第22話 もしかして、夜に復讐に来てる?
「ごぽぽぽぽぽぽぽ」
貝が襲って来たと思ったら、わたしは水の中にいた。
(山小屋にいたのに、なんで溺れてるんだろう?)
息ができないせいで、考えがまとまらない。
貝が次々と体当たりしてきて、息を「ごぼっ」と吐き出してしまった。
その反動で空気の代わりに水が入ってきて、鼻の奥がツーンと痛くなる。
しょっぱい水が、口の中に入ってきた。
(海水!?)
腰に装備していた〔シーガルスホルムの剣〕は、三階のわたしの部屋にある。
重いので、山小屋に帰ってすぐ外しでしまった。
(外すんじゃなかった)
水の中じゃ、魔法も使えない。
わたしは、右腕を振った。
服の右の袖が切れて〔グンラウグの剣〕が手におさまる。
(こういう時のためにくれたのかな?
おじいさん、ありがとう!!)
右腕を振れば、いくつかの貝に当たった手ごたえ。
すると、一気に波が引いて、わたしは地面に四つん這いになった。
「ぶはっ! ゲホッ! ゴホッ!!」
やっと息が吸える。
急いで呼吸しようとするせいか、せきこんでしまった。
(よく見たら、灰色の貝だ)
夜だから、周りが暗くて気がつかなかった。
フィリアさんとジージエおじいさんの会話を思い出す。
――――――【灰色ドシニア】は、〔貝〕の魔物です。
確かフィリアさんがそう言ってた。
これ、きっと【灰色ドシニア】だ!!
――――――ちなみに、【ブラック・アイベックス】は〔ヤギ〕の魔物じゃ。
こいつは、大きくてのぅ。
山の中を駆け巡るから、足の筋肉がスゴイんじゃ。
きのうの夜に現れた〔黒いヤギ〕の特徴と一致する。
換金所のおじさんが驚いていたのも、つまりはそういうことなんだわ。
(これって……)
わたしは一つの仮説にたどりついた。
夜、魔物が勇者さまに復讐しに来てる!?
そうとしか思えなかった。
しかも、相手は結界を通り抜けられる。
「ぜぇ、はぁ……勇者さま! 勇者さま!!」
叫んだけど、反応はない。
溺れたせいで、息が切れているのがいけないの?
(そうだ! ジージエおじいさんの水晶!!)
ジージエおじいさんの水晶は、危険を察知したら教えてくれるって言ってた。
それにかけよう。
そのうち、誰かが助けに来てくれる。
身体強化をかけてない状態で襲われたので、体力をゴッソリ削られた。
ちょっと休みたい。
「は、ははっ……ちょうど左手に、ポーション持ってる」
倉庫からポーションを取り出したところで襲われたのが、不幸中の幸い。
わたしは左手に握りしめていたポーションを飲み干した。
「あとは、おじいさんたちが来てくれるのを待っていれば、助けてくれる――――って、そういうわけにはいかないよね」
ジリジリと【灰色ドシニア】が、静かな波に乗って近寄ってくる。
何体か倒せても、後からまた増えてくる。
「〔身体強化〕!」
ここからは地味な長期戦だった。
集団で水を操り、溺れさせて襲おうとしてくる【灰色ドシニア】。
それを〔グンラウグの剣〕で切り落としていく。
手のひら大の二枚貝と、貝としては大きめと思うけど、一貝ずつ切るのは大変な作業だった。
そして、一撃が重い。
攻撃をくらうと、確実に体力を削られる。
なので、何回か攻撃をくらうとポーションを飲む。
やっぱり、フィリアさんの身体強化と、わたしの身体強化に差がある。
フィリアさんの身体強化は、とても頑丈。
手に持ってたいくつかのポーションは、すぐに無くなった。
ちょうど倉庫前で襲われたので、倉庫からポーションを取り出しながら戦った。
「ゲホッ。お腹が、ちゃぷんちゃぷん」
何てこと!
お腹がいっぱいになったら、負けてしまう!!
【マクラフィッシュ】と毎日戦ってるから、長期戦は慣れてきたけど、攻撃量に差がある。
【マクラフィッシュ】は痛くない。
【灰色ドシニア】は、攻撃を受けると体力を削られる。
大量の群れで攻撃してくるのはよく似てるのに、やっぱりダンジョンの敵は違うなぁ。
――――――まさか次の層で【ドシニア】がいるとは思わんかったが、【ブラック・アイベックス】よりは戦いやすかったのぅ。
ふと、ジージエおじいさんが言ってたことを思い出した。
――――――【ブラック・アイベックス】よりは戦いやすかったのぅ。
その言葉がグルグルと頭を駆け巡る。
それって、〔黒いヤギ〕より弱いってことだよね?
だから、未だに誰も来ないのかもしれない。
結界を通り抜けたけど、ジージエおじいさんの水晶には反応しない程度の魔物。
両手に力が入る。
「つまり! お前もわたしが倒せる相手ということ!!
お前を倒してレベルを上げる!!!!」




