[ラッチの家]
「え...と...」
「この人誰なの??」
ナイリーはライルの方を向く。
「仕事の同僚だよ。後輩だが。前に家で雨宿りさせてもらったんだ。お返しとしてちょっと家に...ってことで。」
「ふーん...名前は?」
ナイリーは軽く近づいて行く。
足をぴょんぴょんとさせてゆっくりと見つめる。
「ラ...ライルです...」
「ライル君?」
「お前の2歳上だぞ、ナイリー」
(さっき同い年って...!!嘘ついたな!!)
ライルは心の中で叫んだ。
ラッチの言葉を聞くとナイリーは顔を少しライルに近づける。
ライルは恥ずかしそうに少し後ろへとのけぞる。
「どうしたの?」
「いや...なんでも...というかそちらこそ...」
ナイリーは少し固まったあと、大きく目を開き言った。
「私とほぼ同い年じゃないくらい顔つきが大人っぽくて少し見ちゃっただけよ。男の子ってこういうの気にするの?」
「いや...別に...」
ライルは不思議に思う。
こんな初対面で馴れ馴れしくしてくるのは初めてだ。
フレンドリーで明るい性格がライルの心を揺さぶる。
...変な意味じゃなく。
「でも同い年の子久しぶりだし、会えてうれしいわ。よろしく」
ナイリーは手を差し出した。
ライルは少し戸惑ったが構わず笑顔で手を出した。
二人の手がぎゅっと握られる。
「こちらこそ...よろしく」
ラッチは影でずっと笑うのを耐えているかのように震えている。
にやけが隠せず、笑いそうになっては口に手を当てての繰り返しだ。
「それじゃ中入ってくれ。お返しということでな」
「あ...お邪魔します...」
ライルの後ろでギシギシと、ドアが閉まる音が鳴った。
完全に閉まると光は途絶え、別世界に入ったかのように暗くなった。
風の音も空気の感じも。
すべて消え去った。
ライルは靴に手を入れてゆっくりと丁寧に靴を脱ぐ。
そして靴の向きをそろえ、目の前の角を曲がりリビングへ入って行った。
(ラッチの家か...どんな感じだろう...)
少しワクワクした気持ちで家の中へとどんどん入っていく。
玄関の横には5人の写真が何枚もある。
だがどれもつい最近貼り付けたものであり、ドアの真横にまだ貼ってない写真が何枚もある。
ライルは遠目で見ながら前へと進んでいく。
前へ進むと同時にどこか不思議な感じもした。
写真以外何もない、ガラガラだ。失礼だが。
「ここ曲がって」
ライルは曲がった。
すると急に立ち止まってしまった。
「ここさ」
ライルの目の前には直接布団がしいてあった。
布団の上には机やゴミ袋。横には電線コード。
エアコンにはコードをつないでなく、まずコード自体は部屋を見回したら1つしかない。
併用しているのか?
奥の方には冷蔵庫と棚がある。真ん中に洗面台。
配置がチグハグなように見えるが仕方がないものだろう。
シールを見るとほぼすべて別の会社が作っているものだ。
半額セールなどのシールも貼りっぱなし。
壁にはガムテープがビッシリと。
そしてゴミ袋が部屋のあちらこちらにある。
ライルは茫然としてしまった。
思わずラッチに尋ねる。
「お...お母さんお父さんは?」
「いないんだな。残念ながら」
もう一度あたりを見渡す。
「座る場所な...ちょっと待ってくれ」
ラッチは机を上って天井にある椅子を取り出した。
「隠しとかないとめんどくさいからね~...しゃーなしよ」
ナイリーは奥の方で洗濯物を畳んでいる。
ラッチは椅子を取り出すとライルに座るように促す。
「座んな。俺布団があるから」
「あ...ありがとう。弟さんは?」
「寝てるよ。あいつ寝るのが好きなんだ。起こせるけど?起こす?」
「いや!大丈夫だよ。かわいそうだし」
奥の部屋からナイリーが出てきた。
「夕飯にしましょお兄ちゃん。ライルさんは何かアレルギーとか?」
「え!いいの...?!」
ライルは思わずラッチの方を向く。
「食べようぜ。せっかく来てくれたんだし」
ライルの目は輝いている。
さっきまでの感情は消え、楽しみという感情が出てきた。
「それじゃあ...お願いします!!」
「ふふっ」
ナイリーは笑い、ご機嫌そうに洗面台で料理を始めた。
ラッチは冷蔵庫から水を取り出し、コップに注いでライルに差し出す。
「いつもありがとうな。お前はいい奴だよ」
ライルは何か感情に浸ってしまいついため語で話してしまった。
思わず口に手を当ててしまったがライルは笑っている。
「いいよ別にため語でも~はっはっは!あ~はっはっは!!」
ライルも笑いながらコップに口をつけた。
ふとナイリーの方に目が飛んだ。
(...)
何も感じずただナイリーの方を見ている。
ライルは学校に行ってないので女子に慣れていない。
だからか少しドキドキしている。その姿に。
年下をそういう風にみる人の事をロリコンというが、この件はしょうがないだろう。
ナイリーの後ろ姿...ライルは少し下の方へ目を動かす。
そうするとラッチが視線の中に見えた。
ニヤニヤしている。
「あ」
「お前まじかーはええって~!」
「いや...その!違う!!」
ライルは慌てて手を前に出して振る。
ラッチは面白おかしく言い続ける。
「やっぱなー...男にモテんだなあいつ。意外だわ」
わざとか大きい声で言う。
ナイリーは少し動揺して言い返した。
「うるさいわね...!」
少し顔を赤らめた。
包丁で野菜切るスピードが少し早くなったような気がする。
「面白い面白い...」
ライルは口を少し閉じて再度水を口にした。
「...俺からも今後よろしくな」
ラッチが言った。
ライルは目を大きく開けて微笑む。
そして、とても嬉しそうに返事をした。
「あぁ。よろしくな」
後ろで火を使う音が聞こえる。
「今後は...大分今までとは違う状況になってくる。ウェイドも言ってたけど俺らの事を本気で殺しに来るぞ。今日も本当はバグ出現の情報があった。昨日もだ。しかも昨日は2件...どちらも弱かったが世間的に話題になっている」
「え...まぁ想定内ではあったけど...」
目の前に手が出てきた。
料理だ。
ナイリーは笑いながら言った。
「ライルさんこれよ...私特性オムライス」
「特製?!美味しそうだね!ありがとう!」
ナイリーはご機嫌でラッチの分も置いた。
「お兄ちゃんはいつも通りのやつ。グリンピース抜いてあるわよ」
「流石。お前は天才だ。胸も尻も」
「何言ってんのよ!!」
ラッチは大げさに笑い転げた。
ナイリーも自分の分を取り、皆で食べ始めた。
ライルはスプーンを取り、一口口の中へと放り込んだ。
その瞬間目が大きくなる。
「ふいいい!!」
ナイリーは笑顔で答える。
「そう?!ありがとう!!」
ラッチも笑顔で頬張る。
楽しそうな声が外まで響いた。
外は既に真っ暗でもう6時を回っている。
そんな真っ暗な中に一つの光があった。
光は消えたり現れたりする。
「アハハハハ!!」
マンションからはまだ声が聞こえる。
そして光は、暗闇の中に消えていった。
まるで生き物のように、動いて...




