[隠蔽]
「なんだって?!」
cyber hunter本部社内。
響き渡った声は皆を驚かせ声が聞こえた方向を皆は見つめている。
聞こえた方向に立っていたのはアドナスだ。
「それは本当なのか...?」
アドナスの前に立っているのはクレイドだ。
クレイドは少し後ろ向きな目をしている。
「...確定事項だ...政府によるな...俺らが何か言おうとしても無駄さ」
「無駄?お前何て言った?!」
アドナスの口調はどんどん激しくなっていく。
行動もだ。
アドナスは思いっきりクレイドの胸倉をつかんだ。
凶器のような鋭い目で睨みつけ、鬼の形相で。
周りの職員はポカーンとして2人を見つめている。
「お前もこのまま政府の犬になるつもりか?!もう一回言ってみろ!」
クレイドは苦しそうな表情をし、思いっきり腕を上げた。
「無駄だって...!」
「言ってるだろがぁ!」
腕を振り下ろし、アドナスにクリーンヒットさせた。
アドナスはよろめき、その場で尻もちをつく。
「ぐ...貴様!」
アドナスは飛びかかろうとしたが周りにいた職員に取り押さえられる。
アドナスは抵抗するが無駄であった。
「俺らは元々...生まれた時から政府の犬だ...そうだろ?当たり前のことをいまさら言ってもしょうがないだろ!少しは法律以外に頭を使え!」
クレイドの言葉にアドナスは黙り込んでしまった。
地獄のような沈黙だけが本部内に残った。
-------------------------------------------------------------------------------------
「ふぁあ...」
ライルは思わずあくびをした。
口に手を当てダルそうに歩道を歩く。
相変わらず街は腐っている。
横にある店は何かと目立つようにネオンを輝かせている。
...が、中身はゴミ以下の物しか売っていない。
あとは売春婦が立ってタバコを吸いながら誘惑へと引きずりこんでいる。
ライルは目を細めて無視するしかなかった。
「ねぇお兄さん...私と今晩をどう...?君のアソコ満足するまで遊ばせてあ・げ・る」
ライルは一瞬女に目を移した。
女は手を自分の胸へと寄せていく。
「ここで遊ばせてあげるわ...たったの10ドルで...」
ライルは軽蔑の目で手を振り払った。
すると女は別人のように固まってしまう。
ライルはただ前へ進んでいった。
「何よ...クソ野郎!童貞のくせにバーカ!死ね!」
後ろで中指を立てているのが安易に予想できる。
だがライルは無視をして前へ行く。
だが進んでいると同時に自分の手を見つめた。
この手であの柔らかい部分を今後触るのだろうか。
誰の?
いつ?
ライルはそう思うと女の事が不思議と頭の中に浮かび上がってきた。
だがすぐ雲のように消えていった。
[今日のビル内騒動について...]
ライルは思わずハッとして大型テレビの方に目を向けた。
ネオンが輝く街に異常な存在感を放つテレビ画面は見る者を釘付けにする。
周りの人々はザワザワとライルの方に集まっていく。
[ついさっき、政府が記者会見を開きました。官房長官のドウェイン氏による言葉をお聞きください]
「!!」
ライルの心臓は撥ねるようになる。
ウェイドはついにバグの存在を公にするのか?
そうしたらいよいよこの世は秩序をなくす...
不安が勝ち、ライルは思わず荒く息をする。
「兄ちゃん大丈夫か?」
周りの人に声を掛けられるもライルは気づかずテレビをじっと見つめる。
[...今回の騒動に関して...]
中年の黒人がテレビ画面に映った。
いかにも"官房長官"という感じの男だ。
服は青くアメリカ模様。
眼鏡をかけているが今回は外している。
ライルの息は更に荒くなっていく。
中年の男は口を開けた。
[これは...]
ライルは唾を飲み込む。
目は大きくなりとてつもなく汗をかく。
周りの人々も目を大きくしている。
だがライルの方が圧倒的に大きさは上であった。
中年の男は少し口を閉じ、時間を置いた。
再度口を開けた。
[愚かなテロリストによる行為です]
ライルは少し口を開けて固まった。
隠蔽された。
安心したかのようにライルは再度後ろを向いた。
周りの人々は変わらず目を大きくしている。
ライルは...もう興味はないようにしている。
[テロリストはアフリカの武装集団であり、ビル内の生存者はいない。全員...殺されてしまった]
ライルはひたすら歩き始めた。
家に向かって一直線で。
[遺族の方たちには...お悔やみ申し上げます...」
(お悔やみを申し上げますか...馬鹿馬鹿しいな。見え見えしい嘘はもうゴミだ)
ライルはぎゅっと拳を握り締めた。
-------------------------------------------------------------------------------------
「馬鹿馬鹿しい!こんな嘘!」
アドナスは怒鳴り散らかした。
勿論テレビに対して。
「俺らは命を張ってるんだぞ...?それをなんて思ってるんだ...!」
周りの職員は全員下を向いている。
クレイドはその様子を細い目で見つめている。
偉そうに腕を組んで。
「なんて...なんて思ってるんだよ...」
全身が震える。
「...クソが!!」
アドナスは思いっきりテレビに対して蹴りをお見舞いした。
テレビは壊れ、中年の男はバグのように荒くなる。
辺りにガラスが散らばり、テレビの音とアドナスの荒い息の音が鳴り響く。
「はぁ...はぁ...」
アドナスの目は完全に怒りの目だ。
「遺族に対して謝れ...人を利用してまで嘘をつくのか...?!クソが!」
アドナスはもう一度蹴りをテレビにお見舞いする。
激しくガラスが飛び散る。
もうテレビの原型はなくなっていた。
クレイドは黙ってその様子を見つめていた。
その目は何か、少しだけ震えているように見えた。
そして手には汗が大量についていた。
-------------------------------------------------------------------------------------
「会見は終わりました...副官房長大臣...」
黒いスーツを身にまとった男が誰かに敬礼をしている。
男...副官房長はゆっくりと立ち上がった。
「そうか...住民は騙されているか...?」
「SNSでは少しだけ疑問の声が上がっていますが...」
福官房長官は男に指を指して大声で言った。
「そいつらを一方的に潰せ!一人残らずだ!」
「はい!!」
男は再度敬礼をして部屋のドアを閉めた。
福官房長官は出て行くのを確認するとゆっくりと椅子に倒れこんだ。
上を見て、深くため息をつきながら。
後ろの窓ガラス越しに見える光に気付かず...
パァン!!
銃声が鳴り響いた。
「どうしました?!」
男は急いでドアをこじ開け、部屋の中へ入りこんだ。
だが、入った瞬間空気は一変した。
原型のない顔ともいえない物を見て。
「ひ...ひぃいい!」
「...急いで連絡をしろ!急げ!」
「はい!」
福官房長官はダランと腕を垂らしていた。
机は血まみれになり白い紙は全部赤く染まっている。
肉片はあちらこちらに散らばり窓ガラスが割れている。
頭は完全に消え去っており、肉片が見える断片図のようになっていた。
銃口は暗闇から現れる。
だが再度消えていった。
銃口には肉片のようなものが巻き付いていて、銃弾も赤く染まっている。
異質な存在感を放つ"ソレ"は、暗闇の中へと消えていった。
カチャカチャとリロード音のような音を立てながら...




