第24話 エスメラルダさんに怒られました
「おい! いつまで寝てんだ!!」
今日も、勇者さまに起こされた。
もう、これが日課になってきた気がする。
「早く起きろ! 灰かぶり!!」
プンプン怒ったあと、勇者さまは顔を洗いに行った。
入れ替わりに、少し離れた所で様子を見ていたエスメラルダさんが来た。
ちょっと不機嫌そうな顔をしている。
「______いい気にならないで」
わたしだけに聞こえるように、低く、静かに、ゆっくり、言われた。
何のことだかわからなくて「え?」と聞き返すと、エスメラルダさんに顎を「クイッ」とつかまれた。
「______ガイツに起こしてもらうために、毎朝、暖炉の灰の中で待ってるなんて、腹立たしいのよ。
色気づいたガキなんて、迷惑だわ」
「っえ? いいえ、誤解です!
勇者さまの手を煩わせるつもりはないんです!
きのうの夜、【灰い______」
「______そう。
今朝からでなく、きのうの夜からそこにいたの?
そんなに、お伽噺の主人公になりたいなら、叶えてあげる!!」
すると、エスメラルダさんは立ち上がって腕を組み、わたしを見下ろし、厳しく言い放った。
「さぁ! 灰かぶり!!
さっさと立って、掃除をなさい!!
今までは慣れないだろうと思って多めに見てたけど、今日からは掃除もちゃんとやるのよ!!」
あ、そうか。
わたしがここのところ、毎日、暖炉で寝てたからか。
童話の主人公に憧れて、マネをしているわけではないのだけど「はい」と言うしかなかった。
みんなと同じ魔物と戦っていたと伝えれば、きっと誤解は解けるに違いない。
それとなく、説明を試みた。
「【灰色ドシニア】って、集団で波を作って襲ってくるから大変ですよね」
「は?
あれは、そんな事しないわよ?
触手から毒を出すから、体力を奪われるのがやっかいなの」
あ、それで体力が減ってたのか。
毒。
きのうは気付かなかった。
「出現しても、2、3匹。
何? 集団で波を作るとか。
そもそも、あたしたちが戦っている魔物と、あんたが戦えるわけがないでしょ?
どこまでも、腹立たしい子ね!
さっさと仕事なさいよ!!」
わたしが、きのうの夜に戦った魔物、やっぱり違う魔物だったのかな?
よくわからなくなった。
「おいおい、何事じゃ」
ジージエおじいさんが食堂に入ってきた。
「掃除もちゃんとやるように言ってただけよ」
「ほうかほうか。
怒ると美人が台無しになる。
せっかく美人なんじゃから、そう怒らんのじゃ」
「え、そんなに、あたし美人?」
「おぉぅ。美人じゃぞ?」
ジージエおじいさんが、エスメラルダさんをなだめた。
エスメラルダさんは気をよくして、朝食の支度に行く。
それを見届けたあと、おじいさんがこっちを見た。
一瞬、マジメな顔に見えたのは、気のせいかな?
「シーガルスホルムの剣は、つけとらんのじゃのう」
「はい。
重いので、今は部屋にあります。あれは______」
「うむうむ。それがえぇ。
魔物とは進んで戦うもんじゃない」
(「外に出るときにつけます」って説明しようと思ったんだけど……もしかして、ジージエおじいさんは、わたしが危ないことに首を突っ込まないように、重たい剣をくれた……?)
寝起きのせいで、あんまり深く考えられない。
それよりも、今日からは掃除もちゃんとやらなくちゃ。
今日も、わたしだけ具のない朝食を食べ、みんなを見送ったあと、洗濯に行った。
「バシャバシャバシャバシャバシャバシャ!」
すぐに洗濯せずに、少しマクラフィッシュを眺めながら考えた。
(どう、早く倒すかが問題よね)
今日は、掃除もしないといけない。
実は、ちょっと気になっていた事がある。
町で、換金所のおじさんに「勇者さまは一突きです。わたしは一突きで、三匹しか刺せません」と説明した。
説明しながら、何か変だよなと思った。
やっぱり、一突きで30匹以上を刺すのは無理がある。




