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96話 シーファン5



ダンジョンに静けさが戻る。




目の前には6mはある巨大なカニが、見るも無残な姿で絶命していた。


クウガは僕に勝利の親指を立てた後、怒りの形相で真っすぐにダンジョンの隅に座り込んでいたバラディスの元へと向かう。



屈んで腕を掴むと言う。



「・・・・・・・何故逃げた?」


「・・・・・・・俺の盾が奴の酸で溶け始めていた。そのまま次の振り下ろしをくらったら盾を破壊される。だから撤退したんだ。・・・・・・・!!!・・・・・ッ!」



クウガが掴んだ腕に力を入れる。



「盾がダメになっても、お前の実力なら全員を撤退させる隙を作る事は出来たはずだ。・・・・・・・タンクはなぁ。皆の命を預かる大事なポジションだ。そのお前がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!真っ先に逃げてどうすんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



ダンジョン内にクウガの声が響き渡った。



バラディスは叱咤され、うなだれる。




「ここまでなのか?俺達は。」


隣にいる【フェニックス】のリーダー、ミュランが小さい声で呟いた。




・・・・・・・・・・。




僕はミュランの方を向くと言う。


「へぇ~。この世界の『A』ランクってどんなもんかと思ったけど、何か大した事ないな。」


「・・・・・・・何だと?」


「だってそうじゃん?こんな所でめっちゃ苦戦しているし、まぁ、ここまで来るのに楽できたからいいけどね。」



ミュランは僕の襟首を掴む。


「ふざけるな。・・・・・・・俺達は正真正銘の『A』ランクで『S』ランクを目指すパーティだ。今回は皆調子が悪かっただけだ!・・・・・・・なぁ!皆!!!」



「当り前だ!」


「ちょっと調子が悪かっただけよ!」


「貴方達なんかすぐに追いつくわよ!」



ミュランはバラディスの方へと近寄ると、クウガをどかして手を差し伸べる。



「俺達のやるべき事が決まった。・・・・・・・いくぞ。バラディス。」



うなだれていたバラディスは顔をあげると、晴れやかなミュランの顔を見て、ニヤリと笑って手を掴む。



「・・・・・・・だな。」



ミュランは僕の方を見ると、指を指して言う。


「今回のクエストはお前達に譲ろう。だが!・・・・・・・ソラだったな!貴様のパーティの上を必ず行ってやる!・・・・・・・行くぞ!!!」


「「「「「「 オオ!!! 」」」」」」




・・・・・・・おそらく【星空】は、近い内に冒険者の頂に届くだろう。そんなパーティの実力を見れて良かった。・・・・・・・俺達はまだまだだったようだ。ならば、もっと実力をつければいいだけの事。・・・・・・・【星空】。お前達を目標として。




ミュラン達が撤退する後姿を僕は見ていた。



スピカが言う。


「まったく。・・・・・・・良かったの?あんな悪者演じて。」


「ハハッ。悪者?何それ。僕は思った事を言っただけだよ。」


「はいはい。そうね。」



スピカも皆も笑顔で呆れている。



僕は三階層に続く道をカメラと一緒に見ながら言う。


「さって!これで二階層も終わりです!【フェニックス】のおかげで、僕達は全然接敵しないでここまで来ました。これからやっと僕達のダンジョン探索です!・・・・・・・行っくど~!!!」


「「「「「 オ~♪♪♪ 」」」」」



皆で跳ねた。




<コメント>


■嬉しそうw


■楽しそうw


■S級ダンジョンなのになw


■でも、ダンジョンに入ってからモンスターが全然いなかったな。


■先に来ていた【フェニックス】が倒したんだろう。


■まぁ、ここからだな。


■よし!行けソラ!


■ソラさん!あまりカッコイイ事しないで!!!


■私にはエイセイがいるの!何度も言うけど惑わせないで!!!


