おわりのはじまり
「シャルロット準備は良いか?」雅は真剣な面持ちで横に居るシャルロットに声をかける。
「雅、まかせなさい。毎週毎週いったい何の為に頑張ったと思ってるのよ」シャルロットは自身に溢れた表情で答えた。
「では、雅・シャルロット組の実技試験を始める。制限時間内にターゲットを殲滅してこい」実技試験担当の教師がそう言って開始を告げる。
開始音が響く。その音と共に二人はとびだ出す。
試験会場は訓練で使っていた所とは別の場所ではあるが同じ様な森である。飛び込んだ二人は木から木に高速で移動しながらターゲットの訓練用ロボ、教官参号を探す。
「二体発見、誘導するからお願い」シャルロットはそう言うと高速移動しながらハンドガンを発射する。教官参号は素早く木に隠れる。シャルロットは移動しながら二体に威嚇射撃を繰り返す。教官参号がシャルロットに狙いを絞っている所を回り込んだ雅が確実に仕留める。
「じゃ次行こうか」雅がアイコンタクトをシャルロットと取りながらそう言った。
シャルロットが引き付け雅がしとめる。シャルロットから目を離し雅に向おうとする教官参号はシャルロットが仕留める。
中間試験とは動きの違う二人に試験管達も驚いた。お互いの仕草である程度察して動きお互いをフォローしあう。長年コンビを組んだ騎士学科の上級生の様だった。無事二人は時間を十分残し教官参号を全滅させ満点で通過した。
さて、次は生徒同士による模擬戦闘だ。一次試験の点数が高く残り時間の多かったコンビから森に入ることになる。侵入ポイントは五ヶ所あり順に五分おきに森に入る。A→B→C→D→E→A……と言う感じである。全員が入った所で合図がなりスタートとなる。
雅とシャルロットは二十ニ番目であった。上位ではあるがまだ心配な順位であり、この模擬戦闘を落とすわけには行かない。
森に侵入した後周りを警戒しながらすぐに森の奥に向かう。先に入っているコンビに見張られている可能性もある。
「シャル、ここらで隠れて様子を伺わないか」雅が提案する。
「あんた何言ってんの隠れるそんな卑怯な事できるわけ無いじゃない」シャルロットが反対する。
「じゃーどうする。見つかったら狙い撃ちにあうぞ」雅が言う。
「そこはあんたが考えなさい」シャルロットがなぜかドヤ顔で答えた。
雅は呆れてしまう。何の為にこんなに必死になっているんだと思う。雅だけならさっさと模擬戦闘は離脱しても良いのだ。
「んーじゃあこのまま進んで開始と共に振り返り迎え撃つって言うのはどうだ」雅が苦し紛れに提案する。
「それでいいわ」シャルロットが納得する。
開始の合図である信号弾が上空に上がり炸裂する音が響き渡る。その音と共にシャルロットと雅は辺りを警戒しながら素早く動き比較的安全な巨木の根元で身を潜めた。
それと発砲音と共に木の幹が裂ける。向いの木に隠れたシャルロットが首を振って相手の位置を雅に伝える。
「でて来たまえ高坂。僕の手で君を葬ってあげるよ」そう言ったのは米崎 武だった。
「バカすぎるな」雅は心の中でそう呟く。しかし戦闘の実力は騎士科を目指してるだけあり中々のものだ。
雅は木の根を陰にし少し移動し一瞬だけ除いて位置を確認しながら発砲しすぐにまた隠れる。米崎の姿は見えるが米崎のパートナーの姿が見えない。
米崎たちは俺を狙うはずだ。だとすれば米崎は陽動でパートナーが俺を狙いに来るはずだ。この根元を狙えるのは……雅はそう予測し銃口をその方向に向けかまえる。シャルロットは米崎と撃ち合っている。
雅の銃口が狙う先に米崎のパートナーが銃を構え予想道理の位置に飛び出した。雅は狙い済まし銃を三発発射しすぐにその場から回避する。
雅の放った銃弾が命中し米崎のパートナーがその場に倒れこむ。一人になった米崎は雅、シャルロットの敵ではなく回り込んだシャルロットに倒された。
森に多くの他の銃撃の音が聞こえている。激戦になっている様だ。
「ゆっくり進もう」雅がそう言って進む。どこから狙われているか解らない状況の緊張感は精神をすり減らす。
