17話 ココセの下層ソロ攻略 3
あれから何分経っただろうか。
辺りは静寂に包まれていた。
あれ程いたモンスター達が全て居なくなっていた。
辺りはまさしく血の海だ。
目の前で転がっている大量の死骸の中央で、一人の少女だけが立っている。
徐々に、その大量の死骸は黒い灰となって消えていった。
あれだけの戦闘をしたにも関わらず、全然肩で息をしていない。
まるでウォーミングアップだとでも言うように、カメラの方を見て無表情で指をピースサインにする。
「・・・・・Vブイ。」
<コメント>
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■まじかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■あり得ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■何匹いたんだよ!何匹!!!!!
■ちょっ!ちょっと待ってぇぇぇぇぇ!!!
■ココセちゃんのVサイン頂きました!!!
■Vサイン!!!!!
■きゃわいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■ココセちゃん。あらゆる所に飛んでいって斬ってたなwww
■人間ロケットみたいだったwww
■もう人間技じゃねぇwww
■こんなん誰も出来んわwww
■凄いでごわすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
「さて。ドロップ品を回収しますね。流石にちょっと時間がかかると思いますので、今しばらくお待ちください。」
数百匹以上のモンスターを倒した為、地面に転がっているドロップ品が凄い事になっている。
僕は撮影しながら素早くリュックサックに詰め込み始めた。
中には、青色と水色のポーションもある。
<コメント>
■あれだけの大群を倒したから、すげぇドロップ数www
■リュックの中身、いっぱいになるんじゃね?www
■めっちゃあるやん!すごいな!
■貴重なポーションもそこそこあるぞ。
■これは羨ましい。これ全部換金したら軽く数千万はいくな。
■いや、億はいくぞ。流石トップクラスの探索者だな。
■同業者達が羨ましがってるwww
■一般人の俺も羨ましいwww
■私もぉぉぉwww
■欲しいけど、あの大群の一匹でも襲われたら、俺達は間違いなく死ぬけどなwww
「よし。回収が終わりましたから行きましょう!」
カメラを回しながら、ココセと一緒に三階層へと下って歩く。
視聴者がココセと一緒に歩いている様に、出来るだけ臨場感が出る様に意識しながら撮影しているつもりだ。
「さて、三階層へ着くまでに、また良さそうな質問は拾っていきますからね!」
<コメント>
■スリーサイズ教えて!!!
■銀の髪はどうやって手入れしてるんですか?
■携帯番号教えてください!!!
■どうやったらそんなに速く動けるんですか?
■一緒に食事いきませんか?
■ドライブに行きませんか?
■俺と一緒に遊園地行ってください!!!
■僕と付き合ってください!!!
■ココセちゃん!大好きです!結婚してください!!!
■俺も!!!
ハハハ。相変わらず、毎回似たような質問をするなぁ。視聴者さんは。
これだとこれしかないだろ。
「それではココセさん。視聴者さんからです。どうやったらそんなに速く動けるんですか?」
僕の隣で歩いているココセは、冷たい目でカメラを見ると答える。
「・・・・・水の上を走れる様に努力する事・・・・・だよ。」
<コメント>
■はっ???
■何???
■今何て言った???
■水???
■水の上???
■水の上を走る???
■言っている意味が全然分からないんだが。
■水の上なんて走れるの???
■いや、普通に無理だろ。
■探索者でもそんな話聞いた事ないですよ???
■分けがわからんわwww
僕は勢いよく流れるコメントを見ながら言う。
「皆さん。信じられないでしょうけど、ココセさんは水の上を本当に走れるんですよ。実際に僕が見ました。凄いですよね!」
<コメント>
■ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!まじでか!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■本当???本当に???
■いやいやいや。マジで走ったとしたら、どんな脚力だよwww
■物理的に走れるのか?どんだけ足を回転させたら走れるんだよwww
■もう超人じゃんwww
■でも、消える位の速さなら出来るのか?
