――いやむしろ、いつもよりつやの良い感触で、首を傾げる。

そういえば寝起きなのに顔も洗ってないよ――と気付いたが、シエラが心得ております、とばかりに頷いた。

「昨夜、アキノ様が眠ってしまわれたので、勝手ながら私がお化粧を落とさせていただきました」

いや、落としただけでこのぷにぷに感は戻ってこない。

いったいどんなマジックハンドなの――秋乃はシエラの手をもう一度掴んで、せいいっぱいの笑顔で笑った。

「ありがとう! 本当に、ありがとうー!」

「あ・・・い、いいえ。これは、私の務めですので・・・」

言いながら、シエラの頬が染まるのに、思わずむしゃぶりつきたくなってしまう秋乃はどうにか理性を取り戻し、綺麗になった肌と美味しいミルクティにご満悦でソファに落ち着いた。

どうしよう、この生活が私をダメにしそう――秋乃はそう思いながらも、異世界最高! と心の中で万歳をした。

「アキノ様、よろしければお化粧と、御髪を整えさえていただいてもよろしいでしょうか」

シエラの控えめな申出に秋乃は驚いて申し訳なくなってくる。

そんなことしてもらうわけには――と言いかけて、シエラの仕事をひとつ奪ってしまったあとでは、この小動物のような愛らしい懇願に逆らえるはずもない。

「ええと、リリーの前で、してもいいのなら・・・」

「私は構わないわ。シエラ、お願い」

「はい!」

リリアは顔を輝かせて返事をすると、あっという間に隣の部屋に戻ってワゴンに道具を一式載せて返ってくる。

どうやら用意はしていたようだ。

秋乃も異世界のメイクには興味がある。

どうやったらこんな綺麗な美人が出来るのか、女として気にならないはずもない。

まずシエラが用意したボウルにある水で顔を濡らし、シエラが恐ろしく細かく泡立てた泡で顔を洗わせてもらう。

あーこれ、あれだよあれ。エステで洗ってもらうあの感触――秋乃は週末に行こうとしていたエステシャンの手を思い出す。

これって一体なんの洗顔なのかな、この世界に洗顔ってどんなのかな――そう思っているうちに、柔らかなタオルで顔を拭いて、綺麗な小瓶に詰められたクリームを顔に付ける。少しひんやりとしていて、とても気持ちがいい。

さらにおしろいのような粉をふわっふわのパフで付けられて、プルプルの唇になるようにシエラの細い指先で違うクリームを塗られた。

少し刷毛で眉を整え、それからシエラはブラシで髪を梳き始める。

あれ・・・今ので終わり?! 基礎と白粉のみ?!

秋乃はびっくりしてリリアを見るが、手順に違うところなどないのかにこにこして見ているだけだ。

じゃあ、これだけの化粧で、リリアがこれだけ綺麗なのは――やっぱり根本的なものの違いなのか、と秋乃は少し残念な気持ちになりながら、改めて自分を知った気になって少しほっとしていた。

「アキノ様、御髪はどういたしましょう。いくつかご用意してありますが」

そう言われてワゴンを見ると、秋乃の髪と同じ色の髪が長さは違うものの並んでいる。

これってつまり、カツラってことよね――秋乃はそれを見ながら、いらない、と首を振った。

「短い方が楽でいいの。だからこれでいいよ」

「ですが・・・」

戸惑ったシエラを止めたのはリリアだ。

「シエラ、アキノがいいなら、これでいいの。さ、支度も済んだことだし、行きましょうか」

リリアは笑って、整えられた秋乃の手を取ってソファから立ち上がった。

「え、どこに?」

つられて立ち上るものの、これから改めて説明を受けるつもりだった秋乃は解らないままだ。

しかしリリアは、美しい顔のまま微笑んだ。

「アキノに、カオル姫にあってもらいたいの」

「――!」

それは本当に、神隠しにあった曾祖母の妹の――?

秋乃は期待と不安がまた胸に込み上げて、リリアに手を引かれるままその部屋を出ることになった。


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