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09 《逃げたいと思います》

「本当だよ、死神が潜んでいる。

 しかも本来ならまだ死なない命ばかりを連続して刈り取る、性質(タチ)の悪い死神がね」


「私の目の前にも、そんな性質の悪い死神様がいるんだけど?」


「…………我の心配をしているのか?

 安心しろ、お前のためならばどんな罪だろうと我は構わない」






 低音イケボで言ったって、私を殺そうとしているのには変わりないよね!!??


 シャルと話している最中も、ただひたすら熱い視線でこちらを見つめてくる死神様。

 頬をほんのりと赤らめているところから予想して、多分アイコンタクトで「好きだ」とか「愛してる」とかを訴えているみたいだけど、今の死神様の眼差しだと人を殺せちゃうレベルだから……


 恥ずかしい以前に怖い。

 怖すぎる。


 うん、目を逸らした瞬間に鎌で『サクッ★』されちゃいそうだよ。






「そんなに見つめるな……抑えきれなくなる」


「な に が !!??」



「――――とにかくボク達はソイツを捕まえるために、わざわざニンゲン共の巣窟に来たんだ。

 分かる? わ・ざ・わ・ざ・ね?」







 今の発言中に死神様が居なかったら、絶対に五発ほど猫パンチしてたよねっ!!!??

 っていうか、シャルって随分人間が嫌いみたいだけど……何かあるのかな?

 それとも純粋に死神様の使い魔だから?

 ……まさか、シャルは死神様の事……!!!???






「この地域周辺に潜んでいるって情報があって、探している最中にオマエの――――おい、ニヤニヤしすぎだぞ。

 やっぱり、頭がおかしくなったの? そうだよね?」


「――――シャルドナ、おかしいのはお前だ。

 我の花嫁に対して無礼すぎる発言をするな」


「………………ふん、ボク……オマエがレオン様の花嫁なんて認めないから」


「いやいやいや、私自身だって一度も認めてないけど!!?」







 じゃあ、つまり死神様は他の死神を捕まえるためにやってきたってこと?


 ……え、やってきたって……あの世から?








「ねえ、あの世ってどんなところ?」


「あの世? 冥土のことか?

 別に何もない。ただの冥土だ」


「いや、私はその冥土の事が聞きた――――って、鎌を向けるなぁああああ!!」








 ち、ちょ、何で急に鎌を取り出して……どこから取り出したのよ!!?

 とにかく、そのどこからか取り出した鎌を私に向ける死神様。

 しかも、恍惚とした表情とセットで。


 そんなセット、い ら な い !!!







「……どうした? 何故怯える?」


「普通怯えるからね!!?

 っていうかどうして急に鎌を……」




「冥土が見たいのだろう?

 我の花嫁のお望み通り、見せてやろうと思ってな……気に入った場所があったなら言ってくれ。

 そこで生涯を共に過ごそう、永遠に……魂さえもが朽ちるまで」






 いちいち告白シーン染みた発言&イケボで言うなぁあああああああ!!!!

 やばい、ニヤニヤが納まらない……!!

 某ゲームだったら教会で背景が真っ白になりながら言われてるよね、これ!!!!!


 ――――こんな幸せな妄想を考えたいんだけど、目の前の鎌が全てを玉砕する件について。







「へ、へるぷぅううう!!!

 シャルっ!!シャル助けて!!!!」


「死ね」


「ちょ、酷っ!!??」


「……お前はただ、我に身を委ねれば良い……」


「委ねた瞬間、死ぬよね!!? 死んじゃうよね!?」








 冗談じゃない!!!!

 逃げよう!!そうしよう!!!!


 ……さて、ここで私の現在の状況を説明しましょう。




 私→ベッドに座っている

 死神様→私のベッドの傍で鎌を構えている

 シャル→枕元でこちらを見つめている



 恐らく、逃げようとした瞬間に鎌は振り下ろされるはず。




 つまり。








「逃げ場がゼロだぁあああああああ!!!!」






 絶 体 絶 命 ★


 え、いや、冗談抜きで……どうすんの、これ!!?







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