古のお話
_ _ _これは古の物語_ _ _
大王国メルディア
王宮内大広間
玉座の間
ここにとある王と一人の騎士がいた。
王の名はフラグナス。
騎士の名はライノスと言った。
「…神どもの軍勢はついに此処まで狙ってくるとは…恐ろしいものよ…頼むライノス、貴公はこの流れを止め、民を生かすことは出来るか。」
王はライノスに訪ねる。
ライノスは跪き、答える。
「はっ、王よ…すみません…私の命なくしてこの流れを止めることは不可能です…」
王が嘆く。
「そうか…貴公が殉職しなければいけない状況というのか、それは少し王国的には辛すぎるな…。」
なぜフラグナスはライノスを失うことを怖がっているか。
それはライノスが王国最強の騎士だからだ。
王国はライノスの死を恐れている。
もしライノスが死んでしまったら、周辺国家から王国が狙われる可能性がある。
しかし、ライノスが戦わなければ王国、周辺国家も神の手にて消えてしまう。
どちらにしよ王国は詰んでいるのであった。
「……そうか……。」
ライノスが何かをつぶやいた。
王はライノスのつぶやきにすかさず反応する。
「何かいい案が思い付いたのか、ライノスよ!」
ライノスはこう答えた。
「王よ、私は禁術とされる、ある魔法を知っています。」
「その魔術の名はなんという…。」
「…転生魔術です。」
この世界では生きとしものは死んだ後輪廻の和を通り
来世に命を繋げるという事が信じられている。
転生魔術は死後記憶を持ったまま新たな命に宿る。
しかしそれは本来産まれるはずだった命を犠牲にして成功する術だった。
まずは死ぬ事が必須である。さらに、魔術の類では死んでは行けない。必ず戦場で、命を散らして戦わなけばいけない。
更にハイリスクノーリターンという言葉が合う様に成功確率はものすごく低い。
たとえ成功したとしても身体の一部のみや上半身だけの姿のみで産まれることがある。
それが母体の中から産まれてくるのである。
産まれた時、魔術師が近くにいると転生者かがすぐに判別出来る。
それは何故か、答えは簡単だ。目が違うのだ。
普通の赤ちゃんの目には宿らない、感情が宿っているのだ。
そして、本当は健常に生まれるはずだった赤ちゃんが、転生者のせいで障害を持って生まれてしまう。
妻は泣き、夫は憎むだろう、失敗した転生者に。
何故我が子に転生者が宿ったのかと…
転生魔術は失敗例の報告しか無かったため、いつしか確実に失敗する禁術とされて使われなくなった。
それをライノスは覚えていたのだ。
「転生魔術…その手があったか…!。」
「しかし、もし転生魔術を唱えるとなるとそれ相当の魔力を使うことになります。」
「そう、なのか…。」
転生魔術はまさに輪廻転生を無視する魔術であるため、そもそも唱えるのには最上級に魔術を扱える魔術師が何人、何十人が必要である。さらに、必ず周囲の魔力が枯渇する。
ライノスは死ぬのが怖かった。しかし、自分が神の軍勢の中に行かなければこの国が救えないのは分かっていた。だからこそ、一か八か転生魔術を提案してみたのだ。
「お願いです、王よ、私に、転生魔術を…!」
ライノスの目は真剣だった。
王は焦った。普段ライノスは自分の欲は無く、自分の意見を言うことは無かったからだ。しかし、ライノスは自分の意見を言った。転生魔術をかけて欲しいと…。
王は少しの間考え、そして答えを出した。
「私は……、貴公に転生の魔術を使おうと思う。」
「ありがとう、ございます…!」
「しかし、私は通常魔術は扱えることが出来ぬ。さらに、これから大人数の魔術師を私は集めることは出来ぬ。」
「いえ、王宮魔術師達がいます。」
「何!帰ってきたのか…あやつらが…!」
王宮魔術師。それは王により任命された3人の最強の魔術師である。
3人の魔術師は通常の魔術師の何倍、何十倍との魔力を持っている。
「あやつらなら、もしかしたら…!」
「はい、あいつらならさっき通信魔術を使い話しました。」
「それで結果はどうだったか?」
「協力してくれるようですよ。」
「ならば準備にかからねばな。」
