12話 クウガの下層ソロ攻略 4
フォン。フォン。フォン。
風が舞う。
それは異様な光景だった。
クウガのハルバードは威力が凄まじく、振り回した後に風圧が発生した。
四方八方から次々と襲いかかるディープ。
それを縦横無尽に振り回すハルバードが迎撃していく。
それでも次々と襲い掛かるディープは、首を斬られ、胴体を斬られ、腕が飛び、足が飛んだ。
まるで小さな竜巻に弾かれる様に。
僕はそれを黙ってカメラを向けて撮影している。
<コメント>
■すげぇ。
■言葉にならねぇ。
■何これ。
■見入っちゃう。
■黙っててくれ!!!
■ちょっと!集中したいから黙って!!!
■静かに!!!
次々と襲い掛かるディープは、徐々に数が少なくなり、圧倒的な暴力を前に足が止まる。
ドンッッッッッッッッッッッ!!!
それを見逃さないクウガは、一気に踏み込んで各個撃破に切り替えた。
フォン。フォン。フォン。
距離を詰めて、右下から左上にかけての一刀で胴体が飛び、そのまま隣にいるディープを、左から右へ横薙ぎの一刀で首が飛ぶ。
ディープは、あまりにも圧倒的な実力差に何もできずに倒され・・・・・死体が転がっていった。
そして気づくと、百匹以上いたディープは全ていなくなっていた。
静まり返ったダンジョン。
川の音だけが聞こえる。
沢山の死骸が徐々に黒い灰となって立ち上る中心に、クウガはハルバードを片手に佇んでいる。
そして後ろを振り向いて親指を立てて言う。
「どうだ?」
<コメント>
■フォォォォォォォォォォォォォォ!!!
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■カッケェェェェェェェェェェェェェェ!!!
■これだよ!これぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■これが見たかったんだよ!!!
■最初から武器使えや!!!心配させやがって!!!
■クウガ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■クウガつぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■魚人がハエみたいに倒されてたwww
■クウガに向かって行ってそのまま吹っ飛んでいったぞwww
■何かクウガを中心に竜巻みたいになってなかった???
■あの重そうなハルバードが速すぎてあまり見えんかったわwww
■パネェ!!!クウガまじパネェ!!!
■凄いでごわす!!!
凄い勢いでコメントが流れている。
僕はモンスターが黒い灰となって消えていった所を見計らって、クウガの元へと近づいて行く。
「流石に結構ドロップしましたね。」
クウガの周りを映す。
ドロップ品が沢山転がっていた。
僕はそれを回収しながら、その中の一つをアップする。
「おっ、皆さん!早速発見しました!これは青のポーションですね!あとは・・・・・水色のポーションも一つありました!」
<コメント>
■あんだけ倒してポーションたった二本か。
■ドロップ率低いなw
■こんなもんだぞ。だから貴重なんだ。
■中層はもっと確率低いからな。
■羨ましい。
■同業者が羨ましがってるwww
■それだけ高値で取引してるからな。
■それを全種類持っているソラ草。
■準備万端って事だなwww
■安心して観てられるわwww
全て回収し終わり、更に奥へと進む。
たまにコメントをクウガに答えてもらいながら、そろそろ終着点へと着きそうな時、ソレは現れた。
ゆっくりと歩いてくるソレにカメラを向ける。
体長は4m程あろうか。
大きく、そして筋肉隆々の体。
大きな角を二本生やし、牛頭の怪物。
そして両手には大きな斧を持っている。
探索者協会があまりにも特徴が似ていた為、馴染のある名前にしたモンスター。
『ミノタウロス』。
<コメント>
■ミノきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■ミノだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■ミノミノだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■テンション上がるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■ゲームやマンガしか見た事ないのが目の前に!!!
■何か感動!!!!!
■すげぇ!!!
■初めて見たけどデカッ!!!
■リアルだとこんなにでかいの???
■めっちゃ強そうなんだが、大丈夫か???
■クウガ!!!!!
■クウガ様!!!!!
何も言わず、そのまま散歩でもするかの様に、ミノタウロスへと向かうクウガ。
歩きながら首を回している。
そして、お互い攻撃範囲に着くと、ミノタウロスは大声をあげて咆哮する。
「ゴァァァァァァァァァァァァ!!!」
地が揺れ、空気が震える。
クウガはニヤリと笑うと言う。
「さて。最後くらい、少しは楽しませてくれよ?」
ドンッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!
