[公表]
路地裏にて...
「るーるるーん。るるるるーん」
小柄な男が軽やかにステップを刻んでいる。
「そ...そこの君ぃ...」
隣からはよぼよぼの声が聞こえるが、無視をして進んでいく。
「嫌なところに家を建てたよなぁ...まったく...帰り道がここじゃあ...」
暗い道はどこか湿った空気が漂う。
夜中の匂いというのか。
「最悪だよ」
歩くたびグシャ!と音がなる。
泥を踏んでいるからだ。
ピト...
何か音がする。
「ん?」
男は不思議に思い後ろを振り返る。
音は消えた。
「変なの」
また歩き始める。
ピト....
「ん?!」
男は眉をひそめてじっと固まった。
何かいる。
男は勇気をもって後ろを振り返った。
「...??」
何も姿は見えない。
不思議に思いながらも前を向いて歩き出そうとした。
「なんだ...!」
バン!
いきなり壁に叩きつけられた。
背中から全身に痛みが走る。
「う...!」
男は目の前にいる"何か"に怯えることしかできなかった。
その"何か"は全身を男の体に巻き付ける。
喉からは機械のノイズ音...がグーグーと鳴る。
"何か"はチャンスを待つように男を見つめている。
目は一つで、とても恐ろしい目だ。
「な...なんだよ...!」
「ん!んんん!」
男が口を開けた瞬間、"何か"は男の体内へと口から入っていく。
どんどん。
「んんんんんん!んんん!」
男の顔は青く染まっていく...
「んんんんんんんんんんんん!」
-エピソード16・公表-
ライルはネオン輝く街中を一人、歩いている。
やはり腐っている。BPがウロチョロと、暴動と、暴力。
「移民反対!移民反対!移民は我々の文化を尊重せず!自分たち...他国の文化を叩きつけてくる!」
「そうだそうだ!」
「時には殺害まで!こんな事ありえないぞ政府~!」
「そうだそうだ!」
ライルは険しい顔でそんな暴動を見ている。
いずれBPが来て、ここにいる10人くらいは殺される。
そんな未来がライルにはもうすでに見えていた。
時刻は11:24分。
真っ暗な路地裏が、ライルを孤独にさせている。
「そ...そこのお兄ちゃん...待ってくれ...」
壁から声がするのか...そう思うくらい人間とは思えない声。
そんなのがずっと続く。
「金を...金をぉ...」
欲望の末になり果てた人間を、救う義務はない。
ライルは心から思っている。
無視してまた広い通りに出た。
さっきとは反対に明るい光が、ライルを照らす。
[市民の邪魔になるので、深夜の集団集まりはやめてください!直ちに集会を終わらせなさい!]
「うるせぇ!そんなこと言って、どうせ無視しているだけだ!」
「そうだ!そうだ!」
パァン!
パァン!パァン!
銃声とそれに合わせて聞こえる悲鳴。
見慣れた光景だ。
気にすることはない。
「馬鹿だな...」
ライルはボソッと誰にも聞こえない声で独り言を言っていた。
[新発売、バーチャリアリティーversion6。新たな機能に加え...]
女の挑発的なネオンの銅像。
ビル全面がテレビになっている所。
空中を飛び舞う飛行機や宇宙船。
うるさい騒音に耳が痛くなるほどだ。
[この美肌が...この地球を包み込む。新アプリ、ハダスベ。この商品は来月に...]
突然巨大テレビの音声が途切れる。
あちこちの物全部。
暴動を起こしていた者も、BPも全員テレビにくぎ付けになっている。
[こちらホワイトハウスより、お知らせがあったため、CMを切らさせてもらい...]
ライルは不審な顔をしてテレビを見上げる。
[昨今の行方不明事件についてのお話を、捜査本部長のウェイド・レオンが、今します]
...バグの事だろう。
近日に公表するといっていたがこんな速いとは。
[それでは...お願いします]
そういうとナレーターの女はゆっくりと画面外へ出て行った。
その後、後ろからのっそりとウェイドが出てくる。
ウェイドはゆっくりと腰を掛けて、口を開いた。
[ここ最近。主にネオシティーで行方不明事件が多発している。死体はそれぞれ自然のせいで死んだとは思えない傷口や跡が全てにあります]
[この非常事態については、私たちの方で対応を取らさせていただいています]
奥の方から一人の声が聞こえた。
「対応ってなんだ対応って!馬鹿野郎!」
そんな男の元に数名のBPが近寄って行った。
パァン!