王はまずライノスの通信魔術を通じて王宮の魔術師たちに玉座の間の扉の警護、さらに王宮全体に魔術師を巡回させ、最大限の警戒態勢にした。
また、玉座の間の窓を開けた。
そして転生魔術の準備が終わった。後は王宮魔術師を待つだけであった。
「準備は出来たぞ。本当に、やるんだな。」
「はい。覚悟は出来てます。」
「そう、か。」
王は玉座の間から立ち歩き、王宮の広場に出た。
「近づいてくるな、あやつらが。」
「来たよ、ライノス〜!」
「まさかお前がわしらを呼ぶとはな!」
「先輩の願いなら聞かないとね〜!」
何処からともなく、声が聞こえた。
声が聞こえた数秒後、広場に3人の魔術師達がいた。
そして、三人こそがが人間系種族最強の魔術師である。
ちなみにライノスも王も例外ではない。
一人の魔導士がライノスの前に行って、上目遣いで尋ねた。
「ねぇさ、本当に転生の魔術を掛けちゃっていいの…成功率が低いのに。私は怖いよ。失敗しちゃったらさ。」
3人のうちの魔術師の中にいた眼鏡を掛け、薄緑色の髪、そして少し幼い顔の少女がライノスを心配した。
だが、幼い顔で騙されてはいけない。
幼女みたいな見た目のこの少女の年齢は軽く1000歳を過ぎている。
大抵の人はそんなに年齢をいってないでしょと軽口をいい冗談として受け流す。
しかし、彼女が1000歳だと確信を持つとある顔のパーツがある。
それは耳部分である。
その耳は通常の人間とは違い、丸くなく、先にとんがっていた。
彼女は妖精である。
更にこの世界の妖精の種族で言う始祖の妖精である。
遥か南にある妖精の森にある国家、妖精国シルファの国の王。
彼女は妖精達の長でもあった。
彼女が声を掛け終えると、もう一人の魔術師もライノスを心配し、ライノスの近くまで行った。
「…先輩以外には全く神と戦うことは出来ませんでしたよ…自分はとても悔しいっす。人族では神とはまともに戦えなかったってことの証明ですよ全く…うぅ、俺も先輩みたいに強ければ…」
ライノスを先輩として慕っている魔術師は中肉中背の少し筋肉質の青年である。
年齢は20代前半位の顔立ちで、優男の顔である。
しかし彼も見た目通りの年齢ではない。
彼は噂だと200歳と言われている。
しかし、見た目の上ではわからない。
だが200歳だと証明するかのように頭にはある特徴的な物があった。
それは角である。
その角は鉛みたいに固く、そして黒々しい。まるで光を吸収するかのようなとても威厳のある角であった。
この世界では、角があるのは魔族だと言われている。
彼は魔族であった。
更に彼は魔族最強の魔術士であり、遥か北にある魔の国の王であった。
つまり、『魔王』と言うことである。
この時代には『魔王』と言う名は、魔族で強い者の称号であり、決して魔王=悪という概念は無いのである。
そして彼が一通り話した後、最後の魔術師がライノスに話しかける。
「未来のことは頼みましたぞ、ライノス。わしは今を必死に生きるからな。ガッハハハ〜!」ととても大きな声で笑った。
三人目最後の魔術師は髭からとても長く白い髭。さらに、手にはシワがあり、100歳という高齢である。
だが、ライノスを見るこの目の鋭さだけはただの100歳とは違っていた。
この目は激戦という激戦を乗り越え、仙人とも思える目をしていた。
しかし、彼ははただの人族である。
妖精や魔族ではない、純粋な人種である。
しかし、才能に恵まれた人族であった。
5才で当時の魔術を全て覚えたり、10代には当時の彼の師匠から免許皆伝をしたり、20代からは王宮魔術師になり新しい魔術を開発してきた。
彼の偉業を数で表すとなるととても数えられぬくらいある。
そのくらい彼は才能に恵まれた人であった。
普段はローブを着ていて分からないが、中味は物凄く鍛えている。
まるで戦士みたいな風貌であった。
100歳=誰が死にかけというイメージを壊したレベルを想像してほしいぐらいである。
しかし、彼は魔術師だ。
何故彼が体を鍛えているのか、それは、とてもとても単純な理由であった。
ボケないため、ただそれのみである。
「ああ……、……、……、準備は出来ているか?」
王は尋ねた。
「出来ています。」
「出来ていますよ。」
