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ドール・イン・ファンタジー 〜ドール精霊を救う旅へ~  作者: 屑野メン弱
第一章 リュミエール剣魔学園編
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第十八話 仮面剣士


 学園に入学してから二ヶ月ほど経過した。

 二ヶ月程度では実力に大きな変化は生まれなかったが、戦い方などの知識面は潤い始めていた。

 学園生活にも随分と慣れ、俺とフォルティナは更なる実戦を重ねる為、冒険者ギルドを訪れていた。

 冒険者ギルドは壁内の外側に位置し、学園からは随分と距離があるが、 依頼を終えて璧外から報告しに来る際は便利な場所にある。だが頻繁に学園の寮から冒険者ギルドに行くのは結構めんどくさい。魔法がある異世界とはいえ、やはり自転車や自動車があった元の世界と比べると、かなり不便な印象を受ける。

 そしてアニメや漫画で観た冒険者といえば、自由奔放で荒くれ者のイメージが強かったが、実際はそんな事はなく、至って普遍的であった。やはり依頼主との信頼関係で成り立つ職業であるため、印象や評判は大切なのだろう。

 早速冒険者登録するため俺とフォルティナはカウンターに赴く。

 しかし意外にも登録はあっさり終わった。入国と身分証の手続きは嫌になる程長かったというのに。なんだか拍子抜けだ。

 登録を終えた俺達は、沢山の依頼が貼られた掲示板を眺める。貼られている依頼はAからEランクのものが存在し、Sランクともなると、その殆どが指名依頼になる。

 勿論俺とフォルティナが受けらるのはEランクの依頼だけだ。皆スタートラインは同じである。

 とはいえ、Eランクにも一応魔物の討伐依頼は存在する。だが、どうやら初めての討伐依頼にはEランク以上の冒険者が同行しなければいけないそうだ。

 当然俺とフォルティナは討伐依頼を受けたい訳で、いきなり路頭に迷わされた。というのも、冒険者の知り合いなどいないからである。


「フォルティナの知り合いに冒険者やってる人とかいないの?」

「えーそんなのいないよー」

「まぁ、そうだよね……」

「あ、やっぱりいたかも」

「え? 誰?」

「レイもよく知ってる」


 俺が知ってる人物に、冒険者をやってる人物などいただろうか…………だとしたら学園の生徒か? …………あ!!!


「レクスか!」

「そう、第二王子ならランクもそこそこ高かったはず」

「でも、いつも忙しそうだからな…………」


 確かレクスの冒険者ランクはCかDだった覚えがある。だが第二王子の立場でありながら学生である彼はやはりいつも忙しそうだった。最近は落ち着いているようだが、何かあった時に、責任を負える立場でない俺達が誘う相手では無いだろう。しかも今のレクスにはウィリアがいない。以前と全く同じように闘う事は難しいだろう。ギルドの端で決めかねていると、すぐ近くにいた長身で立派な鎧を纏い、特徴的な仮面を着けた好青年が話しかけてきた。

 

「話は聞かせてもらった! もしよかったら是非この俺を同行させてくれないか!?」

「あ、貴方は…………?」

「俺の名前は……ア、アレクという!」

「アレクさんですか。俺達は一応最低ランクのEランクなんですが…………」

「あぁ! 構わないよ! それでEランク以上の付き添いが欲しいんだろう? 俺はCランク冒険者だ」

「えっと、ちょっと待ってもらえます?」


 すぐにユノに確認を取るが、ユノは「別に敵意がある訳じゃなさそうだし、いいんじゃないかしら」と軽い返答だった。

 という訳で初めての討伐依頼には、俺とフォルティナに加えてアレクが同行する事になった。




 依頼主は王都近隣の小さな村の村長。夜間に獣らしき唸り声、暗闇の中畑を歩く姿が確認されたため、その調査と可能であれば討伐という依頼内容だ。

 つまり討伐対象がはっきりとしていないため、まず初めに、しっかりとした調査必要という訳だ。さらに依頼した日から被害が拡大してる可能性などを考慮して、依頼主に改めて依頼内容の確認をしなくてはならないし、獣の痕跡、村人への聴き込み、近辺調査など、冒険者といえどただ敵を倒せば良い訳ではない。

 従って、まず初めに俺達が向かうのは森ではなく、被害を被った村からだ。

 早速村長に依頼内容の確認を取ってみた。話を聞く限り、やはりギルドで確認した被害状況とは異なり状況は悪化していた。

 幸い村人達には被害が出ていなかったが、村の家畜に被害が出た。村で育てられていた家畜は、ハイブカウという所謂牛である。ただ俺の知る牛とは見た目が大分違い、大きな角が生えていて、肉付きが余りにも良すぎる。その肉付きは、自らの動きを縛り、その為か性格も大人しく、家畜として適しているものはこれ以上ないようだ。この世界でハイブカウは一応魔物として扱われてるらしい。

 ユノ曰く、大昔には俺の知るような牛がいたとか。つまりハイブカウは元々普通の牛で魔物に進化を遂げたのか?

