60話 探索者会合
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
翌朝。
盛大に僕は朝一からため息をついた。
・・・・・もうね。言うのも疲れたよ。・・・・・・・遠征から三日間しか、引きこもれてないのよ!!!
流石にストレスマックスだ!
親友達との遊びは一巡した。
もう大丈夫。もう大丈夫だ!
引きこもるぞ!・・・・・ずっと引きこもってやる!チクショウめ!
僕は勢いよくゲーミングPCの電源を入れた。
ピンポ~ン♪
「失礼いたします。」
「「「「「 こんにちは~♪♪♪ 」」」」」
「あら~!スズさんじゃない!久しぶりね!みんなもいるのね!ソラ?もちろんいるわよ!ちょっと待ってね。ソラ~!スズさんと友達が来てるわよ!早く来なさ~い!」
・・・・・・・もう好きにしてください。
☆☆☆
僕とクウガが睨み合っている。
僕がクウガの手元にあるトランプの一枚を引き抜いた。
「・・・・・はい!クウガの負けぇぇぇぇぇぇぇぇ!よっわ!めっちゃよっわ!」
「何だとぉぉぉぉぉぉぉ!ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
クウガはジョーカーだけになったトランプを宙に投げて、頭を抱えている。
ババ抜きでここまで盛り上がれるのは僕達【星空】位のものだろう。
「もう一回ぃぃぃぃぃぃぃ!もう一回だ!皆!!!」
「トランプもいいけどさ!人数分携帯ゲーム持ってきたんだ!通信ゲームやろうぜ!」
エイセイが嬉しそうに、ゲームを取り出す。
ここは空の上。
アカリ兼【星空】のプライベートジェット機に、今は親友達とスズさんが乗っている。
突然僕の家に、皆を引き連れて現れたスズさん。
話によると、今回だけは『探索者会合』に参加しないといけないらしい。
年に一回開催される『探索者会合』。
世界中にいる探索者の中で、毎年世界上位クラスのクランやチーム。個人が呼ばれて、情報共有をする場だ。
日本でも、ランク1位の【未知の旅人】を筆頭に、5位の僕達までは毎年呼ばれていたけど、正直めんどくさいので参加しなかったのだ。・・・・・まぁ5位の僕達が行かなくても、他のクランが皆参加していたみたいだから、怒られる事はなかったけどね。しかし、今回だけは探索者協会から名指しで呼ばれてしまった。それを断ると、担当のスズさんにとても迷惑がかかると知っているので、今回は参加する事にした。飛行機はファーストクラスを用意してくれたみたいだけど、それならいつも使っている僕達だけのプライベートジェット機の方が気が楽だ。そんなこんなで、『探索者会合』に向かっている最中だった。
ニコニコしながらスズさんが、皆と遊んでいる僕の隣に座って話す。
「ソラ君。皆。今回の『探索者会合』の開催地は、フランスのパリよ。着いたら、最上級のホテルを予約したから、ゆっくり休んでから行きましょう。」
「「「「「「 は~い♪ 」」」」」」
スズさんは、完全に修学旅行の生徒達を引率している先生の様だった。
☆☆☆
フランスの首都パリ。
そのパリの外れにある宮殿の様な建物。
そこには続々と世界各国の旗を付けた黒塗りの車が入って行く。
とても広いエントランスには、大勢の取材陣が車から出てくる探索者に取材している。
「凄いっすね。」
日本の取材クルーの一人が、その光景を見て呟く。
同じ様に隣でチーフがニヤリとしながら答える。
「お前は初めてだもんな。探索者協会が世界上位の探索者を一堂に集めるんだ。そりゃ、注目度は高いに決まるさ。」
「・・・・・おい!桜井じゃないか!久しぶりだな!」
「おぉ!ポールじゃないか!」
日本クルーのチーフ、桜井と、フランスクルーのチーフ、ポールが笑顔で握手をする。
挨拶を終えると、桜井は周りを見てポールに言う。
「・・・・・しかし、今年は取材陣の数が凄いな。今までで一番多くないか?」
「フッ。それはそうさ。何と言っても、今年は今まで参加しなかった者達が来るという情報だ。ネタとしては最高だろう。・・・・・・おっ!噂をすれば来たぞ!」
ポールは仲間に指示を出して、カメラを向ける。
桜井も日本クルーに指示を出す。
一斉にフラッシュを浴びながら、歩いてくる男達。
『レベル0』。
探索者最高レベル。
この世界にたった四人しかいない内の三人がゆっくりと談笑しながら歩いていた。
「凄いな。入口で会ったのか?『レベル0』が並んで歩いているぞ。」
ポールが思わず呟く。
桜井はその三人を見る。
写真でしか見た事がない『レベル0』の姿。
