[解体ショー](新ep40)
「これより、解体を始める。メス」
無数の人たちがテーブルの前にいる。
白い服を着た人たちは手をあげると同時に細かく体内を見始めた。
「...」
ライルは解体の様子を見ながらチラリとクレイドの方を見る。
クレイドは淡々と解体の様子を見ていたがライルはそれどころでは無かった。
「はぁ...はぁ...」
ライルが子供を預け、戻ってきた。
ライルの目の先には倒れたガンマン。
それと血を流しながら肩を組んでその場から逃げる人々。
ライルの元に足音が近づく。
「ライル...ライル!」
「うわ!」
驚いて目戦を移す。
移した先にはヘイドが立っていた。
「あ...ヘイド...先輩」
「いいよ堅苦しい。もうガンマンは死んださ。完全にな」
ライルはヘイド全体を見つめる。
驚くことに血が一滴もついていない。
「ヘ...ヘイド先輩たちが倒したんですか?」
「いいや」
ヘイドは口を曲げながら腰に手を置く。
それと同時に瓦礫が崩れる音が聞こえた。
ライルは一瞬首をかしげるが、足音はどんどん近づく。
「俺たちじゃなくてな...」
ヘイドは体を端に寄せる。
ヘイドの後ろから歩いてくる一つの影。
ライルは口を半開きにした。
「クレイドだ」
ヘイドが軽く言う言葉にライルは動揺を隠せない。
「...」
クレイドは黙ってライルを見つめる。
ライルは少し固まってから笑顔を作る。
「ク...クレイド先輩...久しぶりで...ハハ...」
「...」
小さいため息をつくクレイドはライルの手前まで来る。
そしてライルの手を強く掴んだ。
「ちょ...痛...」
ライルは片目をつぶる。
ヘイドは手を伸ばしてクレイドへ言う。
「おいおい!クレイド何してんだよ」
クレイドはライルを引っ張りながら言った。
「ちょっとな」
そして後ろへ振り向き笑顔で言った。
「男の連れションだ」
人気のない場所。
無機質な灰色の壁が広がる。
クレイドはライルを壁に押し当てた。
「ちょ...ここどこです...」
クレイドは少し下を向いて拳を握った。
「あの...なにするんでー
ライルの顔は勢いよく曲がった。
皮膚を通り越して骨に痛みが響く。
血が灰色の壁に飛び散り、クレイドの拳が壁に着く。
ライルは灰色の壁に寄りかかり、ずるずると倒れる。
「いてぇ...な...」
クレイドはライルに近づき襟元を掴む。
もう一度立ち上がらせ拳を思いっきり横に動かす。
「ぶが!」
ライルは頭を壁にぶつける。
殴られたところの痛みが全身に広がり体が震えた。
「あのな」
クレイドは上からライルを見下す。
ライルは震えながら上を向く。
「アプリで無理に戦おうとしたのはなぜだ」
「え...」
ライルは困惑するとクレイドはライルを睨みつけて壁へ激しく押しあてた。
「ぐ!」
「わざわざもう一度言わなきゃいけないか?」
静かで怖さが勝つ声。
ライルは首を横に振る。
「だよな。あそこでアホみたいに戦ったのはなぜだ」
「え...だって戦ー
バン!
クレイドにライルは壁ドンをされた。
「バーチャリアリティーで無理に戦い、自分が死ぬと考えたか?アプリの酷使によって体にくる影響を考えたか?」
「う...考えていない...」
ライルは悔しそうにつぶやいた。
クレイドはライルから手を離し、ライルを睨んで言い捨てた。
「戦闘員が1人でも消えると組織に重症なんだ。アホみたいな無鉄砲のクソガキなんかにもう構っていられん」
そう言うとクレイドは後ろを向いて去って行った。
ライルはただ壁に寄りかかってクレイドを見つめていた。
「...頭部、胃につながる巨大な空洞を発見」
「了解。予測するに、大きな弾を胃から放出していたのだろう」
窓ガラス越しで濁って声が聞こえる。
ライルは口に手を当てながらじっと解剖を見つめていた。
「胸部を切開する」
「了解」
肉の塊の奥は人間と同じようなつくりだ。
胃に肺に肋骨に。
だが肺に巨大な銃弾が引っ掛かっていた。
胃は異質なオーラを出していた。
「胃を切開する。液体などに気をつけろ」
「了解。お願いします」
胃にメスの刃が入る。
縦にメスを動かすと出てきたのは大きいようで小さな鉄の塊だ。
小さな塊がバラバラと落ちていく。
「...頭に到着するまでに塊は大きくなり銃弾へと変化すると予測する」
「わかりました」
男は胃より下側も切っていく。
「...これは...」
「何です?」
「精巣か?」
女性職員は顔を赤らめる。
助手は男に変わってその部位を見る。
「...そうですね。この個体は雄であると言って良いですよね」
「あぁ。そして、かなり人間に近い形をしたバグだと分かるな」
「了解」
男は更に胃のゴツゴツした部分を見つけた。
「胃の真ん中には巨大な塊があるぞ。硬い」
