82話 アルフリーン3
何だこいつは。
ドンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!
どんな者も潰し、斬り刻んできた我が鋭利な爪を簡単に片手で受け止める。
「・・・・・・・終いか?」
「貴様!」
一旦距離をとり、龍の周りに直径5m以上の大きな岩が複数現れる。
「くらえぃ!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!
上空から無数の岩がクウガを襲う。
円形の広場に岩が降り注ぎ、土煙と破片が舞った。
何人いようが、どんなにスピードがあろうが、これだとひとたまりもない。
ゆっくりと煙が晴れる。
そこには何事もなかったかの様に、クウガが同じ場所に佇んでいた。
「何だと?」
クレソンは思わず呟く。
あれだけの数をくらって、まったくの無傷。
あり得ない。
クウガは浮かんでいるクレソンに向かって言う。
「・・・・・・・終いか?」
「ぬぅ!まだまだだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
クレソンは叫ぶと、全身が緑色に光る。
すると、上空に数百メートルの巨大な岩が出現した。その岩の周りは業火の如く赤く染まっている。
「まさか一匹のヒューマンに使うとは思わなんだ・・・・・・・だが!これで終わりだ!消えろ!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
その巨大な岩がクウガめがけて落ちてくる。
あまりにも巨大すぎて逃げ道がない。
しかし、クウガはそれを見てもまったく動じず、その場から動く気配がなかった。
ゆっくりとクウガは足を広げて、右拳を後ろに引き、構える。
その巨大な岩が広場に落ちた瞬間。
バンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!
弾けた。
粉々に弾けた岩が雨の様に降り注ぐ。
祭壇から見ていた僕達は、スピカがシールドを張っているので岩が当たる事はない。
岩を砕いたクウガにカメラをズームする。
クウガは振り切った拳を戻すと、龍を見る。
龍は驚いた顔でクウガを見下ろしていた。
・・・・・・・俺はギガンと戦った時、力に負けて、奴の攻撃を受けて地に伏した。あの時思ってしまった。武器を使えばと。だが、それじゃ意味がない。意味がないんだ。いつ何時も、どんな敵の攻撃も受けられる様にならないといけない。皆を・・・・・・・ソラを守る為に。この一年。それだけに費やした。
「・・・・・・・これで終いの様だな。ならこっちの番だな。」
クウガは屈んで力を溜める。
・・・・・・・全ての力を拳に集めろ。そして体を硬く・・・・・もっと・・・・・・もっと・・・・・・・もっとっっっっっっっ!!!!!
ドンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!
上空へと踏み出したクウガは、弾丸の様に真っすぐに龍へと向かい、そのまま拳を叩きつけた。
龍の胸へと叩きつけた拳は、クウガごと突き抜けて、体に大きな穴を空ける。
「ゴハッッッッッッ!!!」
クレソンは緑の血を吐く。
そしてそのまま広場へと落ちた。
信じられなかった。
我の全ての攻撃が効かず、今までどんな攻撃にも傷一つ付かなかった体に穴を空けられたのだ。
「屈服させたという事でいいですか?」
いつの間にか、倒れている我の前に、最初に会話をした弱そうなヒューマンが立っていた。
「あぁ・・・・・・・我の負けだ。」
「エイセイ。」
隣にいるもう一人の男が我の前に来て手をかざすと、体が緑色に輝き、あっという間に穴が空いた体が元通りになった。
茫然としている我に、弱そうなヒューマンが笑顔で話しかける。
「これで元通りっすよね?」
「フフフフフ・・・・・・・ハ~ハッハッハッ!見事!見事だヒューマンよ!まさか我が何も出来ずに負けるとはな!お主、名は?」
「僕はソラ。一応この冒険者パーティ【星空】のリーダーをやらせてもらってます。貴方を倒したのはクウガっていいます。」
カメラと一緒にクウガを探すと、いつの間にか祭壇の方にいて、ハルバードと大楯を回収していた。
気づいたクウガは、武器を拾った後、笑顔で親指を立てている。
<コメント>
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■ひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■かっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■マジか!!!