■さり気なくエイセイが上半身裸のクウガに着替え渡してるwww



僕達は三階層へと降りた。






☆☆☆






「しっかし、このダンジョンってどうなってんだろ?」



僕は歩きながら広いダンジョンを見て呟く。



「確かに不思議だよね。僕達が案内されたこのダンジョンは、島の外れの洞窟だったから、この方角だと海の下にいるんじゃないかな?」


隣のエイセイが答える。



そうなのだ。



入ったら、ずっと海の方角へ下って行ったので、間違いなく僕達は海の下にいる。



不思議だ。



「・・・・・・・おっ。索敵しました!あれは・・・・・・カメ?いや・・・・・・・〇メラ?」



広い洞窟の先には道を塞ぐ様に大きなカメが二体。



これまたデカい。


7m位はあるだろうか。



その一体が僕達を見ると、そのまま甲羅の中へと両手両足をひっこめる。


そしてそのまま勢いよく回転すると上空へと浮かび上がっていった。




<コメント>


■きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


■モンスターきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


■カメだ!カメ!!!


■でっけぇ!!!


■回転して宙に浮かんでるぞw


■www


■あれ、どうみても〇メラじゃんw


■まさかそのまま飛んでこないよな?w




宙に浮いていたカメは、そのまま一気に僕達へと突っ込んで来た。




ゴンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!




クウガが前に出て、大楯で止めると、そのまま高速で回転していたカメは、ブーメランの様に元の場所へと戻る。



嬉しそうにクウガが叫ぶ。


「うほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!いいぞ!いい突っ込みだ!!!なら今度は俺の番・・・・・・・ゴフッ!」



アカリは、クウガの脇腹にパンチを入れると歩き出す。



クウガは悶絶している。



どんな攻撃も平然としているのに、アカリのパンチに悶絶って。・・・・・・・どんだけの威力だよ。



僕はアカリを怒らせないと誓った。



死んじゃうからね。



アカリを見る。



腰まである黒く美しい髪はポニーテールの様に一本に束ねている。前は赤と黒の着物だったが、今は赤い刺繍の施した真っ白い着物を着ている。


この異世界に来て、衣装を変えたみたいだ。


聞くと、戦闘後に汚れが付いていないか確認できるように。


汚れが付いた分だけ、自分が未熟だと分かるからだそうだ。



アカリがカメに近づく。



二体のカメは、甲羅に入ると、先程と同じ様に回転しながら上空へと浮かぶ。




ゴォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!




二体が同時に左右から飛んできた。



7mもある巨体が。



最初に一体目のモンスターがあたる時。




アカリが消える。




瞬間。




一筋の光が。




チンッ。




高速で回転しているカメは、そのまま真っ二つに分かれながら、もの凄いスピードでダンジョンの壁へと衝突した。



二体とも。



白く長い一本の刀。



その柄を握っていた右手を離す。



そして振り返ると笑顔で言う。



「はい終わり。」




<コメント>


■はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???


■何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ???


■ひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


■チンッ。って鳴った!チンッ。って!!!


■は?


■いやいやいやいやw


■ちょっと待て。ちょっと待てw


■柄を握ってから全然見えんかったぞw


■巨大カメ・・・・・・・いや、〇メラ真っ二つに斬りやがったw


■しかも同時に二体もw


■どう見てもクウガが戦ったカニより硬いだろw


■意味が分からんw




カメラを覗くと、あまりにも簡単に倒したアカリが信じられないみたいだ。



僕はカメラを向けてアカリに聞く。


「アカリさん!視聴者さんが驚いています!あんな硬そうなカメをどうやって斬ったんですか?」


「ん?あぁ。えっとね・・・・・・・・こうやって、こう斬ったんです。」



腰にある長刀を抜くと、ゆっくりと右上段から左下段へ。そのまま左下段から右上段へと刀を振る。



そしてアカリは、カメラに向かって続ける。


「後、私に斬れないものはないから。どんなに硬かろうが柔らかろうが・・・・・・・絶対にね。」




<コメント>


■はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


■かっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


■アカリちゃんカッコイイ!!!


■あんな風に斬ったんだ。すげぇな!全然見えんかったぞ!


■ずっと止まって、光の線が見えた位だもんなw


■すげぇな。もう完全に達人の域じゃんw


■いや、達人でもアカリちゃんには勝てねぇよw


■斬れない物はないって言ったぞw


■流石【星空】最強アタッカーでごわす!!!




めちゃくちゃ盛り上がっている。


やっぱりライブ動画も再生動画も、探索での戦闘シーンが一番観られている。



この異世界では、旅もいいけど、出来るだけ新しい探索をしていこう。



僕達は冒険者の前に、探索者チームだから・・・・・・・そして僕はクリエイターなんでね!



