千奈美の偽名の名と天才
シュー!
シュー!
シュー!
ピカーン!
パン!
パン!
パン!
ヒューン!
ヒューン!
ヒューン!
ズドン!
ズドン!
ズドン!
「よし!3点ヒット!」
「………最早人間じゃないなあれは…」
3人がテニスボールを打ってそれを交互にラリーをする最中タイミングよく見つけて千奈美は1つ1つのボール相手に勢いよくスマッシュを放つ。
そしてそれが何ともまぁとんでもないスピードと重さのヒット…3人は唖然としながら千奈美を疎外感のある様な目で…
「すごーい!今のどうやったらできるんですか!」
「私もああいった感じで打ち返せるんでしょうか?」
「というよりどんなスタミナ持ってるのよ。あんなの並大抵の人間じゃ無理よ。」
ではなくどうやら尊敬と期待のある眼差しで千奈美の事を羨ましがっていた。
「さすがは天才高だな。気持ちがられるとかじゃなく単純に褒めるのとその技をどう扱えばいいのかを聞き出しているってわけか…いや最早ここでは恨む奴は妬むやつなんて…」
のはまぁいないわけじゃないよな。
普通に相争うという奴はみていたわけだし…その部類で言えばちょっと違った形ではあるけれど僻むという意味ではいるのは普通…ここにいる奴等が別系統なわけって事だな。
「あ!先輩じゃないですか!」
とここで俺の姿を目にしたのか千奈美はこっちへと駆け寄ってくる。
「ようなんか凄い仕方のラリーだったな。お前本当に天才だったんだな。」
「え!信じてなかったんすか!というより自分が何の天才かを言ってませんでしたよね。」
「まぁそこも重要ではあったけれども…てかまぁ今ので一目瞭然というか…お前テニスの天才選手だったんだな。」
「はい!自分…うちはテニスを1番磨いていましたからね。けどその事の話もしていた気はしてたと思いますよ。」
「テニスが好きという話は聞いていたけれど、それをまさか天才という形でここまで引き上げていたのには驚きを隠せないだろう。」
それに千奈美がテニスを好きだって言ってたのはあくまでも趣味という範疇だったという話だったはずだ。
それをわざわざ天才に至るまで伸ばすなんて事をいったい誰が想像するんだ。
「それもそうすっね。あ!うちもうすぐで朝練終わるんで少し待っててもらってもいいっすか?」
「え?ああ別にいいが……けど後少しで予鈴がなるぞ。そんな暇…」
「2分で着替えてくるっすからあそこの自販機前で待っててくださいっす!」
ピューーーン!
「え?2分って…ちょ!しかも指定待ち合わせって、おい千奈美!」
………2分って、女子が着替えるスピードじゃないだろう。
もっとその辺何かしら女子らしく遅く着替えるんじゃないのか?それともスポーツ系女子にとっては当たり前の事なのか?
「アレは例外だから女子全員が千奈美ちゃん基準だとは思わないでね。」
「うわ!」
「うわとは何ようわとは…失礼しちゃうんだからもう。」
「そりゃあ驚くだろう。急に背後から声をかけられたら誰だってビックリするって……てか何で姫乃がここにいるんだ?」
「………何となく早起きしたから。」
何となくの早起きで昨日転校してきたやつがわざわざテニスコートに足を運ぶか?
……いや姫乃は既に前からここに転入してきたんだったな。
知ってて当然といえば当然かもしれんが……
「何となくの早起きでテニスコートに来るのって普通に考えたら不自然だよな。」
「それは私が不審者だっていいたいわけ!」
「そんな事を言ってないだろう。単に疑問に思っただけだ。」
「じゃあ何で神楽坂君はここにいるの!」
「何でって……千奈美の声がしたから?」
「うわ…それってストーカーなんじゃ…」
「マジのドン引きはやめてくれないか…普通に知ってる声がしたら気になるだろう。しかも昨日転校してきたやつだぞ。何でテニスコートにって思うだろう普通は…」
「そういうでまかせの言い訳ってストーカーが真っ先に浮かぶ解答だよね。私そういう言い訳あんまり好きじゃないな。」
「人の話し聞いてたか?」
ざわざわざわざわ…
おっとここで変に幼馴染と悪ふざけの事をしてたら変に勘繰られてしまって後が大変だ。
「ひとまず姫乃ここから離れるぞ。千奈美とはあそこの自販機前で待ち合わせしているからとりあえずあそこまでいくぞ。」
「………」
「いやどんだけ俺をストーカー扱いの目をしてくるんだ。てか先の会話で何故そこまで疑ってくる。よく分からない頭だなお前は…」
「はいそうやって人の事を罵声するのよくないと思います。」
「………」
もういいや。
そう頭の中で諦めて自販機前まで移動する俺。
渋々ついてくる姫乃は特にそこからストーカー疑惑みたいな事も言わなくなりとりあえずは落ち着いて千奈美の事を待つ。
タタタタ…
「キッチリ2分。……いやどんだけの早着替えなんだよ。」
息を切らして走ってくるわけでもない彼女の姿に俺は何というスキルを持ったやつなんだと心の中でそう思いながらあまり羨ましくもないスキルを身についたんだなとどうでもいい事を頭によぎる。
「いやすみません。いつもだったら1分50.55秒ぐらいは着替えられるんですけど、何故か少し余白が出てしまって…」
「2分で着替える秒刻みの余白に対して何故そんな顰めっ面ができるんだ。お前の人生いったいどういう形で頭の中巡り回ってるんだよ。」
「単純に生きがいがあるって事ですね。」
「早着替えに対しての生きがいって何!お前の人生にいったい何があったわけ。」
「やだな〜一星先輩は何事も真面目に捉えすぎなんですよ。もっも朗らかに生きていいかないと…あ、うち喉が渇いたんでジュース買いますね。良かったら2人も飲みますか?奢りますようちが。」
「自己中すぎないか?」
「まぁまぁ。それよりも早いとこ教室に戻らないといけないのが先じゃない?ちょっと早めに登校はしたけれど部活を見学していた分予鈴が後少しで鳴るタイミングでもあるわけだし…」
「は!?確かに!」
え?今頃そこに気付くのか?
