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71話 星空担当2


「フフフ~ン♪」



今日は晴天。



駅から降りて、湾外沿いを歩いている僕の頬に、潮風が当たってとても気持ちがいい。


親友達とテルミが、後に続いて歩いている。


気持ちが良くて、思わず鼻歌を歌っている僕にテルミが聞く。



「ソラ様?今日はどこに行くのですか?」


「あれ?言ってなかったっけ。今日は探索者協会の日本ギルドビルに行くんだ。そこに僕達のオフィスがあってね。長旅になるから、そこで色々と準備をするんだよ。」



「う~んと、探索者協会やオフィスと言うのはだな・・・・・。」


アカリが、テルミに丁寧に説明している。



この一ヶ月で、アカリを入れた女性陣はすっかりお姉さん気分だ。


妹が出来たみたいに、嬉しそうによく面倒をみてくれている。


僕の勝手な判断でテルミを連れてきたけど、ありがたい限りだ。



「よ~し!今から皆で日本ギルドビルまで競争だ!負けた人が今日の夕飯おごりで!ココセはハンデでテルミを担いで!・・・・・・・・・・よ~い、ドン!」



「おっしゃ~!」


「いくぜ!」


「ハハハッ!」


「テルミ担いでも~♪ 速さじゃ~♪ 私が一番~♪」


「魔法なら余裕で一番だけど、しょうがないわね!」



皆一斉に駆ける。



あっという間に、遥か先まで行く親友達。



しまった。



すっかり僕だけ一般人なの忘れてた。



当然ビリだった。



ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!






☆☆☆






「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」



ここは日本ギルドビルの70階にあるフードフロア。


全ての店は、壁が大きなガラス張りの窓になっていて、外の海がとてもよく見える。



その一角にあるオシャレな喫茶店で休憩をしている私は、目の前で盛大にため息をついている同僚に言う。


「どうしたの安奈あんな?ため息なんかついて。」



「どうしたも、こうしたもないわよ。今日も変わらず地獄の様な忙しさだから、ため息ついてるの!」


「フフフ。でも憧れてたじゃない。最上階で働きたいって。」



アンナは恨めしそうに、私を見ると言う。


「・・・・・言ったわ。確かに言ったわよ!だってそうでしょ?日本ギルドビルの最上階で働けるなんて、ここで働いている全ての人が憧れてるんだから!スズが私を誘ってくれたのも嬉しかったけど、まさかここまで忙しいとは思わなかったのよぉ。」



半泣きの状態で、テーブルに両肘をついて頭を抱えている同僚。





私の名前は、神代かみしろ すず



日本の・・・・・いや、世界のトップチーム【星空】の専属担当をしている。


この一年で、名実ともに世界一のチームとなった【星空】。


それに合わせる様に、私の仕事がもの凄く多くなり、日本ギルドが私の元にスタッフをよこしてくれた。


丁度その頃、アンナが担当していた探索者達が負傷して引退。


日本ギルドに頼んで、アンナも一緒に引っ張ってもらった。


今では【星空】オフィスに、私を入れた20名のスタッフが働いている。





頭を抱えながらアンナが言う。


「取材だったり、普通の問い合わせだけならいいわよ。でも・・・・・・・毎日、毎日、毎日、毎日、日本政府だけじゃなくて、世界中の国から連絡が来るのよ!しかも皆、大臣だったり、首相だったり、大統領だったり!もうストレスマックスになるに決まってるじゃない!」