解剖チームは一斉にのぞき込む。
ライルも眉を潜めてガラスに手を置く。
「動くか...これ...?」
手で塊に力を入れた。
するとぐちゃという音と共にわずかに動いた。
「...液体に気をつけろ。一気に動かす」
「了解...私も動かしますか?」
「頼む」
そう言うと一気に力を込めた。
ぐちゃぐちゃと引きちぎれるような音が鳴り続ける。
ブェリオは口に手を当ててそのままその場を離れた。
ライルも少しおえぇと吐きそうになるが、黙って見続けた。
「うぇ...」
「いやな気分なら帰れ」
横から声がした。
クレイドだ。
「お子様に吐かれては困るからな」
「うぇ...はぁ...」
ライルはクレイドを睨みつける。
憎そうに、親の仇のような眼で睨みつける。
「はぁ...はぁ...」
「おぇおぇかまってちゃんみたいで気持ち悪い。まるで年頃のブサイク女だ」
「うぁあ!」
ライルは言葉を聞いた途端クレイドに襲い掛かった。
だがガイアンがライルを止める。
ライルは暴れてクレイドに食らいつこうとするが、ガイアンのパワーに負けてしまう。
クレイドは余裕の笑顔で見つめている。
「馬鹿かお前らは...」
ガイアンはライルに自分を見せさせた。
そして肩を強く叩き目を大きく開けて言い放った。
「ここはお前らの喧嘩場所じゃない。そんな癇癪起こすくらいなら、今、すぐに、帰れ」
「はぁ...悪かー
「そんな言葉聞き飽きた。吐きたいならトイレに行ってこい。ついでに息子を元気にさせるのもいいかもな。ケッ」
ライルはガイアンが離れて行くのを口を曲げながら見ていた。
「ぅぅぅ...ぅぅうら!」
ブチ!!
胃の皮膚が引き裂かれた。
重々しい鉄の塊は煙を出している。
「取り出したぞ...写真を頼む」
「了解」
解剖職員は奥にあるカメラに手を出した。
「...」
男は眉を潜め、息を切らしながら塊を見つめる。
「何だよこれ...クソッ!」
「すみません撮りずらいので裾を折っても?」
「構わんよ...」
解剖職員がカメラを持ってきて鉄の塊を撮った。
「撮れました。保存先は?」
「cyber hunter資料の中の解剖用保存先によろしく」
ライルはガラス越しにゆっくり目を大きく開けた。
「待てよあれ...」
胃の破片がブクブクと膨れ上がっていることにライルは気が付く。
「...!!」
そしてバラバラになった残骸を見ていたメスを持っている男は頭を曲げた。
胃の破片が膨れがっているのに気が付く。
カエルの喉みたいに動き、男はすぐに真横のカメラを持った助手を見た。
「危ない!」
スローモーションのように時間がゆっくりとなった。
男は助手に体当たりをし助手は軽く飛ばされた。
破片は膨れ上がり、紫色の血管をむき出しにする。
他の解剖職員はゆっくり男を見つめ、やがて後ろへ下がった。
パァン!
大きな破裂音と共にぐちゃぐちゃとした物が辺りに散乱した。
臓器のような何か。ガラスにもくっつきライルはゆっくりと目を閉じる。
他のハンターらは驚いて後ろへ下がり、急いで現場の様子を確認する。
「はぁ...大丈夫か?」
「あぁ、あぁ、あぁぁぁ...」
「おい!」
助手は何ともならない声を出していた。
男は急いで体全身を見て、気が付いた。
液体が腕についている。
煙を出してあざのようになっている。
「急いで消毒だ!皆急いでこっちにこい!」
「あつぅいぃぃい!ぎゃあああ!」
ハンターらも中へ入っていく。
消毒液を持ってラッチがゆっくりと傷口に当てる。
「ふーっ、ふーっ、熱い...!」
「大丈夫ですよ、落ち着いて...」
助手は痛みに耐え、息を切らしていた。
解剖室は辺り一面に臓器のような液体が飛び散っている。
テーブルの真ん中にある重々しい鉄の塊は、シューシューと煙を出して唸っていた。
「...?」
アドナスはふと下を向いて落ちている銃弾を手に取った。
すると不思議と眉が歪む。
手触りがギザギザしていた。
アドナスは急いで銃弾の後ろを見た。
すると目を大きく開けて口を半開きにする。
「これは...」
「どうしたアドナス?」
「はぁ...同僚がけがをしているのにそんな事はどうでも良いってか?」
レッカーは呆れるようにアドナスに言った。
だがアドナスは無視をしもう一個銃弾を取る。
そしてまた同じように後ろを見た。
「!!」
「おい、聞いてんのかよ」
レッカーはアドナスの後ろから銃弾を覗き込んだ。
するとレッカーも固まり、頭を傾げた。
「おい...これなんだよ」
八分音符のマーク。
殴り書きされた白い音符は、ラクガキのように雑で、汚い。
だが異質なオーラーを叩きだしていた。
「さぁ...」
八分音符は今にも動きそうだ。
何かのサインのように見えたし
何か新しい挑戦にも見えるものであった。




