18話 ココセの下層ソロ攻略 4
「流石ですね。ココセさん。」
「・・・・・余裕。」
グラゲンを倒し、ドロップ品を回収し終えた僕は、三階層の奥へとココセと雑談しながら歩いていた。
カメラを見ると、変わらずコメントが凄い勢いで流れていて盛り上がっている。
今現状のライブ動画視聴者数は、何と45万人と表示されていた。
えっマジで?
スタート時は18万人なのに、どうしてここまで増えたんだ?・・・・・超嬉しいんだが。
思わずニヤリと変な顔をする。
「・・・・・ソラ。にやけてる。」
「あぁすみません!今見たら、ライブ視聴者数が45万人超えていたので、嬉しくてつい。」
<コメント>
■おお!!!すげぇじゃん!!!
■おめ!!!
■おめ!!!
■スタートの時は20万いってなかったよな?
■どんだけ増えたんだよwww
■40万人突破おめでとう!!!
■最終的に50万いきそうだな!!!
■ソラさん!おめでとうございます!!!
■まりもちゃんが観てるって聞いて来ました!!!
■俺も!!!観て良かったです!!!
■私も!!!でもホント面白いですね!!!
■えっ?あのトップVtuberまりもが観てんの???
■マジで???
Vtuber『まりも』って言ったら、日本のランキングで常に十位以内にランクインしているトップVtuberだ。
そんな人も観てくれているのか。
しかも、まりもさんの視聴者がこちらへ流れているみたいだ。
嬉しい限りだな。
これからも気合入れて頑張んなきゃ!
僕は視聴者数が一気に増えたのが嬉しく、ニヤニヤしながらカメラを回し、歩いて行く。
何度か倒したモンスターが現れたが、変わらず瞬殺していくココセ。
そして終着点の【ゲート】がある広い空洞に着いた。
しかし、いつもは【ゲート】以外何もない場所だが、今回は違った。
中央にある【ゲート】の前に横たわっている一匹のモンスター。
全長は6m程はありそう。
巨大なトラの様な格好をして、頭が二つある。
そして凶暴な牙。脚は6本あり、爪は鋭い。
その前には探索者だろうか、見るも無残に食い散らかされている。
「・・・・・酷いな。」
僕は思わず呟く。
<コメント>
■えっ?何あれ???
■足?えっ?胴体???
■うっ。どこかの探索者チームか?
■マジか・・・・・。
■食べられたのか???
■何人いたんだ???
■ソラ!映すな!!!気持ち悪い・・・・・。
■リアルすぎ!!!ライブなんだから気を付けて!!!
「あっ!すみません!配慮に欠けてました!!!」
すぐにカメラをモンスターのアップに切り替える。
<コメント>
■何人いたんだろう。
■可哀そう・・・・・。
■これが死と隣り合わせと言われている探索者なんだな。
■惨い・・・・・。
■おい!あれは『カリュブ』だ!二匹いる下層最強格モンスターの一匹だぞ!!!
■あれは上位の探索者でもヤバい!!!
■トップクランが苦戦する程のモンスターだぞ!!!
■あの二つの口からは炎を吐くぞ!!!
■動きもヤバい位速い!!!
■数十人のクランで戦う相手だ!!!
■えっ。それってヤバくね???
■流石にヤバくないですか???
■ココセちゃん!無理しないでね!!!
■無理しちゃダメだよ!!!
■ダメだと思ったらすぐ逃げるんだよ!!!
カリュブは、広い空洞の入口に立っていた僕達に気づくと、唸り声を上げながら起き上がる。
僕はゆっくりとカメラをカリュブから隣にいるココセに移す。
「ココセさん。どうですか?」
ココセはカリュブを見ながら呟く。
「・・・・・少しだけ・・・・・・・本気出す。」
そう言うと、カリュブに向かって歩き出した。
僕は彼女の背中とカリュブが重ならない様に、横に移動しながら撮影する。
お互いが近づく。
カリュブが先に動いた。
ゴォッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!
双頭の二つの口が赤く光ったかと思うと、一気に炎を吐いた。
二つの口から放たれた炎は、ココセを巻き込み、地面が溶けていく。
<コメント>
■ココセちゃん!!!
■あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!ココセちゃん!!!
■くらった?ねぇ、くらっちゃった???
■炎で見えない!!!
■めっちゃ熱そう!!!
■ココセちゃんを巻き込んだように見えたんだけど!!!
■大丈夫???
■ねぇ大丈夫???
■ソラ!!!!!
僕はカメラをカリュブにズームする。
「皆さん、カリュブをよく見てください。」
アップになったカリュブを映す。
「ガァッ!!ガッ!!ガッ!!ガァァッ!!!」
炎を吐いたカリュブは、その場でぐるぐる回りながら吠えている。
更にアップする。
すると不思議な事が起きた。
カリュブの脚から血が飛び散ったのだ。
そして、また違う脚からも。
今度は体から血が飛び散る。
顔、胴体、足、尻尾。
体全身から血が舞う。
「・・・・・斬ってますね。ココセさんが。」
僕も、視聴者さんも見えていない。
おそらく斬られているカリュブ自身も。
これは目で追うという次元ではない。
見えないのだ。
反応が追い付いていない。
見えないから。
カリュブは所かまわずに炎を吐く。
鋭い爪で脚を振り回す。
でも見えない。
斬られる。
斬られる。
最初はゆっくりと斬られていたが、今は百人が同時にナイフで切りつけたかの様に斬られ・・・・・・・血が舞った。
こちらからは、カリュブがもう見えない。
血が霧のように周りを赤く染めていた。
そして、真っ赤な霧が晴れた時。
カリュブの前にココセは立っていた。
見ると、カリュブは原形をとどめられない程に斬り刻まれ、絶命していた。
そしてゆっくりと黒い灰となって消えていく。
ココセは振り向くとピースサインをする。
「・・・・・Vブイ。」
<コメント>
■すっ。すっ。すっげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■すげぇしか言えねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■マジかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■Vサイン頂きましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■もう何も言えねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■見えない!見えないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■最初と最後しか見えなかったwww
■カリュブがただ踊っている様にしか見えんかったwww
■なんじゃこりゃ?マジなんじゃこりゃ!!!