「はいはい。そんなに泣き言言わないの。でも、やりがいはあるでしょ?」


「はぁ~。それを言われちゃうとね。・・・・・やるわよ。やればいいんでしょ!もう!」



アンナは元気よく残りのトーストを一気に食べて、野菜ジュースを飲み干す。



「さっ、今日はソラ君達が来る予定だから、早めにオフィスに戻りましょう。彼らの要望に応えるのが、私達の一番の仕事だから。」


「了解しましたぁ~。チーフ~。」



私とアンナは立ち上がると、最上階へと向かった。






☆☆☆






「凄いです!こんなに高い鉄の家。初めてです!」



急速に上がっていく高速エレベーターに乗りながら、テルミが外を眺めて興奮している。



テルミが住んでいる国は、全て木で作られているらしい。


他に行った事のある国でも、ここまでの鉄の家はないと、エレベーターに乗りながら嬉しそうに話している。


魔法は使えるのに、技術はここまで発展していないみたいだ。



僕達は最上階に着くと、そのまま真っすぐ奥まで歩く。



この最上階に、今は僕達を入れた三つのクランやチームしかいない。


前は五つだったが、【星空】が世界一のチームになった事で、日本ギルドの面子があるらしく、一角の小さいスペースだったのが、今では最上階のフロアで半分を占めるほどの広いオフィスとなった。



下の階に移動になった二つのクランには、何かホント、申し訳ございません。



担当もスズさんだけじゃなく、今は20人もいる。自分達の知らない所で、色々な問い合わせが来ているらしく、対応に追われているみたいだ。



何かホント、申し訳ございません。




【星空】オフィスの入口まで来ると、自動ドアが静かに開く。



「まいど~♪」



親友達を引き連れて、笑顔で言う。



「「「「「「「 おはようございます!!! 」」」」」」」



担当の皆さんは、入って来た僕達を見ると、同じ様に笑顔で元気に挨拶をする。


毎回思うのだが、もっと気軽に対応して欲しい。



「ちょっとソラ君!待ってたわよ!ほら!すぐに会議始めるわよ!早くこっち来て!」


僕達を見つけたアンナさんが勢いよく来ると、僕の手を引っ張って奥へと進む。



スズさんの同僚の、いつも元気ハツラツなアンナさん。



アンナさんは美人なんだから、逆にもうちょっとおしとやかな方がいいと思う。



とても広いオシャレな会議室の長テーブルに、僕達とテルミ、スズさんとアンナさんを入れた10名ほどのスタッフが座っている。


他のスタッフさんは、電話対応や他の仕事で忙しそうだ。




「それでは~!『星空会議』を~!開催します!」



「「「「「 ドンドンドン♪♪♪ パフパフパフ♪♪♪ 」」」」」



親友達が変わらずノリノリで声を上げる。


スズさんやアンナさんはそれを黙って見ている。



うん。いつもの光景だ。



「え~。まずは今回特別ゲストがいます!・・・・・テルミ。ここは大丈夫だから帽子取っていいよ。」



テルミは立ち上がると帽子を取って、教えてもらったカタコトの日本語を言いながらお辞儀する。



「あの、テルミといいます。よろしくお願いします。」



「キャ~!この子がテルミちゃんね!可愛い!」


「凄い!本当にエルフなのね!可愛い!」


「ちょっと!もっとよく見せて!可愛い!」


「肌が凄く綺麗!可愛い!」



挨拶をするのと同時に、アンナさんを先頭に、テルミに群がるスタッフ。


テルミをベタベタ触っている。



すると座って見ていたスズさんが両手を叩く。


「ほら皆!気持ちは分かるけど、始めるわよ。アンナも席について。」



アンナさん達は、名残惜しそうにテルミから離れて席についた。



テルミはめちゃめちゃ触られて、髪がボサボサだ。・・・・・可哀そうだがしょうがない。我慢してくれ。



まずは通常通り、今月の収支報告から始まり、来客やその対応状況。僕達やスタッフの近況報告が話し合われた。



「・・・・・・・それでは各国の対応だったり、メディアの対応はいつも通りでいいのね?」


「うん。それは全部スズさん達に任せるよ。」


「分かったわ。」



何か、ここ一年で問い合わせや色んな所からの招待がめっちゃ増えた。


正直そう言うのは面倒くさいので、全てスズさん達に任せている。



フフフフフ。まぁ、世界一のチームになっちまったからしょうがないんだけどな!



