23話 エイセイの下層ソロ攻略 3
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
探索者の一人が腕を根元から食いちぎられ、血を大量に流しながらうずくまる。
その横にいた探索者は、首がない状態で地面へと倒れた。
<コメント>
■オイオイオイオイオイ!!!やばくないか???
■あのチームの一人。死んだんじゃね???
■おぇ。・・・・・見ちまった。頭食われるの。
■もう一人も腕なくなってるし。大丈夫なのか???
■このままだと【ライジング】って言ったか。ヤバいぞ!!!
■【星空】があんまりにも簡単に倒してたから麻痺してたわ。実際はマッドウルフって、こんなにも強いのね。
■あのチーム。先に倒すと宣言したからな。ソラ達は何も出来ない。
■あぁ。探索者の暗黙のルールだ。バッティングした時は、先に宣言した方に優先権がある。
■そんなルールあんの???
■どうなるんだ???マジでヤバいぞ!!!
・・・・・・・クソッ!!!どうしてこうなった???
探索者チーム【ライジング】。
仲のいい仲間で立ち上げたこのチームで、俺達はトップチームを目指していた。
危険を冒さずに、地道に力をつけて中層まで来た。
そして中層も長い事潜り、『レベル6』にはまだなってないが、十分下層に行けるだけの実力はついたと思っていた。
下層からの攻略者は一気に少なくなる。
それ程、強く、危険だからだ。
だからこそ目立つし、有名にもなれる。
ならば最初の下層攻略は、【ライジング】を一気に広める為に、『空ちゃんねる』を利用しようと思った。
今、最も話題の動画。
毎週日曜日にライブ配信をしているのは知っていたので、そこにタイミングを合わせた。
なのに・・・・・何なんだ!!!
『空ちゃんねる』を観る限り、マッドウルフは瞬殺。
あまりにも簡単に倒していた。
大したことないと、俺達でも簡単に倒せると正直思っていた。
だからマッドウルフを見た時に、先に宣誓し、横取りしたのだ。
・・・・・なのに・・・・・なのに何だ?・・・・・何なんだ!!!この強さは!!!
ここまでレベルが違うのか?中層と下層は!!!
【ライジング】のリーダーは先頭でマッドウルフの一匹を抑えながら、後ろを見る。
既に最初の剣をマッドウルフにかみ砕かれ、すぐに新しい剣に持ち替えて応戦していた。
・・・・・仲間の一人は、頭を食われて死んでいる。もう一人も腕を噛み千切られ瀕死の状態だ。
俺達四人はまだマッドウルフ三匹に耐えられるが、後ろの二人は厳しいだろう。
二人が倒されたら、挟み撃ちになって終わりだ。
どうする???
まだ『レベル5』の俺達では早かったのだ。
下層を攻略するのは。
俺達が戦うと宣言してしまった。
だからあの二人は決して手を出すことはしないだろう。
それが探索者の暗黙のルールだ。
でも、このままだと俺達は全滅だ!!!
【ライジング】のリーダーは、僕の方へと向くと叫ぶ。
「すみません!!!わがままな事を言うのは重々承知で言わせてください・・・・・どうかお願いです!・・・・・助けてください!!!」
「・・・・・エイセイ。」
僕は隣にいるエイセイに呟く。
エイセイは黙って右腕を真横に伸ばす。
そして小さく口を動かすと、右手に新しい銃が現れた。
『スカウトライフル』だ。
そのまま彼は構えて・・・・・撃つ。
バンッ!バンッ!!バンッ!!!ババンッッ!!!!
【ライジング】のリーダーが抑えていた、マッドウルフの頭が突然吹き飛んだ。
一匹。・・・・・また一匹と。
そして後ろで仲間の二人に襲いかかろうとした二匹も、同時に頭が吹き飛んで胴体だけが残っていた。
一瞬で辺りは静寂に包まれる。
数百メートル先でライフルを構えていたエイセイは、ゆっくりと構えを解いて笑顔を僕に向ける。
「これで良かったかな?」
「うん。完璧だよ。」
<コメント>
■フォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■パネェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!
■はっ?何あれ?当たった瞬間頭が吹き飛んだぞ!!!
■撃ったよ!バンッって撃ったよ!!!
■スカウトライフルだよな?あれ!!!
■ゲームで使った事あるぞwww
■FPSのゲームでなwww
■あのチームがやられそうだったのに、瞬殺かよwww
■『レベル7』はすげぇなwww
■エイセイィィィィィィィィィィィィィィィ!!!
■素敵ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
僕はすぐに岩の上にいた『レア』を見るが・・・・・既にいなかった。
・・・・・逃げたのか?
仲間が倒され、襲ってくると思ったけど、違ったのか?
