終わりのカウントダウン(2)
テスト期間も無事終わり大学は夏休みに入った。
この頃、よく眠ることができなくなった。原因は舞からの連絡が絶えないことだった。
あの日以来舞からは毎日何十通…いや百に近い電話やラインが来ている。
内容はほとんど「寄りを戻したい」「私が死んでもいいの?」など、脅迫に近いものだった。
自分のしたことが原因だと割り切るしかなかった。
「具合でも悪いの?」
お皿に残ったおかずを見て夕夏が心配そうな顔をしている。
「ああ…夏バテかな」
違う。本当は舞の連絡がひどくなってから食欲がない。でも、夕夏には舞のことを話すことができていない。
不安にさせたくないーー。
「じゃあ明日からはもっとさっぱりしたもの作るね」
「…ありがとう」
「前から思っていたんだけど…ほぼ毎日会って一緒にご飯食べるし泊まっていくじゃない?だから、その…一緒に住むのはどうかなあ、って」
一緒に…。
一緒に住めたらきっとこの状況から少しは気持ち的に解放されるかもしれない。
でもーー
「…ごめん、あの家の更新とかもあるし、今はちょっと」
巻き込みたくない。
夕夏だけは巻き込みたくない。
正直、今の舞は何をするかわからない。もし夕夏に何かあったら一生後悔していきていくことになるんだ。
「…そう、だよね。ごめん早まっちゃった」
「悪い…今日は体調も良くないし帰る」
「送っていくよ」
「いや、危ないし1人で帰るよ」
なるべく夕夏の顔を見ないように家を出た。
きっと寂しそうな顔をしているだろう。
そんな顔を見たら、やっぱり一緒に住みたいと言ってしまう。それだけは、だめだー。
少しふらつく身体で何とか家まで帰ると、玄関の前で誰か座っている。
舞だーー
「和人!」
「…何してんだよ」
「何度も連絡したじゃない!どうして返してくれないの!早くあの女と別れてよ!」
「舞…何度も言ったけど俺はあいつを振ることはないから」
「抱いて」
「話聞けよ。いい加減にしろって。家まで押しかけるとか…そろそろ警察に言うぞ」
「…もういい」
走っていなくなる背中を見て追いかけようとは思わなかった。
頼むから目の前から消えてくれーーー
そう思ってしまった。
あんなに大事にしていた舞が、今は邪魔でしかない。
早く前みたいに夕夏と普通に笑い合いたい。
***
あの夜から突然舞からの連絡は途絶えた。
それから食欲も戻り、夜もよく眠れた。
やっと諦めてくれたのだろうか。
「夕夏、ご飯お代わりしていい?」
「うん!すっかり夏バテ治ったみたいだね」
嬉しそうにお茶碗に白米をよそった。
前に話をしてくれた同棲の話ーー今でも遅くないだろうか。
もう舞のことがなくなった今、夕夏に嘘をつく必要がなくなったんだ。
夕夏と、一緒に…
「あのさ、」
話し始めようとしたとき、ポケットに入っていた携帯のバイブ音がなった。
しばらく鳴り続ける。
まさか、舞からー
「電話じゃない?出たら?」
見たこともない電話番号だ。
舞からではないだろう。
「もしもし」
『…舞の父ですが』
舞の父親…?どうして…?
『舞が事故で怪我をしました。…いや、自殺しようしたみたいです。君へのメールを打っている画面のままだったので、何か君とあったのかなと思ってご連絡しました』
「今、舞は…」
『病院にいます』
「すぐに向かうのでどこの病院か教えていただけますか」
舞の父親が教えてくれた名前を紙にメモした。時間的に電車はもうない。タクシーで行こう。
「和人…」
「ごめん。ちょっと行かなくちゃいけなくて…今日はもう帰れそうにないからまた明日連絡する。不安にさせてごめん」
「ううん、大丈夫なの?」
「わからない。待っててくれるか?」
「うん、待ってる」
夕夏に軽く口づけをして足早に出た。
…もしかしたら、俺のせいかもしれない。
その不安で脈が速くなっていた。