大柄な体。サングラスをかけて、葉巻をくわえながら堂々と歩く男。アメリカが誇る『レベル0』、ワイアット。
スラっとした体形で、長髪。スーツを着て悠々と歩く男。イギリスが誇る『レベル0』、オスカー。
金髪で青い目をした私服姿の男。背中にロングソードを携えている。フランスが誇る『レベル0』、アクセル。
三人が笑いながら会場へと入って行く姿を、世界中の取材陣がカメラを向けて追いかけている。
その姿を見ながら桜井はポールに言う。
「まさか『レベル0』が揃うとはな。初めてじゃないか?」
「そうだな。前に誰か一人が参加する時はあったが、三人全員が揃ったのは初めてだ。・・・・・おそらく、あのチームに興味があったんじゃないか?」
「あのチーム?」
ポールがエントランスに指をさす。
桜井がその方へと見る。
周りがざわついていた。
歓声も上がる。
そこから現れたのは、今最も話題の六人組チーム。
【星空】だった。
☆☆☆
『探索者会合』は、まずは会長の挨拶から始まり、探索者協会の今年の活動予定や報告が発表される。
その後は立食パーティで、世界中の上位探索者が情報共有の場としてコミュニケーションを深めた。
壁にもたれかけながらワインを飲んでいるオスカーが言う。
「ワイアット。嬉しそうだな。」
ボトルごと豪快に飲んでいるワイアットはニヤリと笑いながら答える。
「まぁな。・・・・・あれが【星空】か。」
広い会場の中で、上位探索者に囲まれている者達。
【深層】を攻略し、あそこが異世界だったという新事実を発見したチーム。
そしてリーダーを除く、全てのメンバーが『レベル7』。更に、世界最高の魔法使いと言われているあの女が『レベル0』へとなった。
「面白い。・・・・・面白いな。ちょっと挨拶でもしてくるか。」
「フッ。ほどほどにな。」
ワイアットは、飲み終えたボトルをテーブルに置くと、囲まれているメンバーの周りの探索者にはじき出されて、一人黙々とテーブルに置かれている料理を食べている【星空】のリーダーの方へと歩いて行った。
食べているリーダーの前まで来ると話しかける。
「おい。喋れるか?」
食べた手を止めてワイアットの方を見る【星空】のリーダーは、隣にいる女性に何か喋りかけた。
その女性が前に出てお辞儀をする。
「私は、探索者協会日本ギルドの職員で、【星空】を担当しているスズと言います。彼は英語を喋れませんので、私が通訳を致します。・・・・・わざわざ、こちらまで来るなんて、どうされたのですか?アメリカを代表する『レベル0』のワイアット様。」
「フッ。なに、大した用事ではないさ。今話題の【星空】とはどんなチームかと思ってな。あの人混みに入るのは面倒だから、リーダーに挨拶しようと思っただけだ。」
そう言うと、ワイアットは【星空】のリーダーに向かって右手を差し出す。
スズが彼に何かを言うと、笑顔でワイアットの前に来る。
・・・・・・・この青年が【星空】のリーダーだと?
ワイアットの身長は2m。
とても大柄でいて、上位探索者が見れば、オーラもとてつもなく凄い。
対して目の前の男は、街中で、どこにでもいる青年としか見えなかった。
この男は『レベル1』だと聞いている。
握手をして・・・・・ほんの少し。
ほんの少しだけ力を入れれば、簡単に手は潰れるだろう。
ワイアットは、人混みにいる他のメンバーを見る。
たしかヒーラーもいたはずだ。
潰してもすぐに治せる・・・・・・もし文句を言ってきたら、俺が緑色のポーションを使って治せばいい。
ニヤリと笑う。
【星空】のリーダーは笑顔で、差し出された右手を掴んで握手した。
「初めまして!ソラって言います!」
「・・・・・・・あっ、あぁ。・・・・・・・俺はワイアットだ。」
「ほぇ~!貴方があの『レベル0』のワイアットさん!すっげぇ!本物だ!サインください!!!」
ワイアットはソラにサインをすると、そのまま元の場所へと戻って行く。
ワインを飲んでいるオスカーの所まで戻ると、スタッフからワインボトルを奪い、豪快に飲み始めた。
「ワイアット。お前が何もしないなんて珍しいな。てっきり、【星空】のリーダーに何かいたずらをしに行ったのかと思ったぞ。」
ワイアットは一気に飲んだワインをテーブルに置いて、右手を見る。
「・・・・・潰そうと思ったさ。・・・・・潰そうとな。」
潰そうと思った。
一般人レベルの『レベル1』の手など、ちょっと力を入れればすぐに潰せた。
でも出来なかった。
握手した瞬間。
体全身が拒絶した。
潰すなと。
力を入れるなと。
手を離した後、滝の様にでる汗。
初めての経験だった。
自分の手を見ると、まだ震えている。
・・・・・・・何だ?何があったんだ?
