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66話 大学生活



「フワァ~。」



いつも寝不足な僕は、大きな欠伸をする。



「ソラ。ちゃんと講義聞いてるの?・・・・・ほら。欠伸しないの!」


右隣にいる、超絶美少女の赤い髪の女性が僕の頬っぺたを嬉しそうにつまむ。



「ソラ~♪ 何か大学って新鮮だね~♪」


左隣にいる、これまためちゃくちゃ可愛い銀の髪をした女性が楽しそうに言う。



ここは大学。



今は講義中だ。



人気の講義の様で、百人以上を収容できる階段教室は、全て聴講生で埋まっていた。



「ぎのゔばちょっとねぶぞぐでね。」


嬉しそうに僕の頬っぺたをつまんでいるスピカに答える。



「ねぇねぇ~♪ 階段状の教室って凄いね~♪」


僕の肩に手を置いて、顔を近づけながら楽しそうに喋るココセ。



「ぞ、ぞうだね。」


二人に答えながら、僕は周りを見渡す。



百人以上講義を受けている聴講生達のほとんどが、僕達を見ていた。



女性達は興味津々に。


そして男どもは殺気を放ちながら羨ましそうに見ている。



「ハァ~。」


僕はつままれているスピカの手を掴んで離すと、ため息をついた。





僕の名前は、武藤空。


大学二年生の19歳だ。



両隣には、今年入学した二人の親友が嬉しそうに僕にちょっかいを出してくる。


誰が見ても美しくて可愛い女性二人に挟まれた僕は、まさに両手に華状態。



そう。



あれから僕は大学生になって一年ちょっと経った。



そしてチーム【星空】は、あの『名もなき島』事件後、世界中で有名になった。


そのメンバーの二人が今年入学して、僕の両隣りにいるのだ。


そりゃ注目を浴びるよ。


そして【星空】メンバー全員が入学した事で、今は入学困難な程の人気の大学となっている。




♪~♪~♪~♪~




講義終了の音楽が鳴る。



教授が終了の挨拶をするのと同時に、講義を受けていた聴講生が一斉に僕達を囲む。



「ねぇ!スピカちゃん!まだこの大学よく分からないよね!案内しようか?」


「ちょっ!待てよ!俺が案内するよ!どうかな?」


「ココセちゃん。カフェで少しお茶しない?まだ流れが分からないと思うから教えるよ。」


「ほらほら男どもはどいたどいた!ねぇスピカさん。ココセさん。少し私達とお話ししないかな。」



僕はその圧力に押されて耐えきれなくなり、ゆっくりと這いつくばりながらその輪から逃げ出した。



「・・・・・フゥゥゥゥゥゥ。ある程度は予想してたけど、こりゃ、やべぇな。」



人混みから抜け出した僕は、立ち上がるとその光景に思わず口ずさむ。



「ハッ。そりゃそうだろ。何てったって今を時めくスピカちゃんとココセちゃんだぜ。」


「そうですなぁ。」


「やっぱり可愛いですのぉ。」



三人が嬉しそうに僕に近づく。



「・・・・・何だ、サトルか。あとミノル氏にマサキ氏も。」


「だから毎回何だはないだろ何だは。」



高校で仲が良かったこの三人。



サッカー部のキャプテンだった、陽キャのサトル。


昼友でいてゲーム友達だった、陰キャ仲間のミノル氏とマサキ氏。


何故かこの三人も、僕と同じ大学に進学していた。



ミノル氏が僕の肩に手を置いて言う。


「まぁ、大変ですなぁ。お主も。」



この一年間。



親友達がいない時は、大体この三人とつるんでいる。



動画には今も顔出しはしていないけど、もう注意深く変装はしていないので、どうしてもバレてしまう。前にどこかで撮影された僕の写真があっという間に拡散されてしまった。それからというもの、僕が【星空】のリーダーで、『空ちゃんねる』の配信者だと大学で分かってしまい、今と同じ様に男女問わず群がってきたけど、親友達とこの腐れ縁の三人が間に入って壁になってくれている。