■ワンパン!ワンパンで倒したぞ!!!
■しかも!分けわからんすげぇ攻撃受けてピンピンしてるぞ!!!
■硬すぎるにもほどがあるだろw
■もう〇ーパーマンじゃんw
■もうクウガに何しても攻撃効かねぇんじゃねぇか?w
■俺は探索者だけど、クウガさんに追いつける気がしない。
■分かる。俺も探索者でタンクしてるけど、絶対無理。
■探索者があきらめてるw
■さりげなく、武器を拾いに行っているのが滑稽だなw
■武器使えよwww
相変わらずクウガに対するコメントは、色んな意味で盛り上がる。
「・・・・・・・そうか。ソラよ。我の負けだ。約束通りこの指輪を返そう。」
そう言うと、口から指輪を出して僕へと渡す。
「フゥ。山に籠っていると分からない事も多くなるな。あの男の強さは尋常ではないぞ。我の体に穴を空けるなど。まさかここまで強いヒューマンがこの世にいるとは思わなかったわ。」
「と~ぜんでしょ!」
「お前じゃないがな。」
「ハイ。すみません。」
<コメント>
■www
■www
■またツッコまれたw
■勉強しろよw
■お前わざとやってないか?
■お前一般人w
■お前調子に乗りすぎw
「クレソン。久しぶりだな。」
いつの間にか隣には、女性の人間の姿になったソイレンがいた。
「ソイレン・・・・・・・貴様黙ってたな?この者達が強者だという事を。」
「フフッ。それはお前が彼らを見破れなかった落ち度。まぁ私もそうなんだけどね。・・・・・・・さっ、ソラ。帰りましょう。ご飯をご馳走してくれるんでしょ?」
僕は指輪をポケットにしまって皆に声をかけようとすると、クレソンが口を挟む。
「待て。指輪の約束は果したが、敗れて我の命を救ってくれた事に対するお礼をまだしていない。・・・・・・・この鱗は我の鱗だ。これを売れば結構な金額になろう。あとその笛は我をいつでも呼べる笛だ。ここ数百年ずっと籠っ・・・・・・・いや、何か困った時に力を貸すのもいいと思ってな。」
そう言うと、僕に緑色の鱗と笛を渡す。
「鱗は嬉しいですけど、笛はいい・・・・・・・・。」
「呼べ。」
「はい。」
僕は貰った物をリュックサックに入れると、皆に向かって言う。
「よっし!これでリュカとニナの依頼は達成だ!帰るど~!!!」
「「「「「 オ~♪♪♪ 」」」」」
全員でジャンプした。
何故かつられてソイレンもジャンプしていた。
☆☆☆
「はい。指輪。これで合ってる?」
僕は屈んでニナに指輪を渡す。
ニナは指輪を貰うと、リュカと顔を見合わせて、満面の笑顔で二人は僕に抱き付いた。
「ソラ兄ちゃん!ありがとう!ありがとう!うわ~ん!!!」
二人は暫く涙を流しながら僕に抱き付いていた。
「ソラ様。お帰りなさい。・・・・・・・良かったですね。ローワン様。」
その光景を見ていたテルミが笑顔でローワンに言う。
僕は二人が泣き止むのを待って立ち上がると、ローワンは僕に向かって頭を下げた。
「ソラ殿。そして皆様。この度は本当に・・・・・・・本当にありがとう。あの指輪はワシとばあさんの大切な思い出。ニナを助けられたから、しょうがないとあきらめていたのじゃが・・・・・・テルミ様の言う通りじゃ。お礼として何か差し上げたいのじゃが、ワシももう引退した身。あるのはこの位なのじゃが・・・・・・・。」
そう言うと、沢山一万ギルの入った袋を僕に渡そうとする。
「ハハッ。ローワンさん。報酬は要らないっすよ!もう前金でリュカとニナに貰ってるから。なっ!リュカ、ニナ!」
「「 お兄ちゃん・・・・・・・うん!! 」」
<コメント>
■ソラ。お前何なん。
■ソラ。お前最高!
