生野拓登 2
僕は、扉の前に立っていた。
吟遊詩人通り九番地の宇津谷博信の家の扉の前に……
クシャクシャになってしまった「月刊宇宙人」には、宇津谷博士の実験結果と、住所が書かれていた。結果は、成功。喧嘩九連敗の人が、「女帝」と呼ばれる喧嘩最強クイーンに勝ったらしい。
これで僕も変われる。そう思って、宇津谷博士の家に向かった。
博士の家は、なんというか、【まことちゃん】を書いた人の家に似ていた。
形は全然違うけど、発想は同じだと思った。
扉は、金色だった。迫力がすごかった。
と、後ろから肩をたたかれた。振り返ると、月刊宇宙人に載っていた顔があった。
「やあ、君。強くなりたいかね。なりたいんだね。入りなさい。強くなれるよ」
あっけにとられている僕の腕を引っ張って、宇津谷博士は家の中に入っていった。もう片方の手には大根が握られていた。
書類が散らばっている部屋をよく見ないうちに、黄色い扉の中に入れられた。
指差された椅子に座ると、上から何かが降ってきた。
「拓登、金貸してくれよ」
「いいよ。でも、利子50パーで返してね」
「りょーかい!」
「もし返してくれなかったら」
「うぐっ(;_;)」
「こうだから」
生野拓登編、終わりました
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