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二人の帰結

評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

「そんなことよりッ! トーリス仮面様……いや、トーリス様が何処に行ったのか、手掛かりはないのかッ!?」


「まっ……まだ寝ぼけてんのかよ! トーリス仮面様ってお前……あいつは自分を人攫いだと声を張り上げて宣言するような、どうしようもない悪党だったんだぞ……!?」


 私の言葉に対して、エミリアは即座に事実を取り上げて指摘するがーー

 いまだ物事を表面でしか捉えられていない彼女に、私は苛立ちを覚えながらも反論してしまう。


「お前は……お前は何も、何一つとしてあの方についてわかっていない! 確かに最初の言動こそ、全くもって褒められたものではなかった! だが彼は、私達を気絶させる寸前にこう口にした! 『その尊い心持ちを忘れるな、堅物娘にお転婆娘』と!」


 そこまで私が言葉にすると、エミリアは私に対する説得をやめて、はっとした顔を見せ始めた。

 きっと、彼女も何か彼に対して思うところがあったのだろうがーー

 そんな彼女を更にわからせようと、私は一層、弁に熱が入ってしまう。


「これがお前の言う、どうしようもない悪党のかける言葉だと本当に思うか!? それに……決して私達と同じ位の年齢の少年が口に出来る言葉ではなかった! 私達を心底気遣った、父性と包容力に溢れる優しい一言だった! それに、彼の目出し帽から覗かせる眼は、とても深く暖かな眼差しをしていた!」


 私は私の熱弁に対して、エミリアが真剣な表情で話を聴いていることを確認して、ひとまず満足した。

 それから一旦心を落ち着かせた後、今度は自分自身を納得させるように、再度ゆっくりと口を開いてゆく。


「今にして思えば……暗晦の森の主を制してから私達にかけた言葉にも意味があったのだ。きっと私達の実力不足を指摘して、今後己の軽率な行動を戒めるようにと、私達に諭してくれたのだろう……」


 私はそこまで自身の考えを説明しながら、同時に彼が言った言葉を反芻する。


『ほほぉ、成程成程……。暗晦の森の主にばかり目がいってしまったが……お前達もよく見ると飛び切りの上玉じゃないか。しかし、いまだ奴の魔眼の力を跳ね除けられないとは、なんと未熟で出来損ないの魔術師達よ。喧嘩は相手を見てやるべきだったな。まぁ、お前達が身の程知らずだったおかげで、俺の懐は温かくなるんだがな』


 ーーそうだ、やはりそうであるとも。

 今にして考えてみれば、絶対にそうであるはずなのだ。

 私達は何一つ怪我を負うことなく、全くの無傷で森から脱出させてもらったという結末から考えれば、私の考えるそれ以外に全く意味のない言葉じゃないか……ッ!

 

 そもそも彼の言う通りに私達は攫われることは無かったし、当然ながら彼の懐が温かくなったはずもない。

 それに気絶させられる前のあの言葉や、神聖魔術による強力な魔術結界が私達の周囲に張られていたことも私の考えを裏付けるものだ。

 つまりは、私達を暗晦の森から無事に生き延びさせて、今後生きていく為の十分な教訓となる様にーー

 そんな風に彼は言葉を選んだのだと、私は確信できてしまったのだ。

 同時に、彼の言動と行動について、もはやどれをとっても彼の優しい心遣いがあったことまでもをーー

 

 そして何もかもを気付いてしまった私の思考の行く先は、やはり今回の出来事の根底にある問題だった。

 一体……彼は本当に、何者なのだろうかと。


 私は再度自身の考えをゆっくりと述べ始める。


「何か……何か理由があるのだろう。彼が自分の正体を隠さなければならない理由が……。そうでなくては、彼ほどの成熟した精神を持つ男が、わざわざあんな悪趣味な被り物をして、典型的な小悪党のような振舞いをする必要などないはずだ。それに、暗晦の森の主をいとも容易く制してしまう程のとんでもない実力者であり、更には神聖魔術使いとは……彼の正体は一体……」


 しかしここで私は、ようやくにして気付いたのだった。

 目の前の、この年にして既に魅力的な女らしい身体付きをした、ありとあらゆる男子からの注目を集めに集めている、派手目な美少女の眼の色がすっかり変わってしまっていることに。


 --だからこそ。


「い、いや、違うな。すまんな、お前の言う通りだったエミリアよ。奴はどうしようもないただの悪党だ、うん。カッセルフェルト公爵家令嬢のお前が目に掛けるような存在じゃなかったな」


 本能的に嫌な予感を察知した私の言動は、まさに逃げの一手だったのだがーー


「……いーや、アタシにはそうは思えねぇな。実に的を射た考察だったと思うぜ。おかげでアタシもあいつの魅力に気づかされちまったみたいだ」


 目の前の女はニカッとした笑みを浮かべながら、私を揶揄うような表情でそう言うのだ。

 それでも私は諦めが悪く、なんとか興味を逸らそうとするのだがーー


「な、何を馬鹿な。お前の考えすぎだ」


「そうか? じゃあ、お前にとって命の恩人のトーリス様は今後アタシの男に決定だな! はー、良かった良かった! そんな男、今後巡り合うことなんてねぇだろうし!」


 エミリアがそうあけすけに、聞き捨てならない言葉を発するものだから、頭に血が上ってしまったのだ。


「ば……馬鹿を……馬鹿を言うな! 私が最初に目を付けた男性なのだ! お前は潔く身を引け!」


 だからこそ私は態度を変えて、くってかかるようにそう言い放つのだがーー


「いーや、駄目だね! そんな話を聴かされちゃ、ますますまな板の婿になんかさせられねぇよ!」


「ま、まだ発展段階なだけだ! それに私も、お前のような馬鹿女に婿入りなどさせられんわ!」


「はっ、アタシの身体を見てみろよ? クラスの男子からもチラチラ胸元を見られていること、お前も知ってんだろ? トーリスも首ったけになること間違いなしだ! 奴もオトコノコだぜ? お前の洗濯板じゃ悲しみにくれるに決まってるだろうが!」


「う、ううう五月蠅い、黙れッ! 今に私も豊満な胸を得ることになるッ! それかお前が萎め、この脳内ピンク女め!!」


 その帰結は私達の口喧嘩にお約束の、頬をぐいぐいと引っ張り合う取っ組み合いへと発展してしまったのだった。


「大人しく、しててくれませんかねぇ……」


 わーきゃーと騒ぎたてる、キリカ達のあまりにも低レベルな口喧嘩に、老齢で御洒落な御者がはぁと一つ溜息を漏らした。


 ーーしかし、彼はまだ知らなかった。


 自身が仕えているメルツィーナ家の、それも彼女達と同世代の御令嬢であるルルイ=フリードマン=メルツィーナでさえもこの馬鹿みたいな輪の中へと入ることになり、更には同じ男を取り合うことになるとは。

 そしてその好敵手として、天界でも比類なき最強の武器、果てには魔物の美少女までもが名乗り出ることになるとはーー


 --更には。


 いまだ地上に現れることのなかった、天界でも比類なき最強の()()までもがそうなるとは露知らずにーー

もうすぐ第一章が終わります!

ここまでお読みいただきありがとうございます!


作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします

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