雅が神経をすり減らしているのとは裏腹にシャルロットは自信に満ち溢れた表情で少し笑顔さえ浮べている。
木のかげている男子生徒を見つけすぐにシャルロットに合図を送りもう一人を探す。男子生徒の視線からパートナーの位置を割り出しシャルロットに合図する。
シャルロットの見つけたと言う合図を待ち雅が銃弾を発射する。二人同時に仕留めすぐに移動する。
その後、数コンビを遭遇戦になったが無事しとめる。次の相手を探していた時、戦闘中の二組に出くわした。片方は学年トップと言われる飯田、柿本コンビ。
学年トップと言われるだけあり雅たちの存在に気が付き飯田が牽制の銃撃を放って来る。柿本がその間に相手の一人を倒す。
シャルロットもすぐに動き飯田を銃撃するが身をかわされる。シャルロットはそのまま飯田と撃ち合いに突入する。雅は柿本に注意しつつシャルロットを支援する。
柿本がもう一人を始末しこちらにターゲットを変える。雅はすぐに柿本を警戒する。柿本は跳弾の使い手であらゆる方向から攻撃をしてくる。
森の中で木を使用した模擬弾での跳弾は使い難いと言え気を抜けない。柿本を警戒してシャルロットを狙わせない様にしつつ飯田を仕留めないといけないだろう。シャルロットも奮闘しているが今の所、互角と言った所だ。
時間が経つにつれ徐々にシャルロットが押され始める。その時、雅の頭の上を銃弾がかする。柿本の跳弾だろ思われる。
雅の心臓が高鳴りその瞬間スローモーションに景色変わる。
雅は銃弾が飛んできた方向を一瞬確認する。木の根元に大き目の石があり柿本はそれを利用したようだ。すぐにその場から移動する。息苦しさが雅を襲う。重く動き難い体を動かし柿本に三発銃弾を発射した後、すぐに飯田に銃口を向け三発発射する。
柿本から放たれた弾丸を目で見ながらギリギリでかわし柿本にお返しの銃弾を発射する。水飴の中を進むかの様な重い体を必死に動かし柿本に向かい前進する。
柿本と飯田に発砲しつつ相手の弾丸はギリギリでかわす。先に銃弾に倒れたのは飯田であった。一瞬の隙を突かれシャルロットの銃弾が飯田にヒットした。
飯田を牽制する必要がなくなった雅はそのまま柿本を銃撃しながら前進する。銃弾をギリギリで全てかわす雅を見た柿本の顔は驚愕の表情に満ちている。
その隙を見逃さずシャルロットが柿本を仕留めた。
雅の様子を見たシャルロットが心配そうに駆け寄り声をかける。しかし雅には声がゆっくりに聞こえ何を喋っているのか聞き取り難かった。
取り合えず雅は身を隠すように木の根元に座り込んだ。シャルロットの心配そうか顔が雅を見る目ている。
雅は深呼吸し気持ちを落ちつかせる努力をする。徐々に落ち着き突然、スローモウションが終る。
「雅、ホントに大丈夫」と言うシャルロットの声が真っ先に聞こえた。
「すまん、ちょっとな……大丈夫だ。次行こうか」雅が言う。
「あんた何言ってるのさっき試験終了の合図がなったじゃない」シャルロットがそう答えた。さっきの柿本が最後だった様だ。
上位まで残ったら良いと思っていた雅だったがまさか最後まで残れるとは思っていなかった。
……
さて、これで俺はシャルロットからも解放された。希望学科には諜報科を提出している。門番希望には一番適した学科である。成績は最低でも良い用は卒業さえすればいいのだ。
「シャル、騎士学科頑張れよ。俺は諜報科で残りの学生生活をゆっくり過ごさせて貰うよ」雅が笑顔でシャルロットにそう言った。
「はぁーあんた何言ってんの もう私と一緒に騎士学科の受講申し込みは出しといたわよ。心配しなくてもすぐに受理されたわ」シャルロットがそう答える。
「俺はさっき、諜報科の受講申し込みだしてきた所だぞ。それにアンナ先生だって受け取って……」雅がそう言いかけて黙る。
「そんなの許される訳無いじゃない」シャルロットが笑みを浮べながらそう言った。
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