「出来とるわい!」
3人の魔術師は準備が完了していた。
杖を前に構え、三人の魔術師は一斉に魔術を唱えた。
「「「今から、転生の魔術を始める!」」」
その一言を唱えただけで周囲の魔力が三人の元に集まってきた。
転生の魔術は一言一言にとてつもない魔力が籠っている。
それは普通では考えられない量の魔力である。
この魔力の量は普通の人には耐えられないレベルである。
しかし、彼らは人種最強の魔術師達である。
この魔力の総量に耐えられるのであった。
そして次の術式を唱える。
「「「古より存在する時越えの神よ、今こそ我らに力を授けたまえ、」」」
そして周囲の魔力は全てライノスの前に集まり、そして止まった。
そして最後の術式を唱える。
『クロッカー・ワールド!』」」」
周囲のが魔力全てライノスの体の中に入っていった。
「あああああああ!」
ライノスは絶叫を上げた。
そして、王宮魔術師は驚いていた。
いつどんなとき時、でも嘆くことは一切無いあのライノスが、と驚いている。
王も唇を噛んで見ている。
しかし、転生の魔術はこれだけではない。
転生の魔術には魂を保護をしてくれる機能は存在しない。そのため、ただ転生の魔術をかけても転生はしないのである。
そのためには魂を保護する、根源魔術を掛けるしかないのである。
王宮魔術師の三人は根源魔法をかけることが出来ない。
では誰が、根源魔術を掛けるのか。
この中には一人しかいない。
そう、王、フラグナスであった。
王はあり得ないほどの魔力を操れるが、根源魔術以外は使えない。
魔術のひとつですら唱えられないのである。
その昔王は悪魔に呪いを掛けられた、根源魔法以外を唱えられないという。
根源魔法は魂に関する魔法、つまり魂を守ることしか出来ない魔法である。
基本は人が死ぬときに魂を保護し、確実にアンデットにならないようにしか出来ない。
王はそれを恨めしく思っていた。
根源魔法は戦闘で使えないの、だと。
しかし、王はこの時思った。
根源魔術は今、この時、ライノスのためにあったのだと。
そして転生の魔術に必要な根源魔術の術式を組み立てていく。
「ライノス、苦しいとは思う、しかし、まだ耐えてくれ!」
唱える前から既に周りの魔力を集めていた。
それは周囲の魔力が枯渇するかもしれない勢いだった。
そして魔力が枯渇する寸前、王は十分な魔力を得た。
そして、唱えた。
「古より存在する数多なる死を司る神よ、今こそ我らに力を授けたまえ、『ソウル・ガード!』」
根源魔法を唱えたとき、より一層ライノスの顔が険しくなった。
「うわぁ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁァ!!!」
ライノスは腹の底から叫んだ。
四人は必死に魔術を発動をしながら願っていた。頼む、耐えてくれ、と。
転生魔術に失敗したら………と、内底でも迷いがあった。
しかし、転生魔術は成功させないといけない。四人は心を無にして魔術を続けた。
そして、魔術をかけ続けどのくらい時間が過ぎたのだろうか。
それは誰にも分からない。
王や3人の魔術師は精根尽き果てて倒れていた。
だが魔方陣の上には、一人の若者が立っていた。
ライノスは転生の魔術の痛みに耐えきった。
そう、転生の魔術は成功したのであった。
「皆、有り難う。これで俺は安心して皆を守れる。」
ライノスはそう言い切った。
その言葉は、みんなの心に希望を与えた。
同時に悲しみも与えた。
「っぐっ、くぅ…、年とは嫌なものだな、すぐ泣いてしまうわい。」
「………さん、安心してください。私は死にませんし、皆を守り抜きます。これが私のこの時代の最後の仕事なだけです。」
ライノスは……にそう言った。
ライノスは、もう彼とは会えないとわかっていた。彼は人間なのだ。
だが、彼の子孫には会えるのであろう。その時には挨拶をしようとライノスは誓った。
……がライノスの前に来て、そして涙ながらに抱きついてきた。
「ライノス、うぐっ…私、あなたが転生して何百年、何千年、何万年たっても必ず生きてるから、生きてるから、絶対に私のとこ…妖精の森に来てよ…」
