15話 ココセの下層ソロ攻略 1
今~日は日曜日!!!
週に一度のライブ動画の日だ。
僕はいつもの様に、動画をスタートさせる下層に下りる場所に来ていた。
「え~と、所で・・・・・ココセ?」
「ん~?な~に~♪えへへへへへ♪」
僕の腕を両手で抱きしめる様にギュッと掴んで、天使の様な笑顔で僕を見上げるココセさん。
柔らかい部分がずっとあたっている。
密着度が半端ない。
ダンジョンに入ってここまで来るまで、ずっとこの調子で離してくれない。
それでもモンスターが来ると、一瞬で討伐して、何でもなかったかの様にまた引っ付いてくる。
うん。よく分からん。
僕はココセを見る。
「♪~~~♪~~~♪~~~」
とても幸せそうな顔で、鼻歌を歌いながら、僕の腕に顔をうずめている。
彼女の名前は、日野 心星。
17歳。僕と同じ学校に通っている高校二年生だ。
身長は150cm。ショートボブ位の銀の髪。空の様に真っ青な大きな瞳。お世辞抜きで、誰が見てもめちゃめちゃ可愛い。
黒い服を着て、下は動きやすさを重視したショートパンツ。
両腰にはダガーがぶら下がっていて、投げナイフが数本並んでいる。
前に学校で少しだけ説明したが、彼女は『氷姫』と呼ばれていた。
その理由は、僕と親友達、家の人以外は全くと言っていいほど興味がなく、話しかけてきても相手にしようともしない。
そして素っ気なく冷たいからだ。
「あの・・・・・ココセ?」
「♪~~~♪~~~♪~~~」
ダメだ。
全然離してくれない。
こんな感じに親友達とは接していないのに、僕にだけは小さい頃からとても甘えん坊さんでだらしなくなる。
流石にこの年になると色々と大変だからやめて欲しい・・・・・いやマジで!
「準備が出来ないから。ね?」
強引にココセを離して、リュックサックを地面へと置く。中身からカメラを取り出して準備に取り掛かる。
しゃがんで準備している僕の背中に、すぐに引っ付くココセ。背中に柔らかい感触が伝わる。
さて、下層ソロ攻略も三回目だ。
先週、終わった段階で、ライブ動画は20万人突破。その時のスパチャは1,000万円超え。
そして、チャンネル登録者数は98万人までいっている。ソロ攻略前に掲げた、目標の100万人はもうすぐだ。
たった二回でここまで爆発的に伸びるとは思ってもみなかった。
これもアカリとクウガのおかけだ。
特にクウガの動画は非常にウケた。
あの派手な戦い方が、視聴者には分かりやすくて好評だったみたいだ。
一番目立たなかった男が、今めっちゃブレイクしている。
ファンも凄く増えたらしい。親友としては嬉しい限りだ。
何か親指立てて、『どうだ?』が流行っているらしい。
これからも、どれだけ伸びるか楽しみでしょうがない。
「ムフフフフフ。」
「ソラぁ。声がキモいよぉぉぉ♪?」
いかんいかん。思わず想像して変な声を出してしまった。
「よし!準備が終わったな!」
僕は立ち上がると、ココセを離して言う。
「いいかいココセ。これから撮影するから、いつも通りの行動をしてくれ。皆観てるけど、そんなに気にしなくていいから。」
「分かったぁ♪いつでもいいよぉ♪」
いつもの様に、片手にカメラを持ち、大きく深呼吸をする。
「すぅぅぅぅぅ。はぁぁぁぁぁぁぁ。」
そして配信をスタートさせた。
「みなさぁぁぁぁぁぁぁぁん!観てますかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
☆☆☆
<コメント>
■きたきたきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■観てるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■ソラの声だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■観てる観てるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■観まくってるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■やった!始まったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■ごわす!ごわす!!ごわすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■何か古参がテンション高いwww
見るとすでに18万人超えている。凄いな。
あと良かった。『ごわす』さん。元気になったみたいだ。
「皆さん!今日もご視聴ありがとうございます!・・・・・『空ちゃんねる』スタートです!!!」
オープニング曲を流す。
ぐるっと周りを撮影しながら言う。
「どうもこんばんは。ソラです!今日もメンバーの下層ソロ攻略をお届けしたいと思います!」
<コメント>
■よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■きたきたきたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■今日は誰?誰なんだ???
■うぉぉぉぉぉぉ!!!気になる!!!
■あと残り三人!!!誰だ???
■気になる!気になるぅぅぅぅぅ!!!
