第25話 わかりました! 一突きが!!
思い返せば、勇者さまは「マクラフィッシュを、剣に30匹突き刺す」とは言ってない。
わたしは、何か勘違いをしているのかも。
______すみません。勇者さま。
マクラフィッシュを倒すのに時間がかかりました
______ははは!
マクラフィッシュみたいな弱いモンスターに手こずっていては、先が思いやられるぞ!!
俺なら、あんなの一突きさ。
あの日の会話を、思い出すのよ。
______ま、水は汲めなかったら、魔法で出せばいいから気にすんな。
でも、ダンジョン攻略が進むと、俺たちも疲れて魔法が使えなくなる時もあるから、マクラフィッシュに手こずらないようになってくれよ?
そうだ。
〔剣〕と言う言葉自体、出てこなかった。
じゃぁ、魔法?
____ははは!
マクラフィッシュみたいな弱いモンスターに手こずっていては、先が思いやられるぞ!!
俺なら、あんなの一突きさ。
頭の中をグルグル回る、勇者さまの言葉。
____俺なら、あんなの一突きさ。
この一言がなぁ……う~ん。
____俺なら、あんなの一突きさ。
「ん? 俺なら?」
それって、他の人には難しくて、勇者さまなら出来ること______?
「あぁ! わかった!!」
わたしは、川から飛び跳ねている【マクラフィッシュ】たちを見つめた。
「一回に、一つの魔法は一つだけ、じゃないのね!」
目を閉じ、深呼吸をして、体の中の魔力に集中した。
魔力を細かくわけるイメージ。
【マクラフィッシュ】は30匹以上いるから、そのぐらい。
「よし!」
パチッと目を開けて、叫んだ。
「同時展開! ライト!!」
わたしは〔ライト〕の魔法を一度に30個展開させた。
30本以上の〔光の柱〕が【マクラフィッシュ】一匹一匹に降り注ぐ。
(マクラフィッシュたちの核が見える!!)
「30匹同時に一突きよ!
いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
〔光の柱〕が細くなり、マクラフィッシュたちの核を突き刺した。
マクラフィッシュが、弱いからできた。
一度に30個以上、同じ魔法を出すとさすがに一撃一撃の威力が落ちる。
この威力で、この間の〔巨大なスライム〕は倒せない。
「はぁ、はぁ、はぁ、…………」
これは、疲れる。
息は切れるし、頭痛い。
30匹同時は、集中力がいるな。
これを、軽々とやる勇者さま、本当にすごい。
「キラキラキラキラッ」
マクラフィッシュたちの魔石が、太陽の光を反射しながら川の中に落ちた。
〔光の魔法〕の同時展開。
これが、答えだったのね。
〔光の魔法〕には、勇者のみが使える魔法がある。
魔法使いが使えない魔法。
それが、〔ライト〕や〔正義の光〕。
わたしも使えるということは、剣を使っていると習得できる魔法なんだろうな。
「さ、魔石を拾って、洗濯よ!!」
初めて、落ち着いて洗濯できた。
もう、剣を握りながら洗濯しなくていい。
なんて晴れやかな気分なの!
山小屋に戻ると、結界にはじかれている数匹のスライムたちを倒して、洗濯物を干した。
まだ昼まで時間がある。
午前中に水汲みも終えて、お昼はきのう町の屋台で買ったパンを食べた。
「午後は掃除をするぞ!」
掃除は「上から下」だって、お母ちゃんよく言ってた。
はたきをかけて、窓を拭き、床をほうきで掃いた。
「ふぅ、ちょっと眠いから、休憩しよう」
きのうの夜も魔物と戦ったので、眠い。
最近、睡眠時間がかなり削られているから、夕方まで起きていられない。
ちょっとだけ、仮眠を取ることにした。
(そう。ちょっとだけ。
じゃないと、また勇者さまに怒られる______)




