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おっぱい



 空けた大広場。

 その場所には今、老若男女問わず、大勢のダークエルフが集まっていた。


 珍しい余所者を一目見る為か、一族に害を成す愚か者に罵声を浴びせる為かは分からない。

 が、数から考えても【キョヌー族】全ての民が広場に居ることは間違いなかった。


 そんな彼等の中心には、恐らく人間である若き少年が縄で手足を縛られ十字架に磔にされている。


 結界を破壊し、無断で里に侵入しようとした愚か者。

 見た目は取るに足らないただの人間だが、強固な結界を破壊したことから強力な能力を有している事が窺える。

 少年を眺めるダークエルフの目の色は恐怖と怒りで彩られていた。

 彼等の中には、さっさと殺しちまえ! と叫ぶ者もいる。


 そんな空気の中、身動きを封じられた少年は顔を下に向けて、じっと黙っていた。

 それがまた不気味で、ダークエルフ達の恐怖がさらに煽られてしまっている。


 そして遂に、処刑の時間が始まったのだった。





「愚かな人間よ、里を守る結界を破壊し、許可無く里に侵入しようとした重罪で、貴様を処刑する」


 十字架に磔にされた俺の眼前には、長剣を携えた美しきダークエルフの女性が憤怒の表情で立っている。

 顔を上げて彼女を見やる。


 改めて見てみると、そのダークエルフはかなりの別嬪だった。


 肌が黒いことと髪が白銀なのは他のエルフと変わらないけど、その胸には見事なまでに実ったメロンがあり。

 綺麗に腹筋が六つに割れていて、お尻の曲線には一切の歪みが無く、太いがキュッと引き締まった太ももは素晴らしいの一言に尽きる。


 そんな最高級なパーツが揃っている中、それでも目が追ってしまう箇所は他にあった。


 それは、彼女の目である。

 大きくて吊り上がった目は魅力的で、その力強い瞳に見つめられたら心が勝手に疼いてしまう。

 多分ノーマルな俺ですらゾクゾクしてしまうのだから、M属性のスキルを持った者ならば、視界に入っただけでブヒィィィィィィ! と豚のように醜い鳴き声を上げてしまう事だろう。


 もう一度言うが、彼女は美人だ。

 パッと広場を見渡した所ダークエルフの女性は皆おっぱいが大きくて綺麗揃いだが、その中でも群を抜いて美しい。


 そして俺は、彼女の事を知っている。というか、俺を捕らえた張本人だった。


 そのダークエルフの女性は、右手で握る長剣を突き付け口を開く。


「愚かな人間よ、貴様を処刑することは決定したが、一つだけ慈悲をくれてやろう。死ぬ前に何か言うことはないか? 一度だけ口を開くことを許してやる。さあ、言いたいことがあるなら言ってみろッ」

「…………」



 その言葉を、待っていた!


 リリは言っていた。【キョヌー族】は巨乳である事が誇りであると。

 ならば、この中の誰よりも巨乳を愛していると証明すれば俺は助かる。


 さぁ、耳の中かっぽじってよっく聞けよダークエルフ共。

 俺がどれだけおっぱいを愛しているのかをッ!


 心の叫びを! 魂の波動をッ!!


 聞きやがれッ!!!



「おっぱいが好きだ」


「は……貴様、一体何を」


「おっぱいは大きければ大きい程嬉しい。どんなに嫌な事があっても、巨乳を見るだけで心が晴れやかになる。それどころかテンションはFULLMaxだ。憂鬱な月曜日な朝も、大きいおっぱいを偶然見かける事で今日一日頑張れる気がする」


「だ、だから何を言って」


「おっぱいが好きだ」


「大きいおっぱいは素晴らしい。欠点という欠点が何一つ無い。上乳下乳横乳、全方向どこから見ても良い、無敵だ」


「大きいおっぱいは最高だ。貧乳には決して作れない"谷間"という絶対兵器がある。服の上から不意に見えてしまう谷間は、魔性の領域だ。見てはいけないと己を律しても、その引力には誰も抗う事は出来ない」


「おっぱいが好きだ」


「えっ? おっぱいが大きいと歳を取った時垂れるって? 馬鹿野郎そこがまたいいんじゃねえか!!」


「おっぱいが好きだ」


「大きいおっぱいには夢が詰まっている。服の上からでしかしっかりと大きさを測ることが出来ない。しかしそこに浪漫がある、俺達はを想像力を掻き立てられる」


「おっぱいが好きだ」


「おっぱいは柔らかい。何でこんなに柔らかいんだよって思うぐらい柔らかい。恐らく世界中のどの物体を探しても、おっぱいよりも柔らかい物は存在しないだろう。おっぱいよりも柔らかい物は幾らでもあるって? 馬鹿野郎それはきっと気のせいだ」