■確かにな。でもこれこそ才能がないと無理だろ。
■もし陸上で走ったら間違いなく世界新記録www
■いや。ココセちゃんが走ったら、誰もその記録抜けんよwww
■そもそも消える程の速さを計測出来るのかよwww
移動中は時間があるので、視聴者さんとのコミュニケーションを深める為に、コメントを拾ってはココセに答えてもらった。
そして三階層へと着くと、水の音が聞こえる。
結構激しい音だ。
少し行って洞窟を曲がると、広い空間へと出た。
水が上から豪快に流れていて、ここで水が溜まり、川となって先へと流れている。
カメラを上の方へと向ける。
滝だ。
そして、そのままゆっくりとカメラを下げて水溜まりを撮影する。
「・・・・・滝つぼです。ここから川が発生してますね。多分、先週クウガと一緒に行った時の川はこれでしょうか。という事は、二階層で遭遇したディープはこから来た可能性が高いですね・・・・・ん?」
滝つぼを撮影していると、水しぶきの中からぬるりと数本の吸盤の付いている脚が出てきた。
その物体はそのまま滝つぼから地面へと上がる。
でかい。6m以上はあろうか。
脚は10本あり、頭は禿げていて目は赤い。全体的にタコの様に見えるが、顔が恐ろしい程凶暴だ。
「あれは・・・・・『グラゲン』ですね。」
<コメント>
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!新しいモンスター来た!!!
■デカッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!
■何じゃあれ!!!キモッ!!!
■顔がこえぇな!!!
■グラゲンか。気を付けろ!あいつの脚はムチの様にしなって攻撃してくるぞ!口からは毒も吐く!!!
■仲間が吹き飛ばされて全身骨折。即、病院行きだったわ。
■毒くらって生死を彷徨ったな。
■同業者が苦い経験語るwww
■あれは近づきたくないな。
■ココセちゃん!気を付けて!!!
■ココセちゃん!頑張って!!!
「・・・・・行ってくる。」
ココセは一言、カメラ(僕)に向かって言うと、瞬時にグラゲンの前へ移動した。
グラゲンはココセを確認すると、巨大な一本の脚をムチのようにしならせながらココセにぶつける。
・・・・・が、当たったように見えたココセは残像の様に消えた。
すると、一人・・・・・また一人。ココセがグラゲンの前に現れる。
どんどんと数が増えていき、グラゲンを中心にぐるっと円の様にココセが取り囲んだ。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドドドドドドッ!!!
グラゲンが10本ある脚を次々にココセに叩きつけるが、残像の様に消えてはまた現れる。
僕はその様子を撮影しながら問いかける。
「皆さん。彼女がどうやってるか分かりますか?」
<コメント>
■ホワッ???????????????
■何じゃありぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■何が起きてんだ???
■いや!分かんねぇって!!!
■ココセちゃんがいっぱいいりゅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■えっ?何あれ?分身の術???
■分身の術ってwww魔法じゃないの???
■分からん!!!分からんぞ!!!
■分からんのでごわす!!!
「正解はですね。もの凄い速さで動いて、一瞬ゆっくり動く。またすぐ速く動いて、一瞬ゆっくり動く。その繰り返しですね。そうすると、あんな風に残像の様になるみたいです。」
<コメント>
■はい???
■今何て???
■残像の様になるってwww
■いや、意味分からんwww
■全然意味わからんwww
■何でもありだなwww
■もう好きにしてwww
■でも、ココセちゃん好き!!!頑張って!!!
■あんなタコやっつけちゃって!!!
■頑張れ!!!
ドンッ!ドンッ!ドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
巨大な10本の脚が、ムチの様にしなりながらココセへと襲い掛かっている。
しかし、ココセの残像には当たるが本体に当たる事はなかった。
そして、暫くすると一本。また一本と脚が斬られ・・・・・飛ぶ。
爆発的なスピードで振るう【深層】でドロップしたダガーの威力は凄まじい。
グラゲンの巨大な脚を簡単にスライスしてしまう。
そして10本全ての脚が斬られた。
残像が消え、正面に立っているココセに向かってグラゲンは毒を吐く。
それを軽やかにジャンプして躱すと、そのまま一気に頭上からダガーを突き刺した。
グラゲンは赤い目を大きく見開き、そのまま徐々に黒い灰となっていく。
ココセは地面へと着地すると、離れた所から撮影している僕に向かってポーズする。
「・・・・・Vブイ。」
<コメント>
■Vぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■Vぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■V!V!!Vぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■カッケェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!
■つえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■グラゲンが全然相手になってなくて草。
■つよっ!!!
■ココセちゃん強すぎ!!!
■残像凄い!!!もう分身の術じゃん!!!
■ココセちゃん可愛い!!!
■ココセちゃん結婚して!!!
小柄な少女が、いとも簡単にグラゲンを倒したのを観た視聴者は大いに盛り上がった。




