暗晦の森の主、キョウカ
評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
レーヴェンマルク子爵家領 暗晦の森
「ッ!? 今……!?」
「あぁ、アタシも感じた……!」
ぞわりと感じ取り、ビクッと揃って身体を震わせる二人。
今生で感じたことがないと言っても過言ではない、とてつもなく強大な魔力。
頬が強張り身の毛がよだつ。額に汗がたらりたらりと何滴も伝い始める。
恐怖と絶望が交互に入り混じる感覚。そして二人の共通認識はーー
"ーー出会えば、確実に絶命してしまう。"
今の二人ではどうあっても、逆立ちしたって太刀打ちなどできまいと有無を言わさず身体に理解させられる。
これ以上先に進んではいけない、すぐに引き返せ、まだ間に合う、プライドなどかなぐり捨ててすぐにでも逃げ去れと、警鐘はいつまで経っても鳴りやんではくれない。
--だというのに。
それでも行き過ぎた強がりと高いプライドを持ち合わせる少女二人の行く末は決まっていた。
「さっ、さささ先に帰っても構わないぞ? この魔力に当てられてはどうしようもあるまい? それとも仕方がないから一緒に帰ってやろうか?」
「なっ!? ばっ、馬鹿言うな! アタシがこの程度で怖気づくわけないだろ!? むしろお前がさっさと帰ってママのミルクでも飲んでな!」
よせばいいのに、相手を煽ることでしか帰る口実を作ることが出来なかったのだ。
「それは此方の台詞だ! いいだろう、進んでやるさ、進んでやるとも! せっかく怖気づいた貧弱な雷魔術師に配慮してやったというのに、強情な奴め!」
「なにを~ッ!? へっ、お前こそどうなっても知らねーからな!」
当然に強がりの応酬は最悪の帰結を迎えてしまう。
自棄になったキリカがすたすたと早歩きでエミリアを振り解いて先へ進むと、負けてなるものかとエミリアも同じように歩を進めてゆく。
目線だけでバチバチと喧嘩しながら意地を張る様子は、まさに子供の喧嘩と称されるに相応しかったがーー
ーーこの数分後、文字通り二人は死ぬ程後悔することになる。
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ーー同時刻、暗晦の森。
「おいおい、まずいな。魔力反応から察するに多少の感知能力はあるはずだがどんどん魔物に近づいていくぞ!? ケラウノスちゃん、もう少し飛ばしてくれ!」
『わかったわかった、そう声を上げるな』
ただの子供二人でないことは、すぐに感知できた。
二人共、相当程度に高等な魔術師であることには違いない。
だがそれでもーー、行く先の魔物の相手はとてもじゃないが務まらない。
「こんなことになるなら、悠長に雑魚狩りなんてしなきゃよかった! この魔力反応、おそらく自由意志と知能を持ち合わせた人型に違いないぞ!」
『暗晦の森の主、と考えて間違いなさそうじゃな。この魔力に当てられては帝都も危険区域として放置するしかなかったんじゃろう。とはいえーー』
ケラウノスちゃんは一呼吸おいてから言葉をつなげた。
ーー儂らにとっては、所詮有象無象のひとつに過ぎんがな。
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「……愚かナ、寂滅せんと自ずから欲するとはナ」
--そして。
遂にはゼウス達の懸念が現実となってしまう。
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「誰だッ!?」
突如底冷えするような女声が鳴り響き、キリカ、エミリアの両名は足を止め、固唾を呑んで身構える。
やがて周辺に暗紫色の渦が現れ、中より声の主がずるりと姿を現してゆく。
見た目は随身姿に巻纓冠を被った美少女、肩まで伸びた紫髪は左右で綺麗に纏められている。
大きな蒼の瞳、陶磁器の様な白い肌に赤のいびつな紋様。
右手には身の丈程もありそうな、不気味に黒光りする大鎌が握られていた。
「ただの人間……って訳じゃあってくれないか」
ごくりと喉を鳴らして、一層険しい顔を見せるエミリア。
じりっと地を踏みしめて魔術障壁を展開し、目の前の少女に備え直す。
「あぁ、そのようなはずがない!」
キリカも同様に魔術障壁を展開。
それから腰の『霧蔭』に手を掛け、抜刀準備を整える。
しかしーー
二人が真剣な表情で身構えているのに対して、随身姿の少女は少しも動揺の色を見せなかった。
二人の実力を測るようにすっと目を細めた後、しばらくしてにやりと不気味な笑みを浮かべてから口を開く。
「いかにモ、我こそが暗晦の森の主キョウカなリ。憐れな連中ヨ、貴様らが我の放った魔物を退治してきたのカ……? それにしてはあまりにも貧弱極まりないガ……?」
随身姿の少女がそう言い終えた瞬間ーー
「ーーッ!?!?」
二人は突如、ずしりと身体に重みが生じるのを感じ取った。
一体何が起こったのだと、二人は動揺しているとーー
「ククククッ、アハハハハハ! なんと稚拙な魔術障壁ヨ!!」
二人の様子を確認して、随身姿の少女は甲高く大声をあげた。
「身体が……ッ、身体がまったく動かない……ッ!?」
「クソッ! 一体何をされたんだ!?」
慌てふためく二人に対して、随身姿の少女は満足げにゆっくりと口を開いてゆく。
「もう遅イ……この邪辣鏡魔眼を見つめてしまったのだからナ……」
そう言われたキリカとエミリアが随身姿の少女の眼を見ると、瞳が真紅に染まり発光しているのを確認する。
奴が現れた瞬間から魔術障壁を展開していたのに、あの眼光だけで抜かれたというのかと同時に驚愕する。
そしてーー、この頃から二人は酷く後悔し始める。
"まずい、身体どころか指の一本すらまともに動かせない……ッ!"
"純粋な魔術師の、アタシの障壁ですら役立たずかよッ! これほどまでに、暗晦の森の主は強かったのかよッ……!?"
もはや絶体絶命。
二人の強情さが招いたこととはいえ、二人はまだお互いに年端も行かぬ少女である。
それに指の一本すらまともに動かせず、ましてや得体のしれない絶対的強者がまさに己を殺そうと、一歩、二歩と此方に詰め寄ってくるのだ。
その整った美しい顔が恐怖に歪み、涙を浮かべようとも誰が責められようか。
しかしもう、全てが遅かったのだ。
こんなことになるのなら、こんな恐怖を味わうのなら、こんな最期を迎えるのならばーー
情けなく尻尾を巻いて逃げていればよかったと二人は後悔するのだがーー
「見たところ、力を過信した良家の令嬢といったところカ……? 安心するがよイ、二人纏めてそっ首刎ねて、仲良く魔物の餌にしてやル! あの世でミジメに啜り泣くんだナ! イヒッ、イヒヒヒヒ!!! さぁーー、死ねイッッッ!!!」
当然に随身姿の少女は逃がすはずもなく、両手で大鎌を軽々と振り上げてまさに二人の命を奪わんとする。
--のだが。
いつの世だってそうであるように、ヒーローは必ず遅れて登場するのだった。
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