「………ちゃん。ああ、必ず会いに行くから、その時まで待っててくれ。俺は必ず……ちゃんに会いに行く。」
………は小さな声で、独り言を呟いた。
「………もう、ちゃん付けはやめてって言ったのに…もう、馬鹿…」
その独り言は、多分喜んでいたようだった。
そして……は泣き止み、後ろに下がった。
………はライノスの前に行き、
「先輩、僕は魔族を統一して、魔族の国を作って、先輩を迎えられる国を作ります!」と宣言した。
ライノスは、……が魔族の国を作るという夢があったのに驚いた。魔族の国を作るのは大変な労力と力が必要なのを知っている。
その昔、ゴブリン達が魔族の国を作った。
ゴブリン達の国は物凄く綺麗な政治だった。
しかし、人間達は魔族の統一による侵略を恐れたため、人間たちの都合で、その国は滅ぼされてしまった。
そして人間は魔族を生き殺しにするため、この国から離れられないように封印を施した。
土地は人間の土地に比べれば僅かのみ。
魔族には人権もなく、すむ場所が少ない。
今はこんな感じだ。
いずれ人間にとって交友的な魔族の国を作れば、そんな差別も減るかもしれない。
そして、平等な世界が作れる、という………の考えがあったからこそ、応援したくなった。
「そうか………。あぁ、待ってるとも。」
「ありがとうございます、先輩!」
魔族の寿命は長いが、………はもしかしたら転生する頃には死んでいるかもしれない。
けれど、転生してたら必ず魔族の国はあると信じている。
最後に王がライノスの前に来た。
「では、行ってこい。我が王国は、貴公のお陰で不滅となったのだ。」
「そうですね、王…。あのお願いをもうひとついいですか?」
「なんだ、言ってみよ貴公よ。」
「最後に貴公ではなくて、ライノスと言ってください。」
「そうか、それではライノス、私からも願いがひとつある。」
「何でしょうか。私にできることなら何でも宜しいです。王は私の第二の親なのですから。」
「うむ、ライノスには世話になってばかりだがそう言ってくれると私の心はとても助かる。願いというのは、もし、この王国が残っていて、繁栄して、未来の子孫がいるとしよう。その時に未来の子孫どもが府抜けていたら、そいつ等を正して欲しい。」
………も賛同した。
「先輩、僕もそうして欲しいですよ。魔族の恥ですからね。」
………は、
「私はしないでいいな。だって生きてるんだから。私から語り継ぐよ。」
「おっほっほ。長生きは良いもんだな。もうワシはすぐ床につく始末じゃがな。けれど、少しは人界の役に立つとするか。」
………は後どれくらい生きられるのか。
本当はもう少し一緒にいて、看取ってもやりたかった。
けれど、俺には使命がある。
それを放り出すのは、この国を捨てたも同然。
「王、皆、有り難う。では、行ってくる。」
ライノスは装備を決めそして城の外に出た。
城の中から、
「先輩、頑張ってください!」
「待ってるから、絶対待ってるから!」
「ワシも最後にまた何か伝説を残すとしようぞ。」
「王国は、いつでもお前を歓迎する!」
と皆それぞれと遠ざかってくライノスにてを振った。
「俺は、最強の騎士…、最強の騎士なんだ。この力で皆を護るんだ!うおおお!」
そう言ってライノスは神の軍勢に一人突っ込んでいった。
ライノスは徐々に神々を倒していった。
最初は上手く攻められていた。しかし、少しづつ傷を負っていった。しかしライノスはそれでも歩みを止めず、無難に突っ込んでいった。
そして最後の神との一騎討ち。
ライノスは持てる全ての力を出し切し、そして、勝った。
ライノスは背中から倒れた。
ライノスに破れた神は消える直前にこう言った。
“これは一時的に我らが現界しないのみ。
また我らは人を襲うだろう…、そして、今度こそ過ちを改めるのだ…。”と言った。
だがもう全身の感覚がないライノスにはこの言葉は聞こえていなかった。
「ああ、俺は…みんなを守れたんだな…」
ライノスは最後に右手を上げ、そして右手は落ちた。
そしてライノスこ意識は闇の中へ消えていった。
そして数多の時が過ぎていった。
とにかく日本語の問題等があったので修正しました。