ワイアットは、無邪気にテーブルにある料理を夢中に食べているソラを見る。
「・・・・・・・あいつは何なんだ?」
隣にいるオスカーは、【星空】のリーダーを睨んでいるワイアットを見て小首を傾げると、また優雅にワインを飲み始めた。
☆☆☆
「いゃ~!色んな探索者がいるんだな!」
「だな!」
「そうだね。」
「聞いててあまり面白くなかったけどね。」
「つまんなかった~♪」
「スズさんの顔をたてたんだからいいんじゃない?」
『探索者会合』が終わって、僕達はスズさんと一緒にホテルへと向かっていた。
途中、探索者協会の会長に捕まって、長い話を聞かされたのはきつかったけど、『レベル0』の三人と話せたのでオッケー!何と向こうから僕に会いに来てくれたのだ。皆いい人達で良かった。三人にはしっかりとサインを貰って僕はウキウキだ。
「さて、これで会合も終わりよ。いつでも帰ることが出来るけどどうする?」
スズさんが歩きながら僕に聞く。
「いやいやいやいや。俺達、初めてフランスに来たんだよ?いっぱい観光しなくちゃもったいないじゃん!でもその前に、スピカん家行ってからだけどね!」
「そうね。お父さんはどうでもいいけど、おじいちゃんとおばあちゃんはこっちにいるから、私も久しぶりに会いたいかも。・・・・・それなら今日はホテルじゃなくて、皆で家に泊まってく?」
「マジで?よし!決まり~♪」
「ちょっ!ちょっとソラ君?私もいいんですか?初対面ですよ?」
「ハハハ!大丈夫!大丈夫!僕もフランスのスピカん家行くの初めてだし、スピカのおじいちゃんやおばあちゃんと会うのは初めてだから!・・・・・まぁニコルはどうでもいいけど。」
スズはため息をつきながら僕に言う。
「はぁ。ソラ君は本当にメンタルが強いですよね。・・・・・分かりました。それではご一緒させて頂きます。」
「よ~し!みんないくど~♪」
「「「「「「 オ~♪♪♪ 」」」」」」
パリの街中で、僕達ははしゃぎながらスピカの実家へと向かった。
ーーーーーーーーーーーー 三日後 ーーーーーーーーーーーーーーーー
「なぁ。あれ、何かな?」
「ん?ホントだ。何かのコスプレじゃない?」
ハワイ。オアフ島。
そのビーチに二人の男女が立っていた。
海では水着を着て日光浴を楽しんでいたり、サーフィンをして楽しんでいる人達。
陸には、アロハシャツを着た観光客が遊んでいる。
そんな中で、独特な衣装を着ている二人。特に女の方は、鋭利な八重歯が見える美しい女性だった。
あまりにも場違いな格好だった。
男がため息をしながら話す。
「はぁ。まったく。・・・・・魔族部隊隊長の君と五番隊隊長の俺が来る必要があったのか?」
女は肩をすくめると答える。
「失敗が許されないから私達が選ばれたのよ。文句はテオ様にいう事ね。」
「その名前を出されちゃ、やらないわけにはいかんわな。」
そう言うと、男は何かを呟いた。
すると、男の周りの地面が広範囲に真っ黒になると、そこから次々と異形の形をしたモンスターやゾンビ達が現れる。
女が指笛を鳴らす。
少し離れた所から巨大な魔法陣が現れ、そこから5mはあろうか、10体の魔人が現れる。
そして遠くの空が黒い。
その黒い塊がこちらへと向かっていた。
それは黒い塊ではなく、妖鳥に乗って剣を持ち、頭に角の生えた屈強な魔物。・・・・・鬼人だった。
それと一緒に単独で黒い翼で飛んでいるデーモンが数百匹。
「キャァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「なっ!何だあれは!!!」
「怪物だ!!!」
海辺にいる観光客はパニックに陥る。
皆、怪物達から逃げる様に、ホテルへと駆けた。
人々が逃げまどう景色を見ながら、女は笑顔で言う。
「さて。少しは楽しみましょう。」
男が片手を上げて、そのまま振り下ろした。
「・・・・・さぁ。始めようか。」




