エピローグ 私が選んだ未来
あのあと。
私の回復を待ってようやく、結婚式が執り行われることとなった。
回復したばかりの私には、目まぐるしく進行する式についていくだけで精一杯だった。
なんとか国の主要人物だけを集めた結婚式が終わって、あとは民衆への披露セレモニーだけ。
ゼステアの新たな門出を、国中が祝福する。
「……ふう」
バルコニーの扉の前。リオ様が選んでくれたドレスに身を包んだ私は、思わず緊張から息をついた。
……こんなに大勢の人たちの前に出るなんて、少し前までは考えられなかった。
「緊張しているのか?」
私の隣には、礼装を身にまとったリオ様がいる。その端麗な姿は、つい見惚れてしまうほどだ。
「ええ……、リオ様の妻としての、正式なお披露目の場ですから……」
扉越しでもわかる。
集まった人たちの熱気が。祝福する温かい声が。
セレモニーの準備をしている時、ヴィルト様が言っていた。
『ゼステアを大災害から守ってくださった王妃様を、みな一目でも見たいのですよ』
その言葉に、改めて王妃としての期待と責任を実感する。
大きく深呼吸をしていると、リオ様が語りかけてきた。
「胸を張れ、ニア。お前こそがこの国の王妃であると、みなに見せつけてやれ」
「俺は元よりそのつもりだがな」
思わずその言葉に笑みが溢れる。
ゆらゆらと揺れるリオ様の尻尾は、機嫌の良い証だ。
本当にこの人は――惜しみなく、私に愛を注いでくれる。
リオ様は扉越しに遠くを見つめる。
「ようやくだ。……やっとお前が、俺の隣にふさわしい存在であると、世界に知らしめることができる」
感慨深げに言われた言葉が、胸に染みてくる。
遠くを見る横顔は、どこかあの日の少年の面影が残っている。
これまで待たせてしまった分、私もリオ様に愛を届けたい。
私の中に込み上げる、リオ様への熱。
今までの時間を埋めるために、少しずつでも、なにか――。
(……そうだ)
ほんの少し、勇気を出す。リオ様の腕に添えた手に、軽く力を込める。
これは私の、誓いの言葉。
「ずっと、私のそばにいてくださいね。……リオ」
「私もあなたを……離しません」
あなたと肩を並べて、この国を守っていくために。
支えられるだけでなく、支え合うために。
お互いが唯一無二の番の片割れなのだから。
そうでしょう?リオ。
ぱっと、リオがこちらに顔を向ける。大きく目を見開いていて、息を飲んだことがわかる。
そして噛み締めるように頷いたあと、不敵に笑う。
「……当然だ」
「なにがあろうとも、俺もお前を離さない」
力強い言葉。
ああきっと、この人となら、どんな苦境でも乗り越えられる――。
外から盛大なファンファーレの音色が聞こえる。
いよいよ、披露セレモニーの時間だ。
目の前の扉がうやうやしく開いていく。
暖かな日差し。花びらが風に乗って吹き込んでくる。
「王妃様だ!」
「リオ様!ニア様!」
「おめでとうございます!」
「国王様、王妃様、ばんざい!」
祝福の嵐が待っている。
風の香りは甘やかに。
「行くぞ、ニア」
光の中へ、二人で踏み出した。
「はい!」
あの頃の私に、伝えたい。
――私はもう、『ハズレ』なんかじゃない。
この風が、そう教えてくれる。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
次回作は、来週6/11(木)よりお届け予定です!
乙女ゲームのサポート保健医に転生した主人公が、「死亡ルート確定の推し教師」を救おうとする物語。
しかしその推し教師、どうやら最初から主人公が何か知っていることに気づいているようで……?
『乙女ゲーのサポートキャラに転生した私は、死亡ルートの推しと情報戦をしている』
少し不穏で、執着強めな愛が芽生える話になります!
活動報告やX( @sosaku_amsk )でもお知らせしますので、もしご興味があれば次回作もお付き合いいただけると嬉しいです。