■早く教えて!
■ソラ!もったいぶるな!!!
■ごわす!ごわす!!ごわすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■いやいやwだから古参テンション高すぎwww
■何かいい事あったか?www
「はい!皆さん楽しみに待っていたみたいですから発表しますね。今日下層をソロ攻略するのはこの方!!!」
僕はゆっくりとココセを映す。銀の髪がダンジョンの光に反射して輝く。
「気づくとそこにはもういない・・・・・【星空】のスピードスター!『レベル6』・・・・・日野 心星さんです!!!」
「・・・・・よろしく。」
あれっ???さっきのテンションは???
<コメント>
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■キャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
■氷姫!!!氷姫だぁぁぁぁぁぁ!!!
■氷姫きた!!!
■氷姫だ!!!
■きゃわいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■ココセちゃん!もっと近く!もっと近くに来て!!!
■綺麗な銀の髪。いいなぁぁぁぁ!!!
■触りたい!!!
良し。かなり盛り上がっているな。いい感じだ。
僕はココセにカメラを向けながら下層の入口へと下って行った。・・・・・うん。カメラをガン無視なのはちょっと気になるけどね。
「さて。いつもの様に下層の入口に着きました。前回と同じ様に、違うルートを進んで行きましょう!ココセさん!どこがいいですか?」
「・・・・・あっち。」
ココセが無数にある洞窟の一つを指さす。
う~ん。完全に他人モードのココセに戻ってしまった。
これは大丈夫か?
ちょっと不安になり、カメラの画像を見る。
<コメント>
■いゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!この冷たい感じ!!!
■きたきたきたぁぁぁ!!!この冷たい感じ!!!
■これだよ!これこれ!!!この冷たい感じ!!!
■氷姫ぃぃぃぃぃぃぃ!!!俺をその足で踏みつけて!!!
■ココセちゃん!!!もっと冷たい目で俺を見つめて!!!
■ココセちゅぁぁぁぁん!!!可愛いぃぃぃぃ!!!
■小っちゃくて可愛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■もっと!!!もっとよく見せて!!!
うん。全然大丈夫だった。
僕達は、洞窟の中へと入って行った。
暫く進むと、岩場の様な所に出る。
その岩の影から大きな黒い狼が現れた。
僕はカメラをココセからモンスターへと移す。
「接敵しました。あれは・・・・・『マッドウルフ』ですね。三匹います。」
<コメント>
■モンスターきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■マッドウルフきたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■クウガが先週戦ったやつだ!!!
■素手でなwww
■クウガは異常だったが、普通は速くて、あの牙で何でもかみ砕く。大丈夫か?
■異常ってwww
■ココセちゃん!無理しちゃダメだよ???
■危ないと思ったらすぐ逃げるんだよ???
■いいんだよ?無理しなくていいんだよ???
■大丈夫!逃げても僕はココセちゃんのファンだよ!!!
■無理しないでね???
ハハハ。何と言うか、親目線やアイドル目線で心配している人も結構いるな。まぁ、あんなに可愛いとそうなるか。
「・・・・・行ってくる。」
そう言うと、ココセはマッドウルフへと歩いて行った。
マッドウルフの三匹はココセを見ると、二匹は左右に広がり、ココセを中心に包囲する。
<コメント>
■大丈夫???大丈夫だよね???
■あんな小柄で戦えるの???
■私より小さいよ?平気なの???
■ココセちゃん!マジで無理すんなよ!!!
■何か凄く緊張する。
■緊張感が半端ねぇ。
■頑張って!ココセちゃん!!!
■頑張るでごわす!!!
「「「 グゥゥゥゥゥゥゥゥ。 」」」
三匹のマッドウルフは唸りながら徐々に近づく。
ココセは一歩も動かない。
瞳はいつもの様に冷たい目をしながら。
「ガァァァッ!!!」
三匹は一斉に飛びかかった。
???????
噛みつこうとしたマッドウルフ達だが、そこに居るはずのココセは消え、牙は空を切り、三匹は勢いよく衝突する。
僕はカメラを少し先の岩の上を映す。
そこには今までマッドウルフの場所にいたはずのココセが立っていた。
すぐに三匹は素早い速さで近づき、岩の上へと飛びかかる。
先程と同じ様に、噛みつこうとしたその瞬間。
消えた。
空を切った三匹は、首にまとわりつくような風を感じる。
カメラの前にフッと現れるとココセが呟く。
「・・・・・終わり。」
その後ろで、三匹のマッドウルフの首が飛んだ。