僕はカメの死体に近づくと、アカリに言って甲羅を持ち運べるように斬ってもらい、そのままリュックサックへと入れた。




「~♪~♪~♪」



僕は親友達の後ろで、鼻歌を歌いながらカメラ片手について行く。




<コメント>


■鼻歌歌ってるw


■遠足じゃねぇんだよw


■ここS級ダンジョン!分かってんのか?


■本当にソラってマイペースだよなw


■俺と変わらない一般人なのに、普通にダンジョン楽しんでるw


■神経マヒしてんじゃね?w


■俺だったらお金貰っても絶対に行きたくないね。


■分かるw




暫く歩くと、先の方の暗闇に何か蠢いている。



「・・・・・・・おっ。接敵ですね。・・・・・・・何だあれ?ヒル?・・・・・・・ちっとキモいですね。」



2m位のヌメヌメとした生き物がダンジョンの通路や壁にびっしりと張り付いている。



結構グロテスクだ。




ポンッ。



ポンッ。



ポンッ。



ドンッ!



ドドンッ!!



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドンッッッッッッッッッッ!!!!!




音が鳴ったと思ったら、無数に火花を散らして炸裂する。


光と炎と煙で先のダンジョンが何も見えない。




ポンッ。



ポンッ。



ポンッ。



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドンッッッッッッッッッッ!!!!!




また音が鳴り、爆発する。


あまりの破壊力に、ダンジョンの壁さえも削れて、崩れていくのが僅かに見える。


そして炎と煙でその光景も見えなくなった。



僕は煙だらけになった先をカメラで映す。


暫くしてゆっくりと煙が晴れていく。



そこに見えるのは、壁や通路にいたであろう沢山のヒルの様なモンスターが、バラバラに真っ黒こげになって地面に散らばっていた。



目の前にいた親友達がいつの間にか横に避難している。



僕はゆっくりと隣にカメラを移す。



そこにいたのは、二丁のグレネードランチャーを両手で持ったエイセイがいた。


銃口には煙が出ている。



エイセイは僕の方を向くと笑顔で言う。


「グレネードの炸裂弾はやっぱり気持ちがいいね!」




<コメント>


■ビックリした!!!


■オイオイオイオイ!!!


■何してくれちゃってんだよ!!!


■相変わらずいきなりだな!!!


■またぶっ放しやがったw


■マジで容赦ないなw


■モンスターの実力関係ないしw


■グレネードってw


■エイセイ!カッコイィィィィィィィィィィィィィ!!!


■エイセイ!素敵ィィィィィィィィィィィィィィィ!!!


■流石戦闘狂www




僕は流石に素材を回収する気にはなれず、地面に転がっている、真っ黒に焦げたモンスターを避けながら素通りしていく。


その後も見た事ないデカいカエルやヤドカリなどが襲ってきたが、嬉しそうにアカリが対処する。



そして三階層が終わり、四階層へと降りていった。



降りる途中でもコメントはひっきりなしに流れている。




<コメント>


■何かさ、俺達【星空】観てて、感覚がマヒしてね?


■分かる。だって、ここS級ダンジョンだよな?


■さっきの【フェニックス】だっけか?あのパーティがAランクだろ?


■めちゃくちゃ苦戦して撤退したのに、【星空】は無双だもんなw


■俺は上位探索者だけど、【星空】を基準にしない方がいいぞ。あのチームは別格だ。


■皆はこっちの世界で『レベル0』だけど、それ以上のレベルがないからな。


■まぁ、ソラは『レベル1』だけどw




僕はカメラを見ながら先へと進むと、四階層へと着いた。


確か、ローレットが言っていたけど、ここが最下層みたいだ。



カメラを前方へと向ける。



最下層は大きな空洞になっていた。


そして目の前には湖がある。


湖に近づいて、屈んでその水を少しだけ舐めると、しょっぱい。



「うん。やっぱり海水だ。ここは海底の更に下って事かな?」



呟いていると、湖の中央が盛り上がり、そこから巨大なモンスターが現れる。



角が二本生えていて、体はとても長くて大きい。体を覆っている青い鱗が光に反射して輝いている。



僕は立ち上がると、そのモンスターに言う。






「ソイレン。何でここにいるの?」






龍のソイレンだった。





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