それぞれの決意
評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
「……随分遅かったのう、トーリス仮面。絶世の美女を待ちくたびれさせるとは、実に罪作りな悪い男じゃな」
交戦地点まで戻るやいなや、ケラウノスちゃんの可愛らしくもぷくっとむくれた表情に出迎えられて、思わずふっと笑みが零れる。
俺はそのまま悪態をつくケラウノスちゃんへとゆっくりと歩み寄る。
そしてにこりと微笑みかけた後、頭を優しく撫で始めると、じと目でありながら、しかしまんざらでもない表情で大人しくしてくれていた。
やっぱケラウノスちゃんは最高に可愛いな。一生俺に付き添って欲しいまである。
「すまんな、ケラウノスちゃん。少しばかり魔術結界に魔力を込めていたから時間がかかったんだ。ただ放置しておくわけにもいかないだろ? それに……悪い男といえばまさに見た目通り、といったところじゃないか?」
冗談まじりで言葉にした俺はケラウノスちゃんの頭を撫でるのを中断して、絶望的に趣味が悪い目出し帽を剥ぎ取って懐にしまう。
そんな俺の様子を見て、ケラウノスちゃんは心底呆れた表情で口を開いてゆく。
「ちゃん付けはやめろというのに……。しかし……儂には黙って、いつのまにそんな被り物を用意していたんじゃ? それに通りすがりのマスクマンでトーリス=ガリノ=マスクマンとは……悪ふざけにも程があるじゃろ」
そこまで話すと、ケラウノスちゃんは一呼吸置いてから真剣な表情で再度口を開いた。
「それにお前が人攫いの汚名をかぶるなど……儂も気分の良いものではない……」
「……怒ってくれているのか?」
俺がそう返答すると、ケラウノスちゃんはギロッと睨み付けてくる。
しかし本当に、少しの容赦もない怒った顔までもが反則級に可愛いな。
「正体を隠すためだ、仕方ないだろ? それからこのマスクはな、密かにメイドのマリさんに作ってもらってたんだよ。こんな馬鹿みたいな名前で、しかも人攫いの最低最悪な人種だからこそ彼女達も俺に固執することはない」
更に俺はケラウノスちゃんに対して弁明を続ける。
「それに、彼女達には十分教訓になるように話をしたつもりだぞ? 己のプライド、軽率な行動が時に大きな災いを招くということを彼女達は今後忘れないだろう。俺は別に女にモテたいから地上に舞い降りたわけじゃない。難しいだろうが理解してくれ」
そこまで俺が弁明するとーー
しばらく間をあけた後、やがてケラウノスちゃんは再度呆れ果てた顔を見せた後、先程交戦していた暗晦の森の主を見ながら口を開きだした。
「……それで? コイツはどうするんじゃ? こんな見た目じゃが、今まで何人の人間がコイツの手にかかったかわからんハズじゃ、遠慮は要らんじゃろ。さっきも言っていたとおり、魔力を根こそぎ奪った後、奴隷商にさっさと売りさばいて、今夜はその金で大豪遊か? それとも……次に目覚めた時はベッドの上だと言っておったから、まさか自分用に……?」
引き気味にそこで言葉を区切るケラウノスちゃん。
あのさぁ……あんなのその場の嘘に決まってるだろ。まにうけるのやめて、ほんとに。
ケラウノスちゃんみたいな可愛い幼女に嫌われたら死んじゃう。あと、自分用ってどういうことよ?
てか……見た目麗しい美幼女がそんなこと考えちゃだめだぞ!
