第27話「赤紋の鬼」
神社の境内。
黒い霧が立ち込める中、鬼の身体に刻まれた黒い紋様が赤く染まっていく。
先ほどまでとは比べものにならない殺気。
総司は双剣を構えたまま、鬼から目を離さなかった。
「……何だ、その力」
鬼はゆっくりと顔を上げる。
「俺の力の一端だ」
「今まで遊んでいたってことか?」
隼人が槍を構える。
鬼が笑う。
「そういうことだ」
次の瞬間。
鬼の姿が消えた。
「!」
総司が反応する。
だが――
ドンッ!
隼人の身体が吹き飛んだ。
「隼人!」
隼人は地面を転がり、何とか槍を支えに立ち上がる。
「速すぎる……!」
蓮が鬼の気配を探す。
「どこだ……」
「上!」
零奈が叫ぶ。
鬼が神社の屋根から飛び降りてきた。
蓮が刀を構える。
ガキン!
爪と刀がぶつかる。
「くっ……!」
蓮の腕が震える。
鬼はそのまま蓮を押し切ろうとする。
「蓮!」
総司が斬り込む。
鬼が身を引く。
「双剣術――!」
総司が追う。
「双牙!」
二本の刃が鬼の身体を捉える。
だが――
鬼の腕が総司の刀を受け止めた。
「なっ……!」
「遅い」
鬼が総司の腹を蹴る。
「ぐっ!」
総司の身体が吹き飛ぶ。
地面を転がりながら、総司は立ち上がった。
「総司!」
零奈が駆け寄ろうとする。
「来るな!」
総司が叫ぶ。
鬼が迫ってくる。
「まだ立てるか」
「当然だ」
総司は双剣を握り直す。
「俺は……妹を助けるまで倒れない」
鬼の動きが一瞬止まった。
「妹?」
「……何の話だ」
総司は答えない。
ただ、双剣を構える。
「お前を倒す」
鬼は再び笑った。
「その程度の力でか?」
鬼の身体から赤い紋様がさらに広がる。
その瞬間、黒い手が一斉に地面から伸びた。
「散れ!」
四人がそれぞれ別方向へ飛ぶ。
黒い手が地面をえぐる。
「危なかった……」
隼人が息を吐く。
蓮が鬼を見る。
「力が上がってる」
零奈も頷く。
「しかも、姿を消す速度まで速くなってる」
総司は鬼の動きを見つめる。
「……違う」
「何が?」
「速くなっただけじゃない」
総司は周囲を見る。
黒い手。
黒い霧。
そして鬼の赤い紋様。
「この神社にいる限り、鬼の力が強くなってる」
鬼が笑う。
「よく気づいたな」
「ここは俺の狩場だ」
総司は井戸を見る。
鬼はその瞬間、井戸の前へ移動した。
「そこから離れろ!」
総司が叫ぶ。
鬼が笑う。
「嫌だと言ったら?」
「……!」
鬼は井戸に手をかざした。
すると、井戸から黒い霧が噴き出した。
「この場所にいる限り、俺は倒れない」
総司は歯を食いしばる。
「なら……」
「ここから引きずり出す」
隼人が槍を構える。
「どうやって?」
総司は鬼を見据えた。
「俺たち四人で、一気に攻める」
蓮が頷く。
「分かった」
零奈も矢をつがえる。
「今度は逃がさない」
四人が構える。
鬼も爪を構えた。
「来い」
総司が地面を蹴る。
「行くぞ!」
四人が一斉に突撃する。
総司の双剣。
隼人の槍。
蓮の刀。
零奈の矢。
四つの攻撃が同時に鬼へ迫る。
鬼は黒い手を操り、それらを迎え撃つ。
激しい攻防が続く。
そして――
総司の刃が、鬼の頬を浅く切り裂いた。
「……!」
鬼が目を見開く。
総司も驚いた。
「届いた……!」
鬼の頬から血が流れる。
鬼はその血を指で拭った。
「新人隊士が……」
赤い紋様がさらに強く輝く。
「この俺に傷をつけたか」
鬼の表情から笑みが消えた。
「ならば――」
鬼が構える。
「次は、お前たちを一人ずつ潰す」
総司たちは武器を握り直した。
戦いは、さらに激しさを増していく。
第27話 完