ほんと助かっている。


やっぱり持つべきものは友達だよね。



「ごめんなさい。声を掛けてくれて嬉しいけど、皆さんとつるむ気は全くないの。」


「・・・・・あっち行って。」



二人が強烈な返答をすると、騒がしかった講義室が一瞬で静まり返った。



ハハハ。相変わらず容赦ないな。



まぁ正直、親友達がどんな事をしようが心配はしていない。


知らない所で恨みを買ったとしても関係ないからだ。


仮に突然後ろから包丁で刺されようが、拳銃で撃たれようが、爆破されようが、現代の兵器では親友達の体には傷一つ付けることは出来ない。



ハッキリ言って、この世界では無敵である。



まぁ、僕はさっき言った事の一つでもされたら死ぬけどな!




「あれ!ソラの友達の先輩!いつもソラを気にかけてくれて、ありがとうございます。」


スピカが僕の方へと来て友達に挨拶をする。



「あ~♪ 先輩方~♪ 私も~♪ ここに入学しました~♪ よろしくお願いします~♪」


ココセが笑顔で友達に挨拶する。



「おっおう!よろしくな!分からない事があったら、いつでも聞いていいからな。」


「あっ。こちらもよっ、よろしくですな。」


「はははっ!問題ないですな!ソラ氏は同志ですから!いつでも我々が守るから安心して下され!」



鼻を伸ばして答える三人。



・・・・・・・親友達は、僕の友達だと普通に対応するのね。



基準が分からんわ。



もう僕達は大人だから、もう少し他の学生とも同じ様に接して欲しいものである。






☆☆☆






「いっぱい買ったね~♪」


「そうね。まぁ、冷蔵庫に食材がないよりは、常に何かしらあったほうがいいから問題ないわ。」



講義が終わり、腐れ縁の友人三人とは別れて、スピカとココセの二人と一緒に家へと帰宅中だ。


電車を降りて、近くのスーパーで数日分の食材を買った後、沢山の食材の入ったビニール袋を両手に持ちながら海辺の道路を歩いている。



海を見ると夕日に照らされて、とても綺麗だ。



潮風も気持ちがいい。



二人が同じ大学に入って少し経ったが、大学内で六人全員が揃った事はなかった。前に、いない時は何をしているのか聞いたことがあるけど、「ちょっとね。」とか言って、いつもはぐらかされる。まぁプライベートの事だ。詮索するのもあれだから、それ以上は聞かない事にしている。僕もゲームの発売日には、一人休んでゲーム三昧しているしな!



「ふぅ。・・・・・おっし。やっと着いたな。」



二人は探索者。こんな食材の入ったビニール袋なんて全然重くないんだろうけど、一般人の僕は結構くるものがある。だが女性に持たせるのは、この小っちゃいプライドが許せない。


少し息をきらせながら、目の前のタワーマンションを見上げる。


とても大きく、超高層マンションだ。


海が見える所に建てられているこのマンションは、とても豪華で、セキュリティが非常に高く、入居者以外が勝手に入る事はまず出来ない。


有名人や芸能の人も住んでいると聞いている。



僕が高校を卒業して、一人暮らしをはじめる事を【星空】専属担当のスズさんに相談した所、このマンションを紹介してくれた。



最初に見た時は、こんな高級マンションにはとてもじゃないが住めないと断ろうとしたんだけど、上位5位以内のクランやチームは、全て探索者協会持ちでタダなのだ。それ以下のクランやチームは、順位に応じて補助金の割合が変わるみたい。



いや~太っ腹だね!



なので、遠慮なくこの高級タワーマンションに一人暮らしをはじめたってわけさ!



「さっ。夕飯の準備をしないといけないから早く入りましょ。」


「そうだね~♪ 入ろ入ろ~♪」




・・・・・・・親友達も一人暮らしをはじめて、全員が同じマンションなんだよね。



僕は、何故かカギが開いている自分の家の扉を開ける。




「おう!ソラ!お帰り!」


そこには、広いリビングのソファーで当たり前の様にくつろいでいるクウガが、テレビを見ながら片手を上げて僕を出迎える。




・・・・・・・あれ?鍵、かけ忘れたかな?