俺はそこまで考えて、はぁと溜息をついた後、ゆっくりと口を開いてゆく。
「そんなわけないだろ……。曲がりなりにも俺は人々の信仰を集める神だぞ? ……確かに彼女は何人もの人間に手をかけただろうが……だからといって、たとえば奴隷商に売りさばくなんてのは"非人道的"行いってやつあたる。ここは人類の国、郷に入れば郷に従えだ。だからこそ、"人道的"処置をとるべきだと考えている」
「人道的処置のう……? ならば……帝国に引き渡すつもりか?」
「いや……それではどの道彼女の運命は変わらない。彼女の事情も考慮すべきだろう。取り敢えず屋敷まで秘密裏に運ぶぞ」
最初はラドルフシュテット帝国民、ひいては人類の敵である暗晦の森の主を始末するつもりだった。
ーーだが、彼女の姿を見てその考えは変わった。
あの幼い見た目で魔眼を使いこなし、それでいて魔力量も人間の水準ならば申し分はない程だ。
だからこそ、彼女の生涯は恐らく、想像を絶する程の恨み辛みに染まっていたに違いない。
とにかくーー何をするにも本人から事情を聴きだしてからだ。
それになによりも、俺は最期の瞬間、見てしまったのだ。
年端もいかない少女が決してしてはならない、地獄の苦しみを彷彿とさせるような苦悶の表情。
そして、そんな彼女にはあまりにも似つかわしくはない一滴の涙までもをーー
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「ここは……?」
「ようやく起きたか」
ここは……どこだ……?
それに、どれくらい眠っていたのだろうか……?
隣のエミリアに声をかけられた後、私は周囲を確認して、どうやら馬車で揺られながらどこかに向かっているということを理解した。
そんな私の様子を見て、ふっと何か安堵したかのような笑みを零しながら、エミリアは簡単に状況を説明してくれた。
「アタシ達は森へ捜索しに来てくれたヴィラ様に保護されたんだ。今はヴィラ様が用意してくれた馬車で、これからアタシ達は揃いも揃って父さん達の説教三昧ってところだ」
そうか、ヴィラ様が……。
それは大変な迷惑をかけてしまったな。
後で御礼を言わなければ……。
しかしーーそれより、何よりも優先して確認しなければならないことが私にはあったのだ。
だからこそ、すぐに私はエミリアへと口を開いた。
「そうか……。あの後のことは……?」
何故なら、私達が気絶させられる前にーー
『……その尊い心持ちを忘れるな、堅物娘にお転婆娘』
私は確かに……確かに奴の唇がそう動いたのを気絶する前に確認したからだ。
奴が突然登場してからの物言いは、到底褒められるようなものではなかった。
人として侮蔑されて然るべき言動ーーどうしようもなく人倫に背いた、極めて愚かな人種のーーそして、取るに足らない悪人の、まさに疑いようのない完璧なそれだったはずだ。
--だというのに。
奴が最期に口にした言葉は、奴に対する私の中の印象をがらりと、全てを変えてしまったのだ。
まるでーーそうだ、あの言葉はーー
あの年の少年には決して似つかわしくはない、全てを包み込むかのような父性を纏った言葉だと言っても過言ではなかった。
それに、奴の目付きは確かに一見すると悪く見えたがーー理解できるものにとっては慈愛に満ち溢れた、深く暖かな眼差しだったと今では思う。
何故私がそんな風に思うかと言えば、男手一つで大切に育ててくれたお父様から向けられるそれの本質に、本当にそっくりだったからだ。
そんな私の考えはよそに、私に尋ねられたエミリアはこれまでの経緯について、順を追って話してくれた。
気づいたら暗晦の森の入り口に放置されていたこと、しかも神聖魔術による強力無比な結界が張られていたこと、それも奴が施した可能性が極めて高いこと、それ故にこれから奴に対する大規模な捜索活動が行われるであろうこと。
そこまで話を聴いた私は、全てを完全に理解して確信してしまう。
そうだ、やはり奴こそーー否、あの方こそ、命を救ってくれた恩人であり、私が敬愛するお父様のように立派な存在でありーー生涯を通して尽くすに値する私の理想の男性なのだということをーー。
「その……ゴメンな? アタシが煽る形であんな危険なとこに連れてっちまって……」
だからこそ、この時の私は、何よりも彼を優先したい気持ちが前に現れて、つい口にしてしまったのだ。
後に目の前の女が、彼に対する好敵手となるとは、まったくもって思いもせずにーー
「そんなことよりッ! トーリス仮面様……いや、トーリス様が何処に行ったのか、手掛かりはないのかッ!?」
次回アップは明日、明後日予定です!
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