と謎が深まるが、今現在そのような話は語り継がれていない。

 そしてハイブカウが襲われたと言う事は、敵は肉食。放置していれば、いずれ人間が襲われてもおかしくはない。

 村に残された痕跡は他にもあり、畑に複数の足跡があった。大きさはそこまで大きくは無いが、それなりに数が多く、痕跡の歩幅から四足歩行であることが推測される。

 つまりこれでガストベアなどの、比較的大きい魔物の線は外される。まぁ、ガストベアだったら家畜も家も、風の刃でズタズタにされてそうだ。

 これらの情報から推測される魔物は、この辺だとフォレストウルフの可能性が非常に高い。フォレストウルフ一個体の危険度は、Dランクとそこまで高くなく、Eランク冒険者のパーティーでも苦戦せずに倒せる程度。しかしフォレストウルフの怖いところは、群れを成すことにある。フォレストウルフの群れは十匹もいればCランク、二十匹もいればBランクとなり、群れを成すだけでその危険度は跳ねあがり、ガストベアと同ランク又はそれ以上になり得るのだ。

 つまり今回の依頼はフォレストウルフ一体であれば討伐にあたり、複数であれば一度ギルドに持ち帰る必要がある。

 と言う事で、村で情報収集を終えた俺達は、村を出てすぐ近くの森に入った。




 森は魔物達にとって大きな箱庭のような場所である。そんな森にはあらゆる種類の魔物が存在し、縄張り争いは必至であり、その様はまるで蠱毒の壺。

 更に今回の相手はフォレストウルフの群れの可能性も考えると、気を抜く事は出来ない。

 俺達三人は死角ができないようアレクとフォルティナを先頭に、形なりとも陣形を組んだ。もちろん俺は近接戦は全くもって話にならないので、後ろで二人のサポートに当たる。

 それに加えて今回は村での情報収集を経て、ユノも戦いに参加する。だがユノの魔法は場合によって強力すぎる為、アレクとフォルティナを巻き込んでしまう可能性が高く、俺と同じくサポートに徹するそうだ。

 そしてこのパーティーの攻撃の要はもちろんフォルティナだ。つまり短期決戦尽きるフォルティナをどう活かすかである。フォルティナが背後を取られないよう、俺とユノがサポートし、アレクが後衛の俺達に敵を寄せ付けないように立ち回る。そんな作戦だ。

 作戦を頭に入れながら魔物の痕跡を探し、森を進んでいくと、村で見た足跡が幾つか散見された。その数から一定数の群れである事は確認が出来た。

 すると突如、前衛の二人が足を止めた。


「みんな静かに!」


 アレクの緊張感を含む声に俺は身構える。そんな俺に対しフォルティナは戦いたくて仕方なかったのか、不敵の笑みを浮かべていた。

 しかし俺には敵の姿は見えていなかった。


「レイ、敵よ。構えて」

「え? 何処にいるの?」

「全方位よ」


 全員が意識を全方位に向けたその時、ユノの言ったように、文字通り全方位からフォレストウルフが現れた。その数、なんと十五……いや下手したら二十匹以上いるかも知れない。奴らの赤い目は、俺達が一歩でも動けば喰い殺さんと言わんばかりだ。狙った獲物を絶対に逃さないように囲み、その円を徐々に縮小させていく。このまま距離を詰められて仕舞えば、成すすべなく俺達は喰われるだろう。

 そんな状況で最初に動いたのはユノだった。


「みんな! 私に続いて! シャドウバレット!!!」


 ユノが詠唱を唱えると、敵と同じ数の魔法が標的に向かって飛んだ。放たれた魔法のうち五匹を致命傷に追い込み、その他には躱された。側から見れば、殆ど当たっていないと思うかも知れないが、そもそも初級魔法とはいえこれほどの数を同時に、かつ正確に敵に仕向けるなど、まさに神の御業である。二つ発動させることすら人にとっては困難であり、普通の人間であれば一つ発動出来れば十分なのである。ユノはその二十倍の数を一人でこなしていた。その集中力は計り知れず、俺には想像もつかなった。

 ユノの攻撃により、攻撃を仕掛けてきた残りの敵は体勢を崩し、その何体かはフォルティナが追撃を行うことによって葬ることが出来た。

 俺もそれに負けじと攻撃を仕掛ける。無論、二人のように高い攻撃力を持つわけでもなく、威力と精度も速度も劣る為、俺は一体を集中的に狙った。俺の攻撃では一撃で倒せない為、敵の目や足を狙い動きを封じた。

 そうして俺とユノが魔法を集中し行使出来るよう、アレクが俺たちのカバーに回り、フォルティナは魔法で怯んだ敵をひたすら叩き潰していった。


「あと一体だ!!!」

「うぉぉぉぉ!!! りゃあ!!!!!!!」


 そして俺達はフォルティナの最後の攻撃によって勝利した。

 今回は皆、かなりギリギリの戦いを強いられた。

 フォルティナは既に魔力が尽きていただろう。

 もし仮にユノが居なければ、俺達は最初の奇襲で死んでいたかもしれない。

 俺は……俺のやるべき事をやった。

 しかし足手纏いなのは明白。

 俺は次の日から更に体を鍛え、魔法をひたすら撃ち練習に明け暮れるのだった。

次回「魔王・親愛のレヴィアタン襲来」

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