親友達がマジで誇らしい。



僕はそのまま本題に話を移す。


「それでこれからなんだけど、一週間後には『異世界』へ探索に出発しようと思ってるんだ。今回は【深層】攻略よりも、もっと長旅になると思うから、その為の準備をお願いしていい?」



当初は一ヶ月前には行く予定だったけど、テルミを保護したからしょうがない。



「そう。とうとう行くのね。ある程度の準備は一ヶ月前に全て終わって倉庫に入っているから、いつでもエイセイ君が転送出来ると思うわ。後は皆の休学届とかそういった事務関連ね。」


「チーフと数人はオフィスで来客対応してて。そういったのは、全部私達でやるわ。」


「そう。ありがとう、アンナ。それじゃよろしくね。」



スズさんを入れたスタッフの皆さんが慌ただしくなる。



基本、僕達は探索以外、何もする事がなくなった。


探索前の準備、報告や事務仕事、ドロップ品の換金などは全てやってくれるからだ。



ホント、いつもお世話になります。



感心しながら、その様子を見ていると、オシャレな会議室の扉が開く。



「チーフ。ソラ君。あの・・・・・お客様がいらっしゃいましたが、どうしましょうか?」


「お客?今日はアポイントは入ってないわよね?」


「はい。でも・・・・・お客様がお客様なので、どうしようかと。」



「やぁ!皆さん。こんにちは。」



スタッフの後ろから現れた、テレビでよく観る男性。


その姿を見て、僕以外、全員一斉に立ち上がる。



現れたのは、日本総理大臣。



神崎一樹だった。



その後ろに荒木さんが付いてくる。



「ハハ。驚かさせてしまったね。・・・・・・・ここいいかな?」



そう言うと、僕の向かい側の席に座る。荒木さんはその後ろで笑顔で立っている。



「・・・・・・・アンナ、すぐにお茶をお願い。」



アンナは頷くと、会議室から出ていった。



僕はその様子を見ながら言う。


「はぁ~。どうしたんですか急に。SPも付いてないで、お一人で来るなんて。しかも荒木さんまで。」


「ハハハッ!SPなど必要ないだろう。ここには世界一の探索者がいるのだ。連れてきたとしても無駄だ。なぁ、荒木君。」


「そうですね。」



神崎総理は、言いながら皆に座る様にジェスチャーをする。



お茶を持ってきたアンナさんを入れた全員が座ったのを見て、僕に言う。



「さて、ソラ君。今日は荒木君から君達が『異世界』へ探索に出ると聞いてね。出かける前に話をしたかったんだよ。」


「話?」



総理は頷くと続ける。



「ソラ君。『異世界』へ行ったら、前と同じ様にライブ配信をするのかな?」


「もちろんです!」



即答した。



「そうか。・・・・・・・今現状、『異世界』は『ファイン帝国』との一部の交流のみで、まだほとんど分かっていない。だからこそ、唯一入国と探索を認められた【星空】には、世界各国が期待をしていてね。これは日本国政府としても重要なんだ。ソラ君。・・・・・・・あちらの世界へ行ったら、出来るだけライブ配信をしてほしい。その配信が、今後の我々の未来に繋がるからね。お願い出来るかな。」



僕は親友達を見てからダンディーな顔をして言う。


「う~ん。お願いされてもなぁ。僕は僕の仕事として、趣味としてやっているので・・・・・・・まぁ、総理に頼まれなくてもやりますよ。フフフフフ。・・・・・だって僕は【クリエイター】ですから!」



「そうか!そうだな!【クリエイター】のソラ君!よろしく頼むよ。我々日本政府も【星空】オフィスを通じて、出来るだけサポートしよう。」


「任せてください。ハ~ハッハッハッ!!!」



「はぁ~。荒木さんの入れ知恵ね。まったく・・・・・【クリエイター】って言われると、すぐ調子に乗るんだから。」



スピカがポツリと呟く。



呆れた様に見ている親友達。



表情を変えず、笑顔で総理の後ろに立っている荒木さん。



今、僕の職業は【クリエイター】だ!