■このスピード。探索者最強じゃね???
■最高でごわす!ごわすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
コメントがひっきりなしに流れている。
「お疲れ様。」
「・・・・・ん。」
僕はココセに近づき、水筒を渡す。
そして、ココセを撮影しながら、食べられた探索者の前まで行くと、両手を合わせる。
後で、遺留品を持って帰ろう。・・・・・日本ギルドに報告すれば、遺族に渡してくれるだろうから。
カメラをぐるっと回して空洞を撮影した後、【ゲート】を映す。
「さて、目的地に着きましたね!これにてココセさんの下層ソロ攻略は終了となります!それでは、最後にコメントの中から質問しますね!」
二回連続、同じ様な質問が続いたので、だったら、最後の締めはこの質問でずっといこうと決めていた。
「ココセさん!視聴者さんからの最後の質問です!速さを極めようとしたのは何でですか?」
-------------小さい頃-------------
ソラが言う。
「ねぇねぇココセ!昨日僕テレビで見たんだ!忍者が水の上を走ってるの!!!」
「へぇ~♪そうなんだ~♪」
「水の上なんて走れたらカッコイイよね!!!」
「・・・・・出来たらソラは嬉しいの~?」
「うん!めっちゃ嬉しい!!!」
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ココセがカメラの方を見て、冷たい目で言おうとした時、僕はカメラが映らない所で、手を握る。
彼女は普段『氷姫』と呼ばれる程、無表情で冷たい。
僕や親友達といる時とは別人になる。
今回も視聴者が観ている為、『氷姫』モードのココセになっているが、最後位は皆にココセの良さを見てもらいたい。
ココセはどんなに取り繕っても、僕と接触すると素が出て、甘えん坊さんになってしまう。
にぱぁ・・・・・・・にへらぁ。
カメラを見ていたココセの大きな瞳が輝きだし、無表情の氷の様な顔が、ゆっくりと溶けて、とても嬉しそうな天使の笑顔になる。
「目の前で消えるの~♪カッコいいからだよ~♪」
<コメント>
■うぴょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!===50,000円
■ファァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!===50,000円
■あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!===50,000円
■あっ!!!もうダメ。===50,000円
■天使!天使がいりゅぅぅぅぅぅぅぅ!!!===50,000円
■きゃぁぁぁぁぁ!かわいぃぃぃぃぃ!!!===50,000円
■天使!!!マジ天使ぃぃぃぃぃぃ!!!===50,000円
■めっちゃかわいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!===40,000円
■好き!!!もう大好き!!!!!!!!===40,000円
■今この瞬間!完全ファンになりました!!!===30,000円
■チャンネル登録しました!!!===10,000円
■あぁ!一緒にデートしたいぃぃぃ!!!===10,000円
■この笑顔をずっと観ていたいぃぃぃ!!!===10,000円
ココセの今まで見た事のない笑顔にやられている視聴者多数。
「さて皆さん!どうだったでしょうか!長い時間ご視聴頂きありがとうございました!!!次回も日曜日!!!メンバーの下層ソロ攻略をお届けします!最後に、気に入ってくれた方はチャンネル登録をお願いしますね!!!・・・・・それではさようなら!!!『空ちゃんねる』また来週ぅぅぅぅぅ!!!」
エンディング曲を絡ませながら配信を終了させた。
「よし!終わった、終わった!」
手を離すと、ココセはすぐに僕の体に抱きつく。
「へへへぇ~♪もう終わったんだよねぇ~♪」
「あの・・・・ココセ?これじゃ機材がかたづけられないんだけどなぁ。」
「うん♪大丈夫ぅ~♪私も手伝うよぉ~♪」
僕の腕をずっと両手で持って離さない。
これじゃ手伝えないですよね?
しかたなく、僕は片手でかたづけた。
時間がかなりかかったけどな!
「それじゃココセ。帰ろうか。帰りはどうする?ご飯食べてく?」
引っ付いているココセは、顔を上げて上目遣いで笑顔で言う。
「今日はねぇ~♪家で食べよぉ~♪おじいちゃんとおばあちゃんが、たまには連れて来いって~♪」
ココセのおじいちゃんとおばあちゃんはとても優しくていい人だ。
「そうだなぁ。そういやココセの家、最近行ってないか。それじゃご飯貰いに行くかな!」
「うん♪」
僕はゲットしたドロップ品が大量に入っているリュックサックを担ぐと、ずっと僕の腕を抱きしめているココセと一緒に歩き出す。
ココセさん?
マジでそんなに引っ付かないで?
胸が思いっきり当たっているからね!!!
僕は心の中で大きく叫び、ドキドキしながら地上へと戻って行った。
ホント、心臓に悪いわ。