静かな時間に銃声が鳴り響く。
ウェイドは話途中だ。
[なるべくこれ以上の犠牲者...いや行方不明者を出さないために、私たちは全力を出すつもりでいます]
[質問などにはご返答しないつもりでいます。とにかく、周りの安全に気を付けて、路地裏にはなるべく行かないこと...そして小さな子供から目を離さないこと...]
[これらを意識して、生活してください。以上です]
プツン。
テレビは切れた。
ライルは少し安心したというか、ホッとした。
このままバグが本当に公表されていたら、パニックになって街中暴動まみれになると思っていたからだ。
今の世の中は情報社会。簡単に情報が入るものだから。
皆は唖然としている。
少し静かな時間が生まれ、BPも困惑しているのか固まっている。
ライルは今のうちと思い、颯爽と街中を走った...
---------------------------------------------------------------------------------
翌日...
レイン社。
バーチャルリアリティーのアップデート及びメンテナンス、修正などを手掛けている。
コントラント社の子会社でもある。
その自由な職場は、良くも悪くも有名だ。
「ふぅ...」
男がトイレに座っている。
「腹の痛みが治まったよ...カース」
「そうか。お前はデブだからいつも腹が痛くなるんだよ」
男はのっそりと立ち上がり、ドアを力強く開ける。
「殺されたいのか...?」
カースという男は笑いながら手振った。
「冗談冗談~!さっさと戻るぞ。俺も早く出勤したいんだ...」
「そうだったな」
バン!
トイレのドアが思いっきり開いた。
二人はびっくりしてドアを見る。
「ん?!」
ドアの前には小柄な男が立っていた。
男は悲しそうな表情を見せながら二人を見つめている。
二人はびっくりした勢いで壁に張り付いている。
「なんだお前は...?」
奥にいる男は嫌な予感がし、ドアの向こう側をのぞき込んだ。
...血だ。
地面には、小柄な男の靴跡で血が残っている。
バン!
二人は唖然とし、男は強くドアを閉めた。
「な...なんだよ...俺らはゲイじゃないぜ...?ハハ...?」
男は冷たい目で腕を伸ばした。
腕は、一人の喉に当たる。
「ちょいちょい...」
グン!
腕は機械の長い腕へ瞬時に変わった。
長い腕が一人の喉を抑え込む。
「う!」
「お...おい!」
ギシギシと力が走る。
冷たい機会の腕は、生き物のようにぬめぬめとしている。
「やめろ!」
「う...!おぇ!ううう!」
藻掻く。
足をバタバタとさせ、壁に足が当たり音が響き渡る。
顔がどんどんと青くなり、目も上へ向いていく。
「やめろおお!」
バタン...
1人は勢いよく倒れこんだ。
男はもう一人を見つめる。
「ひ...!」
さっきと同じように腕を伸ばす。
しかし、それと同時に口も大きく開ける。
「や...やめ...」
ガシ!
無慈悲にも、腕は伸び続ける。
「うううう!」
小柄な男は口を大きく開けている。
口の中からは一つの光が見える。
光はだんだんと大きくなって、こちらへと近づいてきていた!
「な...なにを...!」
ドン!
男が口を開けた瞬間、口からもの凄い勢いでヘビのようなものが飛び出した。
ヘビはどんどんと男の体の中へ入っていく。
「んんんん!あああああ!くぁあああああああああああ!」
バタン...
小柄な男はふにゃふにゃになって倒れこみ、襲われた男は冷たい機会のように立ち上がる。
血まみれの口を舐めながら、トイレの外へ歩き出した...
[侵入者!侵入者!]
[ただちに逃げてください!]
ロビーは血まみれで皆が倒れこんでいる。
頭がない人
胴体を貫かれている人...
[侵入者!侵入者!]
[急いで逃げてください!急いで!]
男の足音が、社内に響き渡った...