流石にいなくなるのは想定外だった。
見ると、エイセイも肩をすくめている。
やっぱり同じ事を考えていたらしい。
まぁいないならやる事は一つ。
すぐに僕達は、【ライジング】の元へと向かった。
「結人!しっかりしろ!!!」
八人の内、一人は頭がなく絶命している。そしてもう一人の結人と呼ばれている男は、片腕がなく、仲間が応急処置をしていた。
エイセイはすぐに倒れている結人の元に向かうと、屈んでなくなった腕を触る。
エイセイの手が緑色に光った。
すると、流れていた血が止まり、傷口がみるみる塞がる。
「どう?」
「あぁ。とりあえず、もう大丈夫だよ。あとは血を流したから、早めに病院に行った方がいいね。」
僕がエイセイに問いかけると、笑顔で答える。
「あっ、あの!!!」
僕達が立ち上がると同時に、【ライジング】のリーダーらしき男が話しかける。
「俺達の仲間、結人を救ってくれてありがとう。ただ・・・・・このままだと腕を失ったままだ。ポーションがあるなら、譲ってくれないか?」
たぶん前の僕の動画を観たのだろう。
緑色のポーションを使って助けた所を。
「悪いけど、今ポーションは持ってないよ。隣には、うちの【ヒーラー】がいるからね。」
「そっそうか。いや、変な事を聞いてすまん。ありがとう。」
彼らはお礼を言うと、そのまま上層へと戻って行った。
もちろん、いざという時の為に、全種類のポーションは常に持っている。
しかも、エイセイがその気になれば、簡単に治す事も出来る。
でも、前の様に救助に向かったのではなく、彼らは宣言して進んで勝手に戦闘を始めて、勝手に危険にさらされた。
そんな彼らの為に、貴重なポーションを使うつもりもないし、エイセイの強力なヒールを動画に晒すつもりもない。
「さて!ちょっとしたトラブルがありましたけど、もうすぐ三階層です。先に進みましょう!」
マッドウルフのドロップ品を回収した後、僕達は三階層へと下って行った。
下りながらダンジョンの風景やエイセイを撮影し、コメントをたまにチェックする。
<コメント>
■俺、ヒール使うの初めて見たわ。
■手が緑色に光ってたな。
■確かに。俺も初めて見た。
■探索者だけど、俺も初めて見たわ。
■あんなに簡単に傷口が塞ぐのな。
■ヒールって、滅多にドロップしないポーション並みじゃね?
■それがいつでも使えるってすげぇな。
■『ヒーラー』は、世界中の探索者の中でも特に数が少ない。使えるようになったらマジで引っ張りだこだぞ。
■【星空】は、みんな貴重なスキルを持っていて羨ましいわ。
■そういえば、いつ武器取り出したんだ?
■あぁ、それ俺も気になってた。
■いつの間にか、右手にスカウトライフルあったよな?
■何でだ???
■分からんでごわす!!!
不思議コメントが流れている。
確かに誰も分からないよね。
「それはですね、彼は日本ギルド内にある【星空】の武器庫から転移させたんです。」
<コメント>
■はっ?
■へっ?
■ほっ?
■意味わかんない。
■全然分からない。
■もっと詳しく。
■ソラさん!もうちょと分かりやすくお願いします!
「すみません。省略しすぎましたね。分かりやすく言いますと、彼は『転移魔法』が使えるんです。ただ物限定で、マーキングしないと転移できない魔法ですけどね。だから彼は好きな時に好きなタイミングで自分の武器を呼べるんです。」
<コメント>
■ほぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■そんな魔法あるんだ!!!
■すげぇな!!!
■何でもありだなwww
■魔法は個性が出ると言うが・・・・・フム。勉強になるな。
■うちのメンバーはそんな魔法使えないぞ。
■羨ましい。
■同業者が羨ましがってるwww
■まぁ確かに便利だよな。余分な荷物持っていかなくて済むし。
コメントに答えていると、三階層のちょっとした広い場所に着いた。
本当に下層のルートは多数あるから面白い。
動画も飽きさせることもないから最高!
カメラと一緒に広い場所を見渡すと、ちょっと雰囲気が違った。
太く白い糸が無数に壁に張り巡らされている。
そして中央には5m位はあろうか、上半身は人間の様な姿。下半身は蜘蛛の格好をした大きなモンスター。
その周りを1m程ある蜘蛛達が沢山うごめいていた。
「接敵しましたね。・・・・・あれは『アラクネラ』と子供達です。」
<コメント>
■うひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■きたきたきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■新しいモンスターきたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■蜘蛛じゃん!クモクモ!!!
■すげぇ蜘蛛の数。何匹いるんだよ。
■何かマンガかアニメで見た事ある様なwww
■あれは捕まるとヤバいぞ!!!
■奴の糸は鉄並みに切れないから、捕まったらアウトだ!
■数が多すぎるからな。チームじゃなくて、クランで戦わないと厳しいモンスターだ。
■エイセイ!気を付けて!!!
■エイセイ!危なくなったら逃げるのよ!!!
■エイセイ!貴方の雄姿が早く見たいわ!!!
エイセイが前に出る。
前に出ながら右腕を真横に広げる。
すると、右手に持っていたスカウトライフルが消えていく。
そして代わりに現れたのは、大型の筒の様な武器。
『ランチャー』だ。
それを肩にのせると、引き金を引いた。
ランチャーの先端が眩く光る。
波動砲の様な光の塊が、ビームの様にアラクネラへ当たった瞬間。
目の前が、眩い光に包まれた。
カメラを回しているが、光で何も見えない。
徐々に光がなくなって、見え始める。
カメラで辺りを見渡す。
壁に張り巡らされていた白く太い糸も、1m程ある沢山の蜘蛛達も、そしてアラクネラも・・・・・全てなくなっていた。
残っていたのは、黒く灰になった残滓とドロップアイテムだけだった。