常に新しい映像や感動を視聴者に届けないといけないからな!




総理と荒木さんが帰った後も、準備の打合せが続いた。






☆☆☆






「ねぇ、スズ。まだやっていくの?」



夜。



定時の時間を大分過ぎて、私とアンナのみとなった【星空】オフィス。


他の皆はもう帰宅している。



「うん。もうちょっとだけやったら帰るわ。アンナはもう帰って・・・・・ね?」


「そう。あまり無理しないでね?今度落ち着いたらまた飲みに行こうよ。・・・・・それじゃ、お先に~♪」


「うん。お疲れ様。」



アンナを見送り、一人また仕事に向き直る。





「ふぅ。・・・・・とりあえず、ある程度はこれで大丈夫でしょ。さて、帰ろうかな。」



私は後片付けした後に、【星空】オフィスを後にした。




探索者協会日本ギルドビルを出ると、外はすっかり真夜中だ。


時計を見ると22時を過ぎている。



「もうこの時間だとスーパーで食材を買うのは無理ね。コンビニでも寄って行こうかしら。」


一人呟きながら、私は夜空を見る。



今日は星が見えていて、とても綺麗だ。


夜風が顔に当たってとても気持ちがいい。



私は夜空を見ながら思う。




・・・・・ねぇ、ソラ君。


知ってるの?


貴方は今、世界で一番影響力があるのを。


貴方の行動一つ一つを世界が注視しているのよ。




・・・・・ねぇ、ソラ君。


知ってるの?


探索者協会が認めた『世界一』というのは、どんなに凄い事か。


貴方が日本に所属しているだけで、今日本は、世界一の軍事大国になっているのよ。


世界各国が、日本に遠慮している。


あの、アメリカや中国でさえも。




・・・・・ねぇ、ソラ君。


知ってるの?


一年前。


貴方が死にそうになった時、貴方の親友達は皆ショックを受けて、暫くふさぎ込んでいたのを。


もちろん、貴方の前ではそんな姿は一切見せなかったけど。




・・・・・ねぇ、ソラ君。


知ってるの?


親友達は、護衛として一人はソラ君の近くにいるけど、他の皆はずっとダンジョンに潜って鍛えていたのよ。


もう二度と、貴方を傷つけさせない為に。


もう二度と、あんな目に合わせない為に。


この一年。


ずっと、ずっと、ずっと鍛えているのよ。


自分のプライベートなんて考えずにね。




・・・・・ソラ君。


ソラ君を除くメンバー全員が、前代未聞の最強の『レベル0』。


そして貴方は一般人の『レベル1』。


『レベル0』を引っ張っているリーダーの普通の子。






「スズ!」



輝く夜空を見て思っていると、少し離れた所から私を呼ぶ声が聞こえる。


大柄で、茶色い短髪の男性が、優しい笑顔でこちらへ近づいてくる。



「・・・・・・クウ君。いつも迎えにこなくていいのに。」


「何言ってるんだ!スズは綺麗だから夜の一人歩きは危ないからな!あっ、でも来週から探索だから、明るい内に帰ってくれよ?心配だからさ!」



「フフフ。ありがとう。・・・・・お腹すいちゃった。ファミレスに寄っていい?」


「おう!俺も小腹が減ったから一緒に食うぞ!」



彼の腕を取ると、一緒に湾岸沿いを歩き出す。






私の名前は、神代かみしろ すず



【星空】の管理、運営を一手に任されている。



このチームが活動している間だけでなく、大事な人が無事に帰ってこれる様に・・・・・ずっと、ずっと支えていきたい。






そう強く思った。



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