「もう!何でそれを先に言わないんですか!一星先輩そこの所昔と変わらず意地悪ですよね。」
「一応言おうとしたんだけどな〜」
誰かさんが俺の話しを聞く前にすっ飛ばして着替えに行ったからな。
「分かりました。それならこのまま下駄箱まで行って靴を履き替えてまでの所まで一緒に行きましょう。」
言わなくても誰でもそう思った事だと思うんだが……何か千奈美って昔に比べて馬鹿になったか?
というのは敢えて口にするわけにはいかなかった為そのまま別の話しに切り替えて下駄箱の所まで移動する。
「そう言えば千奈美は偽名でどういった形で通ってるんだ?俺まだその辺の事で何も知らなくてだな。」
「あれ?てっきりもう知ってるのかと思っていたんですが…まだ知らなかったんすか?」
「そうだな。」
知ってるのは主に姫乃だけ…鶴海に関しても千奈美に関してもその辺の話は未だに何の天才かなのかが分からない以上そういった偽名の名前が判別がつかない。
しかし今回それが分かる。何故ならコイツはテニスの天才だと自らネタを明かしたと言ってる様なもんだ。
つまり本名でのテニスの天才は仮の名…偽名でテニスの天才という事が発覚してしまえば周りからの反響でそれが確定となる。ここに来て2人目の天才事実が発覚すればここでの復讐に関して何かしら分かる可能性があるかもしれない。
「う〜んどうしましょうかね。」
千奈美は姫乃の顔を覗き込む。
「……まぁ別に隠しててもバレるすっからね。それじゃあうちの偽名を明かしましょう。ウチの偽名の名は…海道朝陽それがウチの偽名です。」
「海道朝陽」
「って名前を明かしてもわからないですよね先輩は…」
「そうだな偽名を名乗られて、そうかあの時の約束だったかなんて容易い言葉をかけられるほど勘がいいわけじゃないからな。」
「いいすよそれで。でもウチはこの偽名で必ず先輩には思いだしてほしいんす。それだけは分かっていてくれたらと…」
「………分かった。」
「千奈美ちゃん因みになんだけど、この事は風香ちゃん達には言わない方がいいわよ。たまたま私がここにいてそれを許可してでの反応をしただけにすぎないから。」
「分かっていますよ。こんな事バレたらウチ合わせる顔がないですからね。」
あの2人そこまでして偽名を自ら明かすのを拒否しているのか……けど何でそんな回りくどい事を…
「先輩ウチが先輩に明かすのはあくまでも善意で明かしてるわけじゃないですよ。先輩はウチらの事を大切にしていただいた恩があります。なので偽名ぐらい名をあげてもバチは当たらないとそう思ったから言ったんです。それにコレはウチだけの問題じゃないすからね。」
「千奈美だけの問題じゃない?……」
どう言う事だ。
千奈美関連の復讐なら他の奴には関係のない話しじゃないのか…なのに本人の問題だけじゃないって…
キーンコーンカーンコーン…
「あ、チャイムが鳴っちゃったね。それじゃあウチはここでまたみんなで集まりましょうね先輩達。」
そういって我先へと自分の教室へと戻っていく千奈美。
「自分の問題だけじゃないか…」
「どう言う意味なんだろうね。」
「因みにだが、姫乃はその辺の事について…」
「知ってて答えると思う?」
「………答えなさそうだな。」
だけど1人だけの問題じゃないなら俺は千奈美と他にいったい誰と何の約束をしたんだ?
小さい頃とはいえ小学生での記憶なんてほぼ思いだせないぞ。
山茶花達もかなり思い出すのに苦労したが…
コレはこれで骨が折れるな。