■ソラ。また言うけど、お前主人公かよ!
■やばい。また涙出てきた。
■ソラさん!感動しました!
■100円で受けたクエスト。お前すげぇなw
■ギャグが面白くないけど、たまにこういう事やるから嫌いになれないんだよなぁw
■これでギャグがおもろかったら最高なんだけどなw
コメントが滝の様に流れている。
あれ?
何かさり気なくディスられてないか?
僕達は、テルミを引き取って、笑顔で三人と別れた。
☆☆☆
「かぁ~気持ちぇ~♪」
貸切の露天風呂に浸かった僕は、気持ち良すぎて思わず声を出した。
夜空には、大きな月と満天の星空が見える。
ローワンさんが流石に報酬100ギルだけだと納得できず、せめてと、二泊三日の無料温泉宿泊券を人数分貰った。
流石水の都『リレイン』。
まさか異世界に来て温泉に入れるとは思ってもみなかった。
「フッフッフ。さぁ~女子の皆様!入って来ますよぉ~♪」
そう言うと、僕はカメラを入口に向ける。
すると、腰にタオルを巻いた親友達が入ってきた。
はちきれんばかりの筋肉をした大柄な男性。
クウガさん。
貴方、ボディービルダーやプロレスラー、はたまたラグビーやっているって言っても、普通に通じますよ?
彫刻の様な美しい体をした爽やかな男性。
エイセイさん。
貴方、完璧すぎ。顔も、体も、身長も。モデルや俳優。適職ですね。
「おぉ!結構広い露天風呂だな!」
「こっちにも温泉があるなんて驚きだね。」
「「 あ~最高だ~♪ 」」
そう言いながら僕の隣に並んで浸かる二人。
僕はコメントを見る。
<コメント>
■いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
■ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
■もうだめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■クウガ様の体凄すぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■エイセイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!
■エイセイはあたしの!あたしのなのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■鼻血が!鼻血がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■ソラさん!録画するから!録画するからもうちょっと!!!
■ソラさん!出来るだけ引っ張って!!!
■ソラさん!ありがとう!!!
■ソラさん!当分これで暫く大丈夫よ!!!
凄い事になってた。
隣の露天風呂では楽しそうな声が聞こえる。
「アカリ~♪ 相変わらず~♪ 胸が大きくていいなぁ~♪」
「なっ、なんだ!ココセ。お前も結構あるだろう。髪も綺麗な銀色で羨ましいぞ。」
「スピカ様♪ 本当にお肌が真っ白ですね! 私達でもこんなに綺麗な肌のエルフはいませんよ。」
「なっ!ふっ、ふんっ!テルミもとても可愛いわよ。大人になったらとても美人になるわね。」
僕はコメントを見る。
<コメント>
■かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■会話が!会話がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■エグすぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■目をつぶると浮かんでくるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■ソラ!暫く俺は妄想モードに入るぞ!!!
■ソラ!俺も妄想モードに突入だ!!!
■ソラ!もっと壁に近づけろ!!!
■ソラ!これで暫く大丈夫だ!!!
