今となってはよくあることだが……?
新雪の様に綺麗な白髪に、日焼けを知らない白い肌、まるで芸術品の様に綺麗な顔と身体にファンタジーな要素を詰め込んだ衣服。目が覚めたら、とんでもない美女が居た。
「お、目が覚めましたね。んんっ!……おお、死んでしまうとはなさけないっ!」
……急に何だこの人。死んでしまうとはなさけないとか、俺は別に死んでなんか──。
「っ!?」
濁流の様に流れた記憶に俺は顔を顰める。
俺は死んだ。夜遅く、コンビニで買い物をし終えた帰路の途中。とんでもないスピードで走っていた車に轢かれそうになっていた女性を助けようとして代わりに跳ねられたのだ。
「……死んだのか、俺」
「ええ、そうです。あなたは女性を助けるためにその身を投げ捨て、その命を全うしました」
「そう……ですか……あの、女神様であってますよね?」
「はい。私はラファルネーベ、愛称はラーファちゃんです。どうぞラーファとお呼びください、けんくん」
「俺の昔のあだ名を勝手に呼ばないでもらえます?」
親しみやすい……というか親しみやすすぎるだろこの女神。普通女神ってこう……厳かというか、格式高いというかそんなイメージだったんだが。
「ふふ、こっちの方が話しやすいと思いまして。そして次にけんくんは」
「「あ、人の心も読めるんすね」」
「と言う」
「ハッ!」
「……ふふっ、完璧に決まりました。一度やってみたかったんですよねこれ」
口元に手を当てくすくすと楽しそうに笑うラーファ。女神も〇ョジョ読むんだ……。
「あの、ラーファさん」
「呼び捨てで構いませんし、敬語も必要ないですよ」
「……じゃあラーファ、聞きたいことがあるんだが」
「ふふ、あなたが命を賭して助けたあの方は無事ですよ。ちょっと手を擦りむいてしまいましたが」
「……そうですか」
ラーファの言葉に俺はっと胸を撫でる。無事で……よかった。
俺は心の底からそう思う。普通なら自分の死にもう少し感傷的になったり、酷く動揺したりするのかもしれない。でも俺は寂しいとも悲しいとも思わない。むしろその逆、死ねてよかった。誰かのために、命を使うことが出来て良かったと心の底から思っている。
大学を卒業してから就職活動に失敗し、30を超えてもなお無職のままだらだらと惰性で生きてきた。変わろう、変わろうと思うだけで何も行動を起こさなかったダメ人間。親にただひたすら迷惑をかけ続けただけの人生。そんな役立たずの俺が最後の最後に誰かの役に立てたのだ。悔いが全くない訳ではないが、おおむね後悔はない。終わりよければ何とやらという奴だ。
「……さて健一さん」
「はい」
先ほどまでとはどこか雰囲気が違うラーファに、曲がっていた背筋がピンと伸びる。親しみやすい空気とノリで一瞬忘れていたが、彼女は女神様だ。そして死んだ人間に対して女神様がすることと言えば。
「善行を行ったあなたには第二の人生が与えられます」
きったああああ!!異世界転生きちゃ!これで勝つる!!
今となってはテンプレになった異世界転生。「はいはい、異世界転生ね、いつものいつもの」とweb小説を漁っていた時はそう思っていたが、いざ自分が異世界転生するとなるとワクワクが止まらない。
「ふふ、まぁ落ち着いてくださいけんくん。今からちゃんと説明しますから」
「ありがとうございます……それとしれっとあだ名で呼ぶのやめてくれません?」
「いいじゃないですか、減るもんじゃないんですし」
確かに減るものではないけども。それにしてもこの女神……サブカルチャーに染まり過ぎじゃないか?もしかして暇なの?
「んんっ!……伊藤健一さん、あなたには異世界に転生してもらいます。ご安心ください、あなたが今から行く異世界は剣と魔法がファンタジーしている世界です。時代は地球で言う中世に似た文明力で、しかも獣人、エルフ、ドワーフ、魔族といった様々な種族がいます」
さっすがラーファさん!俺が知りたかったことを全部教えてくれる!そこに痺れる憧れるぅ~!
後はチート能力さえあれば俺の異世界生活は勝ち!第三部完!さぁラーファさん、俺にチート能力をくださいっ!一番良いのを頼むっ!
俺の心の中を読めるラーファはくすりと笑う。あまりの可憐さに思わず心臓がドキッと……って俺死んでるから心臓動いてないんだったわ。
「伊藤健一さん、あなたには─────聖女になってもらいます」
「────はい?」