「おっぱいが好きだ」


「おっぱいは柔らかいが、勿論張りがあり弾力のあるのも良い。おっぱいは大きければ大きい程愛が満ちている。俺達は皆、知らず知らずの内におっぱいを求めているんだ」


「おっぱいが好きだ」


「おっぱいは愛に溢れている。俺達は皆、生まれた時に初めて口にする物がある。言われなくても分かるよな?そう、おっぱいだ。俺達生きとし生けるもの全て、おっぱいから出る乳を飲みすくすくと育っていく。言うなればおっぱいとは生命の源なんだ」


「おっぱいが大好きだ」


「お尻? うなじ? 鎖骨? 馬鹿野郎ふざけんな! そんな所よりまずはおっぱいだろ! まず最初におっぱいを愛せよ! おっぱいを愛せない奴が他の場所を愛せる訳がないだろ!」




「おっぱいは神だ!! 世界中のおっぱいが大きければ、きっと世界は平和になる!!」


「俺はそう、信じているッ!!!」





 俺はおっぱいへの愛を語った。語りつくした。

 だが話しはこれで終わりじゃない。


 言ってやろう、聞いてやろう、問いかけてやろう。

 この中に、俺よりもおっぱいを愛している者がいるのかを。


 俺は叫んだ、この広場にいる全てのダークエルフに聞こえるぐらい大きな声で。


 そう、心が叫びたがっているんだッ!!


「誇り高き【キョヌー族】のエルフ達よ! 巨乳を愛して止まないダークエルフ達よ! 俺を殺したければ殺せばいい! 煮るなり焼くなり好きにすればいいさ! だがその前に、この俺よりおっぱいを愛している事を証明してみせろッ!!」

「「…………」」


「なに黙ってんだよ!? お前達はおっぱいが大きい事を誇りに思ってるんだろ!? 大きいおっぱいが誰よりも好きなんだろ!? ならば言える筈じゃないか、愚かな人間である俺よりもおっぱいを愛しているとッ!! 胸を張って言える筈だろ!?」

「「…………」」


「言えないのか? 言えないならばお前等のおっぱいへの愛なんてその程度ということだ。はんっちゃんちゃらおかしいぜ!」

「き、貴様! べらべらと訳の分からん事を言いおって!! そんなに死に急ぎたいのなら今すぐにでも殺してやる!」


 ダークエルフの女性が罵声を吐き散らし長剣を突き付けてくる。

 しかし威勢が良いのは声だけで、剣を握る右手はブルブルと震え、俺と目を合わせないようにしていた。


 そんな子猫のような彼女の瞳を、俺は曇りなき眼で力強く見つめる。



「刺したければ刺せばいい! 殺したければ殺せばいい! だがその瞬間、お前の誇りは地に堕ちるだろう! それでもいいなら殺してみろよ! さあッさあッ! さあ!!」

「――くっ!?」


 意味が分からない俺の気迫に呑まれ、ダークエルフの女性は酷く狼狽える。

 そしていつの間にか、広場は静寂に包まれていた。


 そんな中、誰かがいった。


「…………神だ」


 その一言を皮切りに、次々とダークエルフ達が口を開いていく。


「あの方は人間などではない……おっぱいの神様だ!」

「うぅ……俺のおっぱいへの愛なんて、あの方の愛に比べたら糞喰らえだッ」

「俺達は馬鹿だったんだ……分かったフリして何にも分かっちゃいなかったんだ!!」

「あの方が、俺達に大事な事を気付かせてくれた」

「私……巨乳で良かったと、心のそこから思うわ」

「ママーおっぱいー」

「はいはい、今抱きしめてあげますから」

「神だ」

「神よ」

「神だ!」



「「あのお方は、おっぱい神だッ!!!」」


 全てのダークエルフが、澄んだ涙を流しながら俺を崇めてくる。


「お、お前達……一体どうしてしまったんだ!?」


 長剣を持つ彼女だけは仲間の行いを止めようとしているが、興奮が収まる気配は無く、それどころか会場のボルテージは天元突破していた。


 もう誰も、おっぱいを止める事は出来ない。


 調子に乗りまくった俺は、天に向かって吠えた。



「おっぱいは愛ッ! おっぱいは正義ッ!! おっぱいは我にありッ!!!」


「「うぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」



 なんかよく分からないけど、おっぱいってスゲエッ!!!

お読み頂きありがとうございます

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[一言] イエス、おっぱい
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