ミノタウロスの振り下ろした斧を、大楯で受け止める。
その威力で、両足が地面に少し沈んだ。
「ガァァァァァァァァァァァァァ!!!」
それを皮切りに、ミノタウロスの攻撃が始まった。
間髪入れずに斧が振り下ろされる。
右へ。左へ。
両手に持たれた二本の斧が、もの凄い早さでクウガへと襲いかかる。
あまりの圧力で、反撃する隙間すらない。
しかし、その攻撃を一歩も動かずに、大楯で受け止めている。
徐々に、足が斧の圧力で沈んでいった。
どの位経っただろうか。
攻撃をしていたミノタウロスは、僕から見ても明らかに動きが鈍くなってきていた。
息も荒く、振り下ろすスピードも遅くなっている。
瞬間、片腕が飛んだ。
遅くなったのを見計らったかの様に、振り下ろされた斧に合わせてハルバードを振り上げ、斬りつけた。
「・・・・・終いか?」
クウガが呟く。
ミノタウロスは空気を吸う為か、腕を斬られて体制を整える為か、バックステップをして攻撃を止めた。
ガランッ。
同時に、大楯が地面へと落ち、片手に持っていたハルバードを両手に持ち替え、頭上に天高く持ち上げる。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!!!」
一閃。
頭上から振り下ろされたハルバードは地面へと突き刺さる。
ミノタウロスは呼吸を整えていた体が止まった。
すると真ん中に赤い線が出来たかと思うと、そのまま真っ二つに割れた。
二つに割れた体は、黒い灰となって徐々に消えていく。
クウガは満面の笑顔で親指を立てて振り返る。
「・・・・・どうだ?」
<コメント>
■カァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■すげぇとしか言えねぇぇぇぇぇ!!!
■クウガ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■クウガぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■クウガ!クウガ!クウガ!!!
■ミノを真っ二つってwww
■凄すぎwww
■距離少しあったよな?
■どうやって斬ったんだ???
コメントがめちゃくちゃ盛り上がっている。
「クウガさん!最後どうやって倒したんですか?」
「ん?あぁ、あれは何と言うか、力を溜めてだな・・・・・そう、簡単に言うと剣圧・・・・・いや、斬撃を飛ばしたんだ。」
<コメント>
■飛ばしたってwww
■マンガじゃないんだからwww
■斬撃って飛ぶのかよwww
■ファンタジーか!!!
■やっぱすげぇな!!!
■クウガ凄すぎwww
■あれだけミノが攻撃してても、盾でビクともしなかったもんなwww
■流石タンク!!!
■クウガ様素敵!!!!
■クウガ様カッコイイ!!!
ミノタウロスを倒して、少し進むとすぐに広い空洞に着いた。
周りには無数の洞窟があり、中央には大きな門【ゲート】がある。
「着きましたね。下層の最下層で【深層】の入口・・・・・目的地です。」
広い空洞を見渡せるように、カメラをぐるっと回す。
先程の興奮でまだまだコメントが勢いよく流れているが、そのまま先に進める。
「さて、クウガさん。どうでしたか?」
僕から渡された水筒を飲みながらクウガは答える。
「そうだな。いいウォーミングアップが出来た。満足したよ。」
<コメント>
■ウォーミングアップって言ったぞw
■ウォーミングアップってwww
■どんだけ下層余裕だったんだよwww
■まぁあの戦いを見ればそう思うしかないかwww
■クウガ最強!!!
■クウガ様!!!
■クウガ!!!
僕はクウガにカメラを向けながら続ける。
「さて!これにてクウガさんの下層ソロ攻略は終了です!最後にコメントの中からクウガさんに質問しますね。え~と・・・・・。」
おっ!やっぱりこれだな!
「クウガさん!視聴者さんからの最後の質問です!タンクをやろうと思ったのは何でですか?」
-------------小さい頃-------------
ソラが言う。
「ねぇクウガ!ゲームクリアしたんだけど、やっぱりタンクって凄いよね!」
「凄いの?」
「うん!敵を引き付けて皆を守るんだ!めっちゃカッコイイよな!」
「皆を守る・・・・・そうなんだ。ソラ。カッコいいんだ。」
「うん!!!」
----------------------------------
クウガはカメラの前で笑顔で答える。
「・・・・・皆を守りたいからだ。」
<コメント>
■いゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!クウガ様素敵!!!===50,000円
■クウガ様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!大好き!!!===50,000円
■クウガ様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!愛してる!!!===50,000円
■私も!!!私も守って!!!!!===50,000円
■あぁ!!!突き刺さるぅぅぅ!!!===40,000円
■クウガ様!!!付き合って!!!===40,000円
■カッケェェェェェェェェェ!!!===30,000円
■私も守って!!!===30,000円
■俺も守ってくれぇぇぇぇぇ!!!===30,000円
■私も!!!===10,000円
■俺も!!!===10,000円
スパチャが凄い事になっている。
僕はカメラをクウガに向けたまま言う。
「さて皆さん!どうだったでしょうか!長い時間ご視聴頂きありがとうございました!!!次回も来週の日曜日!!!またメンバーの下層ソロ攻略をお届けします!最後に、気に入ってくれた方はチャンネル登録をお願いします!!!・・・・・それではさようなら!!!『空ちゃんねる』また来週ぅぅぅぅぅ!!!」
エンディング曲を絡ませながら配信を終了させた。
「よし!終わった終わった。」
今回も大成功だ!
僕は鼻歌をしながら、機材を片付け始める。
全てリュックサックに詰め込んだ僕は、背負って立ち上がると、肩に腕を絡ませてクウガが不安そうな顔をして僕に言う。
「・・・・・ソラ。俺はどうだった?」
「めっちゃ最高だったよ!ありがとなクウガ!帰りに飯でも食って帰ろうぜ!!!」
それを聞いたクウガは、今日一番嬉しそうな顔をしながら言う。
「あぁ!!!!!」
僕達は、喋りながら帰路へと着いた。