凄い事になってた。
「それでは、せっかく貰ったから明日までゆっくり温泉を楽しもう!かんぺ~♪」
「「「「「「「「 かんぺ~♪♪♪ 」」」」」」」」
温泉に浸かった後は、浴衣を着て夕食だ。
ここの旅館の夕食は、日本食に結構似ていてとても美味しい。
皆お酒を飲みながら夕食を楽しんでいる。
相変わらず、テルミがお酒を飲もうとしてスピカに怒られていた。
僕は両隣を見る。
そこには夢中でお酒とご飯を食べている、ソイレンとクレソンがいた。
「ソイレンはまぁいいとして、なんでクレソンが居るのさ。」
緑色の髪をした美しい女性が嬉しそうにご飯を頬張りながら言う。
「モグモグモグ・・・・・・・なんだ、そんなつまらん事を聞くな。笛を渡したろう。我もソイレンと同じ。お前に協力をしようと思ったのだ。これからもよろしくな。」
「さいですか。・・・・・・・ところでテルミ。次はテルミの故郷でいいんだよね。」
お酒を取り上げられた不満顔のテルミは、僕の方を向いて笑顔で言う。
「はい!次に行く所は、『アルフリーン』の王都になります!そこに私の家もあります!」
「そっか。テルミ。良かったな。」
「はい!」
これでテルミも家族に会える。テルミとの旅はこれで終わり。ちょっと寂しいけど、良かった。良かった。
「ぐっ!」
「んぐっ!」
嬉しそうに食べていたソイレンとクレソンが、突然変な声を出して下を向く。
「ん?どったの?二人とも。」
二人は、顔を上げると、キョロキョロしだし、僕の方を見た。
すると、二人はいきなり僕の両腕にくっつく。
「ソラの温もり~♪ うれし~♪」
「フフフ。やっぱり同じヒューマンだと、全然違うわね♪ ささ、ソラ。私が食べさせてあげる。はいあ~んして。」
「ちょっと、グ・・・・・・・クレソン!私も!!!」
「はい。ソラあ~ん♪」
突然人が変わったかのような態度に戸惑う僕。
周りの女子四人からは殺気が充満している。
口に料理をどんどん入れられながら、数日前に知り合ったのに、何故か昔からよく知っている二人の様な気がした。
翌日二人に聞いたら、飲み過ぎたのか、途中から思い出せないと言われた。
☆☆☆
「イザベラ。」
ベットに横たわっている老婆の横に、静かに座り、髪を撫でる。
老衰で、今にも息をひきとりそうな老婆は、ゆっくりと目を開けてローワンを見る。
「・・・・・・・あら、あなた。どうしたの?」
「いやなに。この間、ニナを助けてくれてありがとのぅ。」
「・・・・・・・当然でしょ?あの子は私達の孫。本当に良かったわ。」
そう言いながら、自分の手を出して、何も付いてない手を見る。
「・・・・・・・あの指輪が最後に役立つなんてね。今の私には何も出来ないけれど、若い時に指輪に溜めた魔力のおかげでニナを助けることが出来た・・・・・・・。」
ローワンは黙って立ち上がると、懐から指輪を取り出す。
イザベラは眠りそうな目を大きく見開いた。
「・・・・・・・あなた。それは?」
ローワンは、そのまま見える様に下がって片膝を付きながら言う。
「イザベラ!」
-------------------数百年前-----------------------
「イザベラ!」
青年は叫ぶと、片膝をついて言う。
「俺は・・・・・・・100年・・・・・・・500年、君を愛する事をここに誓う!」
目の前の女性は、青年から指輪を貰って嬉しそうに薬指に付けると、笑顔で言う。
「バカ。違うでしょ。・・・・・・・一生でしょ。」
「あぁ!!!」
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ローワンは続ける。
「俺は・・・・・・・100年!・・・・・・・500年!君を愛する事をここに誓う!」
そう言うと、立ち上がり、横たわっているイザベラの薬指に指輪を付ける。
イザベラは、その指輪を見た後、涙を流しながら、かすれた小さい声でローワンに言う。
「・・・・・・・バカ。・・・・・・・違うでしょ。・・・・・・・一生でしょ。」
イザベラは言いながらゆっくりと瞳を閉じた。
その顔は、とても満足した安らかな顔だった。
「「 おじいちゃん! 」」
外に出ると、ローワンを待っていたリュカとニナが抱き着く。
二人の頭を優しく撫でる。
「・・・・・・・婆さんはな。天国へ旅立った。・・・・・・・でも、指輪が戻ってとても喜んでいたよ。ありがとのぅ。リュカ。ニナ。」
「「 うあ~ん。うあ~ん。・・・・・・・おばあちゃん!おばあちゃん!! 」」
ローワンは、二人をあやしながら、真っ青な空を見上げる。
遠くの空にキングバードが二匹飛んでいた。
「ソラ殿・・・・・・・ありがとう。・・・・・・・本当にありがとう。」
ローワンは消えゆく鳥を見ながら呟いた。




