88. 翼を持つ聖女
読んで下さってる皆さん、本当にありがとうございます。
もう少しで第一部が書き上がります。どうぞよろしくお願いいたします。
「逃がすかっ!」
セバスティアノスの剣先が、魔人の方へと向けられる。
呪文を唱え、剣から放たれた雷光が一直線に魔人へと奔る。
次の瞬間――
――バチバチバチィンッ!!
激しい閃光と衝撃音が響き渡った。
「グォオオオオオッ!!」
強烈な光と衝撃音から、受験生たちは思わず目を背ける。
そして、目をこすりながら魔人の方に焦点を合わせた。
「……やったのか?」
そこには、何とか衝撃に耐えきった魔人の姿が映っていた。
「なっ!?」
ほんの一瞬の判断だった。
距離は離れていたものの、セバスティアノスの仕草から雷撃魔法が来ると見抜いた魔人が、咄嗟に剣を目の前へ放り投げたのだ。
雷撃は放り投げた剣に当たり、吹き飛んできた剣が魔人に当たってダメージを与えた。
そのダメージは決して小さくはなかったものの、致命傷には至らなかった。
魔人は目の前に落ちた剣を拾い上げると、すぐさま空中へ飛翔を始めた。
「みんな、逃がすなっ!」
セバスティアノスが叫んだ。
無事だった受験生たちが、慌てて魔法を放つ。
「火球!」
「風刃!」
「魔法の矢!」
しかし距離もあり、人数も減っていたため、魔人は難なくそれらの魔法を躱していく。
「くそっ、毒のナイフも届かないっ!」
ヨアニスが苦悶の表情のまま声を挙げた。
そんな学生たちの姿を空中から見ていた魔人は、嘲るように呟いた。
「フン……アトデ、ユックリト殺シテヤル」
次の瞬間。
「ブファァァーーーッ!!」
炎弾が連続して吐き出され、地面へと落ちる。
――ドゴォォン!!
――ボゴォォッ!!
地面に叩きつけられた炎弾は次々と爆ぜ、試合場をさらに火の海へと変えてった。
誰もが――絶望を感じた、その時だった。
炎の向こうから、ひときわ大きな女性の声が声が響いた。
「ニコーーーッ、私を飛ばしてーーーッ!!」
そこには、全力で駆けるカテリーナの姿があった。
ニコポリテスは一瞬だけ目を見開く。
自分の位置は、カテリーナと魔人を結ぶ一直線上にあった。
その意図を瞬時に察した彼は、剣と盾を地面に落とし、両手を組んで上へ跳ね上げる姿勢を取った。
「来いッ!!」
カテリーナが駆け込み、その足がニコポリテスの組んだ両手に触れた瞬間――
「ウォォォォォリャーーーーーッ!!」
ニコポリテスは魔人に背を向けたまま組んだ両手を振り上げ、カテリーナをまるでカタパルトのように、後方上空へと打ち上げた。
ニコポリテスは倒れたまま、カテリーナが飛んだ空の方へと目を移した。
その視界に映ったカテリーナのその姿は、まるで翼を持つ天使のように美しく見えた。
ニコポリテスは、後にこのときのカテリーナの様子をこのように語っている。
「その姿はまるで、翼を持つ聖女のようだった」と。
――ヒューーーーンッ!!
カテリーナは超高速で飛翔し、空を切り裂いていく。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
その場にいた、受験生たち全員の声が重なっていた。
空中の魔人が振り向いた。
その目に映ったものは、目前に迫ったカテリーナの姿だった。
「グゥォォォォッ!!」
魔人が咄嗟に剣を振るう。
後に語り継がれることになる魔人との戦いが、今まさに、結末を迎えようとしていた。
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