20 世界樹
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天を貫く大きな大樹。根元近くに大きな洞を持つ、最大の大樹はその名にふさわしい威厳を放っていた。
「あれ? あそこに人だかりが出来てる」
周囲に沢山の見物客。その中で騎獣を伴い、武器を手に集まった集団は、まるでこれから戦争にでも向かうような雰囲気がある。
「貴方達も討伐隊に参加するのかしら?」
見物に来ていたらしい女性に声をかけられる。
「討伐隊……?」
「あら、違ったかしら」
「説明してだけるとありがたいのですが……」
「あれは、以前から化け物の討伐をやってきた人達なのよ」
「依頼を受けていたと言う人達か……!」
いつぞやに募集されていた、化け物討伐の依頼。なまじ必ずしも登録せずとも戦うことが出来、登録された際のデメリットの所為ですっかり忘れていた。
「皆やる気満々だなあ」
「アカネ達じゃねーか!」
討伐隊として集まっていた中、たった一人で騎獣に乗っていた人物がコガネ達に近付いてきた。
「えっ、キア!?」
「あんまり危ない橋を渡りたがらないお前らがこんな所に来るとは思わなかったぜ」
しばらくぶりの再会となる一匹狼のキア。騎獣のファードラゴンと共に黒を中心としたごつい鎧をつけ、ふふんと得意げに笑った。
「キアらしい格好だね」
「漆黒の鎧が似合ってるだろ?」
「うん、中二病らしくて……いや、なんでもない」
化け物に効果の高い装備が黒の割合が高いためか、以前にもましてキアは黒っぽい恰好をしている。
「色は同じなのに、この違いは何だろう……」
「漆黒の騎士と優秀な忍者の違いじゃないのか」
「俺は忍者なのか……」
「本人はただ地味なのが好きなだけだけどね」
「で、お前らもここに来たからには参加するんだよな?」
「じ、実はまだ保留……」
「もうすぐ、創造主様が作戦の説明に来る。じゃあな!」
「あっ」
話も聞かずにキアは元の場所へ戻っていく。
「行っちゃった……」
「ていうか、これ、登録もしてないのにここにいてもいいのか?」
「どうだろ……後ろの方にこっそりいる?」
「つーか、アイツは一体どこ行ったんだ……!」
わあっという大きな声が上がる。視線を辿って上を見上げれば、錫杖を持ち、大きなドラゴンの背に乗る四十代ぐらいの男性と、クラドの姿があった。
「皆よく集まったな! 初めて見る顔も多いだろうが、私がこの世界スーアの創造主エンだ!」
「私はそのサポートをします、クラドと言います」
「今回の作戦内容は、半分は討伐だが、半分は調査だ」
化け物を倒そうと張り切っていただけに、どよめきの声が広がる。
「知っての通り、君達の力はもともと我々が授けた物。当然同じ力を我々も持っている。使いこなすのは君達自身の力だが、何も君達だけが戦っているわけではない事を覚えておいてほしい」
「更に水を差すようで悪いが、戦う時は正義感などで戦わないでほしい。敵は外の世界で私と敵対するものであり、手段を選ばず向かっては来るが、根っからの悪人などではない。ここで戦おうとする者は、皆それぞれの個人の意思で、目的を持って戦え。恨みつらみなども禁止だ!」
「さあ行け! お前達の生き方を奴らに見せつけろ!」
「うおおおお!」
演説が終わると、討伐のために集まった人々は一斉に持ち場へ向かって飛びだっていく。あとには見物に集まった人々と、コガネ達と同じような理由で聞いていたと思われる人々が数人残っていた。
「君達は、彼らほど命をかけようとは思えなかった人達かな」
「創造主様!?」
創造主はドラゴンから降り、集まった人々と同じ目線で話を始める。
「彼らは若者らしい抑えきれない熱さを持った連中だから、ああ話したが、君らにはもっと突っ込んだ話をした方がいいだろう?」
「えっと……」
「そうかしこまらなくてもいい。私はこの世界がある限り君らを守る立場ではあるが、本来は君達と同じ人間なのだから」
「エン様、私はどちらのサポートに回りましょうか」
「クラドはとにかくあちこちを見て回ってウェブリアに教えてくれ。話が長くなりそうだが、ウェブリアを通じてこちらでもサポートをするから」
「分かりました」
クラドはそう言ってふっと姿を消す。
「ところで、ここにいる中で化け物と会った事がある人物はどれだけいるかな」
集まった人々の半分以上が手を上げる。
「では、化け物と話した事がある人物は?」