一緒に帰って来た二人は、僕から食材の入った袋を取ると、当たり前の様に6着ある中の自分のエプロンを身につけて、キッチンへと行き、夕食の準備を始める。



「今日は大学来なかったけど、どったの?」


「ん?まぁ、ちょっと野暮用でな。」


「そっか。」



僕はショルダーバックを降ろして、部屋着に着替えると二人に声を掛ける。



「スピカ。ココセ。手伝おうか?」


「おう!俺も手伝うぞ!」


「いいわ。二人ともゆっくりしてて。」


「今日は~♪ 私とスピカで作るからいいよ~♪」



親友達が自然に。当たり前の様に夕食を作り始めている。



そう。



僕が一人暮らしを始めてからずっとだ。



・・・・・・・自分の家で作ればいいのに。とは絶対に言えなかった。




すると、勢いよく鍵がかかっていたはずの玄関の扉が開く。



「ただいま~♪ あ~疲れた!」



アカリがやって来た。




・・・・・・・ただいまじゃないよね?ただいまじゃ。ここ僕の家だよ?あれ?鍵かけたよな?




アカリは、これまた当たり前の様にリビングに入ってくると、もう一つのソファーに寝転がった。


美しい白く長い足が見える。



・・・・・・・アカリさん?はしたないですよ?綺麗な太ももが見えますよ?・・・・・もうちょっとでおパンツが・・・・・・・。



壁に掛けられてある大型テレビには、今流行のドラマが流れている。


エイセイ主演のドラマだ。



それを寝ながら観ていたアカリが思い出した様に言う。


「あっ!そうそう!エイセイから連絡があってね。仕事が終わったからもうすぐここに帰るって!」




・・・・・・・うん?それは自分の家に帰るって事だよね???






「「「「「「 いただきま~す!♪♪♪ 」」」」」」



「・・・・・プハァ!やっぱりビールはうんめぇ~!」


「だな!」


「ハハハ。最初の一口目は美味しいよね。」


「分かる~。」


「お風呂上がりの~♪ ビールは~♪ 美味いよね~♪」


「何でこんな苦い飲み物が美味しいの?私はワインの方がいいわ。」



ある程度料理を作った後は、皆で順番に僕の家のお風呂に入ってから夕食だ。


大きなリビングテーブルには美味しそうな料理とお酒が置かれて、全員で飲み食いをする。


ゆっくり夕食を楽しんだ後は、話をしたり、テレビや映画を観たりして、最後は歯磨きしてから帰っていく。



洗面所を見ると、色違いの6本の歯ブラシが並べられている。



「はぁ~。」


一人になった僕はため息をつく。



時計を見ると夜の0時。



これが毎日の大学生活の一日だ。




そして、ここからが僕の時間。


編集作業やカメラのメンテ。それからゲームやアニメ。


とてもじゃないが時間が足りない。


だからここ一年は、寝不足の日の方が多いような気がする。


親友達は、あわよくば泊まろうとするから、それは何とか死守している。


たまに、女性陣が一人で枕をもって入ってくる時があるから困ったもんだ。


男として全力で阻止するけどな!・・・・・・・理性が壊れるのでやめて下さい。




僕は、編集作業を終えて、とりためたアニメを少し観てから、ベットにダイブする。



時計を見ると夜中の3時だ。



あれ?



これ、高校時代より自分の時間・・・・・・・なくね?



おかしい。



なぜだ?



念願の一人暮らしだ。



楽しい。



確かに楽しいよ?



でも、全っ然時間が取れていない。



くそ。・・・・・くそ。・・・・・・・くちょ!くちょ!くちょ!!くちょ!!!



一人暮らしでゲーム三昧が出来ると思ったのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!何故だ!何故なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!




頭を抱えて転がっていると、天井からいつもの様に半透明の女の子。



『幽霊さん』が二人やってくる。



さっきまで一緒にアニメを観ていた『幽霊さん』だ。



嬉しそうに、もんどりうってうつ伏せになっている僕の背中を二人で抱きしめている。



僕は背中に気配を感じながら言う。




「はぁ・・・・・・・・・【エリア】。・・・・・【フェイ】。おやすみ。」




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